第18話 修行

 傷が癒えた僕はダンジョンに入る。

大人たちは四座以降から来る、階層跨ぎを見張っている。

出入りする人は多いが、1~3座は空いていた。


「突く」


 僕は突進してくる赤ら鹿に、シャベルを突き立てる。

回避もせずに、迫り来る角を見据えて突く。


「キュッッッ」


「はああああッ」


 恐怖を抑え込み、自分を鼓舞するために叫ぶ。

あの巨大猫を倒すには、これが必要だ。


 フェンシングの突きのように、体を動かす。

半身にして遠くまで届くように。


「キュッッッ」


 うまく角は避けれた。

しかし頭蓋骨を滑るように、シャベルが移動する。

赤ら鹿の鼻腔から頭頂部までを切り裂く。


「があああッッッ」


 そして突進を喰らう。


 腰に頭があたる。

打ち上げられ、強制的な空中側転を味わう。

錐揉みする体を押さえつけ、背中から落ちる。


「クソッ。また失敗した!」


 もう何度目だろうか。

眉間を狙った突きは、頭蓋の形状に滑る。

一撃で倒すことができない。


「キューッッ。キューッッ。」


 頭蓋が割れて倒れていた赤ら鹿の元に行く。

首にシャベルを落として、生命を断ち切る。


「見てみてるか」


 僕は剣ナタを取り出した。

鹿の頭蓋を刺し確かめ、どこの感触が柔軟かを確認する。


「頬はいいけど、正面からは狙いにくいな」


「眉間は論外だ。硬すぎる」


「眼孔は側面すぎるな。難しいだろうな」


「鼻腔は柔らかいけど、的が小さいな」


「顎下。柔らかくて、狙いやすくもあるな。ここかな?ああ、でも筋肉が硬い」


 僕は殺人人形のように何度もナタを振るった。

確実に一発で仕留められるところを探す。

魔物がダンジョンに吸収されるまで確認した。


「鼻腔だな。なら恐怖に対する気合いが必要だな」


 それからは挑戦だった。

鹿は突進時に、下を向く。だから僕は掬い上げるように、攻撃する必要があった。


 シャベル形態から、剣ナタを付け替えた槍形態にした。

揺れる鼻腔を目指して、突く。

攻撃範囲の、1.5mの間合いに入ったら突く。


 先ほどまでのような待ちではない。

後の先を取るように動く。


 それから僕はただ無心で「突き」をした。


 突いて、飛ばされ。


 突いて、のしかかられ。


 突いて、倒され。


 突いて、押され。


 突いて、転がった。


 そして少しずつ。


 赤ら鹿を刈り取り、準備を進めた。

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