第3話「よろしく異世界」
「えっと…イマイチ状況が読めないんだが…」
ガリル達は目の前に広がる異様な光景に頭を悩ませる。
「う〜ん…何からお話すればよいのやら…実は俺にもよく分かんなくて…そうだ!こういう時はお歌を歌おう!」
「はい?」
カケルが思いついた行動にミリスが首を傾げる。
「ラジカセマン!ミュージックカモン!」
「オッケーマイメン!」
ラジカセマンは頭のボタンを押し、音楽を鳴らし始める。明るくアップテンポな音楽だ。
「イェーイ!皆初めまして♪俺はカケル♪異世界転生した人間さ〜♪子供を庇って♪トラックに轢かれ♪この世界へとやって来た〜♪」
ガリル達が困惑する中、カケルやキシナイト達は踊る。
「右も左も分からない〜♪ この世界で〜♪歩む〜♪第二の人生〜♪どうかよろしくどうぞ〜♪」
カケルはガリルやゴツギの手を握ったり、ミリスやサズを社交ダンスに巻き込んだりと大暴れ。
「俺とこのピクモン達♪皆で異世界楽しもう〜♪ここは異世界♪良い世界♪俺達の新たな道〜♪よろしく異世界〜♪よろしく異世界〜♪」
カケルの歌が終わり、キシナイト達は拍手し、ガリル達は終始呆然としていた。
「って感じっす。」
「どういう感じ!?」
あっけらかんに言うカケルにガリルは思わず声を荒げる。
「と、とにかくだ…敵意は無いのか…?」
「ていうかそもそもピクモンって何?そいつらの事?」
敵意は無いと感じるサズ、ピクモンの事が気になるミリス、ゴツギは何も言わず腕を組んで考え込んでいる。
「ピクモンは俺の絵から生まれたモンスターなんだ!騎士のロボットキシナイト、発煙筒モンスターハキューエントウ、ラジカセモンスターラジカセマン、包帯モンスターのホウタイラ!皆俺の絵から生まれた友達だよ!」
「絵から生まれた?」
「何それ!?そんな魔法聞いたことないんだけど!?」
ガリルは首を傾げ、ミリスは驚く。そんな反応を見てカケルはスケッチブックを取り出す。
「疑うなら…皆!このスケッチブックに戻れる?」
キシナイト達は頷き、スケッチブックに入る。するとキシナイト達はたちまち元の絵に戻る。
「ほら!本当でしょ?」
「…!?にわかには信じられないが…確かに絵から生まれた存在の様だな…」
ゴツギは納得する。
「所で貴方達は?」
「この近くにあるガリギルド帝国からここに来たんだ。君の狼煙を受けてな。僕はガリル。よろしく。」
「俺はサズ!ま、よろしくな!」
「私はミリス!よろしくね!」
「俺はゴツギ。この小部隊の隊長だ。」
「成る程成る程。ガリルさんに、サズさんにミリスさんにゴツギさんね!よろしくお願いします!」
カケルは手を差し出し、ガリル達と握手する。
「いや〜!ようやく人間と会えた!嬉しいなったら嬉しいな!」
「君はどうしてここに?」
「俺もよく分かんない。さっきも言ったけど俺は異世界転生してこの世界に来たんだ。その影響か何か知らないけど俺は絵を実体化出来る能力に目覚めた!って感じなんだけど…魔法は使えないみたいだし、行く所も無いしで困ってたんだ!お願い!俺を貴方達の帝国に連れて行って!お手伝いとか何でもするから!」
ガリルの質問にカケルは答える。ガリル達は暫く見合うが、やがて頷き、カケルに近づく。
「分かった。君を帝国に案内しよう。そして、帝国幹部の前に立ってもらう。君の待遇を決める。」
「はい分かりました!」
「素直すぎない?」
ガリル達はカケルを連れて帝国に戻る。
「ねえねえ、ところでこれ剣?カッコいいね!」
「普通の剣だ。何も変わった所はない。」
「そうなのか。サズさんの金髪トゲトゲしてる〜!面白ーい!」
「あんまり触るんじゃねぇ。セットが乱れる。」
