2|あなたの文章に影響を与えた作品は?
Q【あなたの文章に最も影響を与えた作品(小説、漫画、映画、ゲームなど)は何ですか?】
ここで、私が物語をつむぐ上での〈師〉を3つ紹介したいと思います。
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【師匠:その1】
『LOST』
これは、2007年頃のアメリカ産のドラマです。
これも自身のエッセイに書いているのですが――カテゴリーとしてはSFアドベンチャーということで、謎の島に墜落し生き残った人たちが冒険サバイバルするお話なのですが、この脚本がとにかく秀逸!
登場するキャラクターたちもそれぞれに魅力的ですし、ひとつひとつのエピソードから、セリフまわしから、シーンとシーンをつなげるための演出から、すべてが完璧で美しいです。
とくに、シーズン1は秀逸です。
私がこのドラマで学ばせてもらったのは、小気味のいいセリフまわしと、物語のテンポと、人間関係の変化のおもしろさです。
セリフなどはそのまま自身の物語のあちこちに散りばめられていて、このドラマのコアなファンなら気づくようにわざと入れてたりします。
そして、なにより人間関係が、そのときどきで微妙に変化してゆくのが、私てきにはツボです。
協力し合っていたふたりが、あることを境に派閥をつくって仲たがいしたり、逆に親密になったり――その距離感の変化の描き方が上手で、どれをとっても勉強になることばかりです。
それは自身の物語のなかでも意識しながら描いている部分でもあって、きっと読む方も楽しいでしょうし、書いてる私も楽しいのでクセになります。^-^
*
【師匠:その2】『グインサーガ』(著/栗本薫のヒロイック・ファンタジー小説)
この小説は、知る人ぞ知る130巻をもって絶筆となってしまった彼女の代表作のひとつです。
この作品に出会ったのは二十歳ごろ。
活字ぎらいだった私が、彼女の小説の虜になってしまい読み漁ったのがはじまりで…なかでも『グインサーガ』は、いまでもくりかえし読みつづけている物語です。
たぶん、文章の〈師〉は彼女です。
なんというのでしょうね。
彼女が紡ぐ文章には、いっさいの迷いがないのですよね。
じつは、彼女は天才と呼ばれる領域に属していた人間で、まさに超人でした。
私の場合「あるとき物語がぼん!と生まれ、それを夢中でノートに書き出した」と書いていますが――そういう経験は作家気質の人間なら誰しもあるかと思いますし、それはいわゆる〈初期衝動〉というやつで、私の場合はノート1冊分を書き終えた時点でとりあえず止まりました。
しかも、そんな興奮状態で書かれた文章はあらっぽく、支離滅裂な部分も多々ありますし、ちゃんと読んでもらうためには、エピソードを増やしたり減らしたりという構成から見直し、推敲に推敲をかさねてから「えいや!」と更新ボタンを押したことをいまでも覚えています。(※恐ろしいことに、いまもちょこちょこと直し続けていますけども…)^-^;
ま、それが普通です。
しかし—―なんと彼女は、いっさいの推敲をしなかったのです!(オーマイ・ガ)
彼女曰く。
「頭のなかに、物語のほうから、つぎはこう、そのつぎはこうと語ってくるので、自分はひたすら〈小説製造マシーン〉と化して必死に書き写してるだけ!」
…だった、そう。
ですから、そのスピードもさることながら、まったく推敲のない文章にもかかわらず、物語の展開のおもしろさを継続させ、なおかつ流れるような美しい文章を紡ぐ彼女には〈狂気〉すら感じますが(笑)本当にすごいひとだったし、その驚異をみなさまにもぜひ知っていただきたいと思っています。
そして、生涯いっさい筆が止まることがなかった彼女の文章には、不思議なチカラが宿っており、彼女の文章にふれていると知らず知らず言語野が刺激され、ふと気づくと、自分も美しい文章を紡いでいることがあるのです。
自身のエッセイに、カクヨム公式運営の方からレビューをいただいたときも、
「様々な経験を積んだ著者さんの視点や物事の捉え方、それによって綴られる言葉のひとつひとつ、魅せる域にまで達していて美しいのです」
私の文章を「魅せる域にまで達していて美しい」と評してくださっていて嬉しかったのですが、それも栗本薫氏の魂がこもった文章を享受したからこその誉め言葉だと思っています。
そして、彼女が、真っ白なキャンバスに筆を躍らせるように自由奔放に物語を動かしていたように、私も、自由に想像の羽をひろげて書いてゆきたいなぁと思っています。
既成概念にとらわれることなく、自由自在に。それが理想。
*
【師匠:その3】『鬼滅の刃』(少年ジャンプのアニメ、ダークファンタジー)
これこそは、知らない人は〈世捨てびと〉以外にいないと思いますので(笑)説明は省きますが、自身の物語を、より高みへと導いてくれた物語の師匠であることはまちがいありません。
そもそも、アニメは、宮崎駿・細田守のおふたりの監督作品にしか興味がなく、他は、お子様とオタクの領域と決めつけていた私の概念を、一瞬でひっくりかえされた—―カルチャーショックにも近い衝撃的な出会いを果たしたこの作品。
こんなにオーソドックスな、わっかりやすーい話なのに、エピソードのひとつひとつ、キャラクターの言葉ひとつひとつが美しく、際立っている。
こんな作品みたことない!と、思いました。
セリフの隅々に品があり、鬼の言葉にすら、えも言われぬ美しさがある。
一番おどろいたのは、遊郭編に登場する、カマキリのような肢体の鬼〈
「
これは、もう、ね。
うわ! やられた! って感じでした。禍福は糾える縄の如し? そんな言葉…少年漫画の敵キャラが言うか? 知性・教養・品格…すべてがこの漫画にはあるような気がしています。
どんなに残酷で、どんなに
どこを切っても美しさが漂っている…そんな作品を、私も、書きたい。
そう思っています。
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