第8話 決心

ミルハも他の皆も頑張ってくれて、ソライシがかなり集まって来ていた。


予想していたより早くに塔へ入れるかも知れない…具体的な目処が立って来ていた。


皆が頑張ってるんだから、俺も頑張らないと…





「マスター、ポーションが増えてますよ…最近より強力な物になってきてます。大丈夫ですか?」


ターミが心配していた。


「大丈夫…皆頑張ってるのに俺だけ何もしない訳に行かないからさ。」


「そうですか…その栄養剤…ポーションは副作用も結構強力に有ります。気をつけて下さいね」


「有難う…でもな、俺は塔に入れたら戻って来れない可能性が高い…」


「…」


「だから俺の体で先の事は気にしてない…ただ、このギルドがどうなるかが心配だ…頼ってくれてる子供も多い…」


「…」


「だから、俺が塔に行ったら、ターミに任せたい…ダメかな?」


「承知しました…でも、マスターが帰って来ることをワタシは信じて待ちます」


「ははは、ターミらしく無い言葉だけど…有難う」


「ワタシらしいって何ですか。ワタシだって一応人間ですよ」


「悪かった悪かった。頼りにしてるよ」


「ハイ、マスター。」







「ミルハが他のギルドにソライシ持ってってるの見ちゃった…」



ある日ナカハが俺に告げ口して来た。


「そうかー。ミルハも稼がなきゃいけないし、ここばっかって訳にも行かないだろ?高いソライシは持って来てくれるぞ?」


「でも!マスターあんなにミルハに良くしてあげてるのにっ!酷いよ!なんで怒らないの!?」



俺はやっぱり心が欠けているので、そう言う事に怒りとかは沸かなかった。



「うーん、俺は大丈夫だよ。でもナカハ、友達の事告げ口とか良く無いぞ。」


「だって!だって!マスター最近ミルハとばっか遊んでる!」


「そんな事ないぞ?ナカハとも遊んでるだろ?」


「…」


「拗ねちゃったか。可愛いなあ。お菓子あげるから一緒に遊ぼう。な。」


「うん」



そう言って頭を撫でるとやっと機嫌が直って来た。


やっぱり子供だ。親が居ないから寂しいんだろう。


ここに来る子達には皆俺は親代わりに可愛がってあげよう。






心が欠けてる分、他の子達には皆に親の愛情の真似事をしてあげていた。







「マスター!なんかオレに言う事無いの!?」


「何だろう?」


「ミルハから聞いたでしょ!?オレ他のギルドにソライシ持ってってたんだよ!?」


「うーん、まあミルハにも事情があるだろうし、俺だけって命令なんて出来ないよ。親でも無いしさ。ミルハはちゃんと俺にもソライシ売ってくれてるしかなり助かってるよ。」


「何で怒んないの!?」


「うーん、感謝はしてるけど怒りはしないなあ」


「オレの事どうでも良いの!?」


「そんな訳ないよ。大事に思ってるし、好きだよ。一緒に遊んでるし。可愛いよ?」


「マッマっマスターのバカーー!」



そう叫んでミルハは走って行ってしまった…


ごめんなあ…俺やっぱり心が欠けてるから傷つけてたのかなあ。


ミルハの事、大事だし好きだよ。

これは嘘じゃない。


ただ、独り占めしたいとかそう言うのはどの子にも無いんだあ。


皆可愛いし、俺の子だと思ってる。










走り去る時に投げ付けて来たソライシは金色の1級だった…



ごめんなあ、これで塔に行ける…


有難う…ミルハ…








それから他の子達と挨拶もそこそこに交換施設へ向かった。


あんまり別れの挨拶をしっかりしたら決心が鈍りそうだったのもある。


勢いで施設に足を踏み入れた。

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