「ごめんごめん!ミリスさんも可愛いね〜!今度一緒にお茶でも行かない?」
「距離の詰め方おかしいでしょ!?よく出会って数分の子にナンパ出来るわね!?」
「冗談ですやん〜!えっと、貴方がゴツギさんで小部隊の隊長さんなんですよね?て事は自衛隊的なものですか?」
「我々はガリギルド帝国の軍部隊の一つだ。まあ、我々の部隊ははっきり言って何でも屋みたいなものだが。」
「へぇ〜!何でも屋か〜…」
カケルは帝国に向かう最中、ガリル達と交流を深めようとマシンガントーク。ガリルは若干鬱陶しく感じ始める。
「分かったから静かにしてくれないかい?僕は静かな空間が好みなんだ。」
「え〜!?そんな〜…」
カケルが落ち込んでいると、帝国の門の前に着く。
「何ここ?」
「帝国の入り口だ。入るぞ。」
カケルが門をくぐるとその近未来的な街を見て興奮気味になる。
「おー!?すっげぇー!?もっと洋風な国なのかなって思ってたら割と近未来!機械もあるし…」
カケルが周りを見渡すと魔法の練習をしている人達がいたり、機械のメンテナンスをしている人達がいたりと始めてみる夢の光景に絶句する。
「おほ〜!すっげぇすっげぇすっげぇ〜!」
「気持ちは分かったから静かにしてくれ!僕は煩いのは嫌いだって言ってるだろ!?」
「ごめんごめん!」
その時だった。カケルがふと目線を横にするとキョロキョロしながら慌てている少女が見えた。
「うん?…ごめん皆さん!ちょっと待ってて!」
カケルは急いでその少女のもとに向かう。
「お、おい!?」
「ちょっと!?待ちなさいよ!?」
ガリルとミリスが追いかける。
「君、どうしたの?」
「お母さんとはぐれちゃって…」
少女のもとに着いたカケルはその子が迷子だということを聞く。
「そうか…はぐれちゃったんだね。よし任せて!君のお母さんを探してあげるよ!」
カケルはスケッチブックを取り出し、ポンと叩く。
「ワオーン!」
出て来たのは可愛らしい犬のロボット、「ワンドック」だ。
「ワンドック!この子のお母さんを探して!」
「お任せワン!お嬢ちゃん!何かお母さんが持っているものとか持ってないワン?」
「え?お、お母さんから借りてたハンカチなら…」
ワンドックはハンカチの匂いを嗅ぐ。
「クンクン…」
匂いを覚えたワンドックは地面を嗅ぎ始める。
「あっちの方向にそれと同じ匂いがするワン!きっと君のお母さんだワン!」
ワンドックは匂いを嗅ぎつけ、走っていく。カケルと少女、そしてガリルとミリスは追う。
「あの子どこ行っちゃったのかしら…?」
ワンドックが走っていった方向には我が子を探す母親らしき女性が。
「すみませーん!」
「え?」
カケルが走りながら話しかけ、女性は振り返る。
「お母さーん!」
「…!ミナミ!」
女性は察しの通り、少女の母親であり、二人は再会し、抱き合う。
「もう!勝手にどっか行っちゃダメでしょ!?無事でよかった…!」
「ごめんなさい…あのねあのね!お兄ちゃんとこのワンちゃんが助けてくれたの!」
「え?」
母親がカケルの方を見るとカケルは満面の笑みであり、ワンドックも微笑んでいた。
「助けていただき、ありがとうございました!」
「いえいえ!無事に会えて良かったですね!」
「お嬢ちゃん、これからは気をつけるワンよ!」
「うん!」
親子は礼を言い、カケル達は微笑む。その光景を見たガリルとミリスはカケルに対する警戒心を無くしていく。
「あのカケルってやつ…優しいのね。」
「そうだな。煩いのは…まあ…許容するか。」
知らずの内に信頼を勝ち取ったカケルなのであった。
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