ギセイシャ
大きな机にたくさんの人。そんな家に住んでいる俺は海斗。そんな俺の家族はいつも1人欠けている。何故と問うても皆言うことは同じなんだ。
「今はたくさん頑張って働いているんだよ」
それを聞いて不思議に思う俺。だって早いときは数分で帰って来ることもあるし、遅いときだと1年帰ってこないこともある。しかも働くのは1人。それに帰ってきたやつらは全員怪我をしているんだ。だから一番優しい陽に聞いてみたんだ。一体どんな仕事をしているんだって。そしたら、
「この家の外にはね、凄く大きくて怖い物がいるんだ。それを相手にするのが俺たちの仕事なんだよ」
だから怪我をしているのか、と納得する。それならば俺も働きたい。皆傷ついているのに俺だけのうのうと見ているのは嫌だ。そう言えば、いつも優しい陽は少し怖い顔をして脅す。
「お前は弱いんだ。だから俺たちがいる。それなのに帰すなんて出来るわけ無いだろ。……嫌かもしれないけどね、守られていてほしいんだ。いつか俺たちが消える日まで」
少し怖かったがすぐにいつもの優しい陽に変わった。しかしその後の言葉に胸がずきずきといたくなる。
「陽達が……、消える、?」
「あぁ、いつかな。もしかしたら一生同じかもしれない。もしかしたらあと数分で消えるかもしれない。限界に近いんだ、俺らもあいつも」
陽達が消えてしまうくらいなら、俺が約束を破ってでも守る。その意志を固めて玄関へと走る。
「だめだ!海斗!」
陽が叫ぶのを聞きながらその扉を開ける。扉の外には春がいた。春を見た瞬間、「こいつを家の中に入れてから出ないといけない」と感じた。春は俺がでてきたのを不思議に思いつつも、優しく帰らせようとする。それを振り切り、家へと放り投げて扉を閉める。閉める瞬間の春とその後ろにいた陽はとても青い顔をしていた。そして振り返れば、そこには俺が一番恐れているものがあった。
「か……母さん…」
「遅かったわね。遅れた分反省して痛みを知りなさい」
あぁ、オレが外に出るべきではなかった。
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