第28話 決闘の行方②

サイド:デュストス


 俺はこいつをぶちのめす。そう決めた。


 理由?


 そんなものは知らん。俺を腹立たせた、それだけだ。


 俺は奴の手首を引き込み、近づいてくるフォークの顔に向かって拳を繰り出した。


「三つ目、お前の技のどこが鶴だ?鶴だったら、もっと華麗に美しく舞え」


 フォークは避けることなく、俺の拳をまともに食らった。


 俺はさらに何度もパンチを繰り出した。


 フォークはぐったりしているように見えるが、死んだわけではない。


 何度でも殴ってやる。


「デュストス君、やめなさい、勝負はもうついている」


 言ってもやめない俺を審判の教員が止めようとして、肩を掴んだ。


 だが、俺は魔力を込めた腕で振り払った。


 さらに何人かの大人が止めようとしてきたが、全て吹き飛ばした。


「邪魔だ」


 俺はフォークが死ぬまで殴ると決めている。


 邪魔する奴はそいつも道連れにする。


 俺は大人が止めに入っても吹き飛ばし、フォークを殴り続けた。


「タケル!!このバカ息子!!」


 俺は拳を作っていた手を止めた。

 声の方を向くと、ママがいた。


 俺はフォークの手首を離すと、奴は意思の無い重石のようにぐったりと地面に倒れた。


 俺は目の前のフォークをじっと見た。

 顔面が血だらけになっている。


 死んでないよね?


 そこで俺はハッとした。


「参りました、降参します!」


 フォークが負けて退学になったら困る。


 審判が何かを言う前に、俺は降参を宣言した。


 会場がざわめく。


「早く、治療してくれ」


 俺が叫ぶと、すぐに治癒班が出て来て、その場でフォークを治療し始めた。


 フォークが死んでませんように。


 俺は立ったまま祈った。


 だって、フォークが死んだら、聖女チームを助ける奴がいなくなってしまう。


「う、うぅ、、、」


 回復薬が効いたのか、フォークが声を上げた。


 良かった、死んでなかったわ。


 俺はフォークの目を覗き込んだ。

 すると、ギロッと奴の目が動いた。


「ひぃ、ご、ごめん」


 俺は平謝りした。明らかにこれはやりすぎだ。

 お咎めなしでは済まないだろう。


 しかも、相手は上級貴族の子息であるフォーク。

 何で後先考えず、こんなことしてしまったのだろう。


「デュ、デュス、、ス、、、お前、、、」


 やばい、こいつ怒ってる、よな。

 そりゃあ。ボコりすぎだもん。


「わ、悪かっ「お前、おとこだな」」

「は?」


 こいつ何て言った?

 聞き間違いじゃないよな?

 だって俺、男だもん。


「お、お前は首席を争う成績を出しながらも、Aクラスで入ることを嫌った。

 お前はEクラスから這い上がりたかった、いや、無属性の王族としてEクラスを変えたかった、そうだろ?

 だから、わざとイカサマと言う情報を与え、Eクラス合格になったんだな」


「い、いや別にそんな、、」

「ふ、隠さなくていい、俺たちはもうダチだろ?」


 え?こいつ、こんなキャラだったっけ?


「そ、それから、お前の母親のことを悪く言って悪かった、このことは我がスカルドル家を通して、正式に謝罪させてもらおう」

「いや、別にいいよ、そんなこと。どうせ俺たち以外聞こえてないから」


 フォークはボコボコの顔で笑った。


「そう言ってくれると助かる。今回はお前の言葉に甘える。だがこれは借りだ。お前のピンチに必ず助太刀させてもらう」


 いや、お前が助太刀するのは聖女たちにだろ。


 フォークは治療班に運ばれていった。


 誤解もあり、俺はフォークに認められたようだ。


 平和的に解決したなら何より。

 だが、シナリオに変な改変が成されないように注視する必要があるかもしれない。


 と言っても、助太刀キャラと多少仲良くなっただけで、それ程大きな変化はないだろう。


 それより、俺の退学はどうなった?




 試合会場を出た俺はママと合流した。


「息子よ、大丈夫か?」


 さすがのママも心配したようだ。


 こんなところは母親なんだなと思う。


 ママの手には今でも、保護者全員に配られた入学式のプログラム表がある。


 心配かけてしまったな。


「ああ、回復薬を飲んだからもう大丈夫だ」


 ママは「そうか」と、俺の身体を確認するように見た。


「それなら」


 ママは俺の頭を勢いよく、プログラム表でぶった。


「何するんだよ!?」


 ママは怒りの表情を作っている。


 何があったんだ?


「息子よ、お前のせいでわてがいくら損したと思ってるんや。三十万や三十万。前世やと、パートの給料二か月分や」


 ママの言ってることにはチンプンカンプンだ。


「何が俺のせいなんだよ?」

「決闘でお前が勝つ方に三十万賭けたんや。実際、お前は勝てたやろ。何してんねん!」


 はあ、俺はため息をついた。


 この人は良い大人のくせに何をやっているんだか。


「普通、保護者が賭けなんかやらないだろ。大体、賭けるにしても、もっと少額にすれば良かったじゃないか」


「お前は何も分かっとらん。賭けの管理人がお前に誰も賭けないから、賭けが成立しないって嘆いてたんや。それを聞いたら、王族として助けないわけにはいかんやろ」


 こいつ、王族をはき違えている。

 何でもかんでも助けていいものではない。


「とにかく、これは借りや。ちゃんと償ってももらうで」

「うるせー、貸しは作っても借りは作った覚えはねえ」


 俺たちの声は、かなり響いていたと言う。


 因みにママの掛け金の出どころは、ママが冒険者として稼いだ金です。


 **********


 入学式を終えて、俺は寮に向かった。


 王立学園は全寮制だ。


 寮はクラスごとに分けられていて、さらに男子棟、女子棟に分かれている。


 クラスが上に行くほど、寮の設備も充実している。

 下のクラスの者が上を目指し、上のクラスの者が下に落ちたくないというモチベーションを高めているのだ。


 俺は予定通り、Eクラス寮に入った。


 入寮手続きはもうしてるから、何も問題ないはずなのだが、あの決闘の後だから、妙に緊張する。


 寮母のマーガレットさんに挨拶をする。


 年齢はママより二回り上くらいだが、雰囲気がザ・肝っ玉母ちゃんって感じだ。


 これから六年はお世話になるので、さわやかスマイルを作っておこう。


 手続きのとき、顔合わせはしているから、覚えてくれているといいな。

 と思っていたが、不敵な笑みで


「あんたは前途多難だね」


 と言われてしまった。謎だ。


 自分の部屋に向かう間にすれ違う生徒たちに挨拶すると、皆怯えたように去っていった。


 決闘のせいだ。


 コミュ障の俺が笑顔で挨拶してるのに、誰も返してくれない。


 その日は身体を休ませることに専念したため、俺は寮から出ることはなかった。




 次の日、俺は学園に行く二時間前には外に出ていた。

 二年前から日課になっているジョギングをするためだ。


 しばらく走っていると後ろに気配を感じた。


「よお、やはりお前も走っているのか」


 声の主はフォークだった。


「げっ、フォーク、お前、何で?」


 フォークはフハハハと笑っている。


「日課になっているジョギングをやめられなくてな。一日走らないと調子が悪い気がする」


 そうか、そこは俺と同じ理由か。

 それならば仕方ない。


「ところで、お前、身体は大丈夫なのか?」


 フォークに何かあっては、今後のシナリオ展開に支障をきたす可能性がある。

 こいつには万全の状態でいてもらわないと。


「漢であるお前は優しいから気にしてくれているのだろう。だが、これでも鍛えているんでな。それよりもあと何周走るつもりだ?」


 フォークは昨日の決闘など何事でもないかのように言った。


 その後、俺はフォークと何故か競争する羽目になり、登校初日に教室に入るころにはもうヘトヘトになっていた。


 調子が狂うな。


 ジョギングが終わってから、軽く身体を拭いて学園へ向かった。


 因みにAクラスと異なり、Eクラスは自室に浴室がないため、体を洗うことができなかった。


 学園に入るとやはり、すれ違う人に避けられている。


 これは、正常になるまで何日掛かるのか。


 卒業まで直らないかもな。先が思いやられる。


 そんな想いで俺は教室に入った。


 そこで待っていたのは俺を驚かせるには十分な奴だった。


「よお!」


 え?俺、教室間違った?少し戻って札を見るが、合っている。


「フォーク、何でお前がここにいるんだよ!?」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(あとがき)

しれっと、退学を無かったことにしてる主人公。意外に世渡り上手?


(お願い)


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