第46話 再出発(三井俊朗)
三井俊朗は、不正融資で退職となった元妻の百合から、娘の渚を引き取ることになった。今日がその日だった。待ち合わせ場所のファミレスに渚を連れてきたのは意外にも百合だった。
「君が来るとは思わなかった。」
「渚の学校のこととか、持ち物のこととかを伝えようと思って、でも、父と母に任せっきりにしていたから、基本的ことだけだけど。」
「ありがとう。助かるよ。いろいろ聞かせてほしい。」
俊朗は、百合から、渚のことについて引継ぎを受けた。その間、渚は、子ども用のプレートを食べていた。
「じゃあ、私はこれで。」
「もし、君が希望したら、渚と面会していいから。」
百合は、表情のない顔で俊朗の顔を見つめた。
「俊朗、どうして優しくしてくれるの?あなたを裏切って不倫した女に。」
「渚の母親だから。それに、君は溝呂木に騙されてたんじゃないのか?」
百合はかぶりを振った
「違うのよ。私ね、楽に仕事をできればいいって思って一般職になった。でも、働いてみたら、総合職の人が輝いて見えた。でも、一般職は結婚したら寿退社しかなかった。パート勤務で銀行に戻った時、溝呂木に、契約社員とか再雇用の便宜を図ってもいいって言われた。」
「なんで相談してくれなかったんだ?」
「反対されると思った。家事や子育てをやってくれると言われると。だから、溝呂木を選ぶしかないって。」
そこまで言うと自虐的に笑った。
「でも、離婚しても溝呂木は、私と結婚する気もなかったし、自分が出世する持ち駒の1つでしかなかった。それで、不正の片棒を担がされて、母親の資格なんかないわ。でも、あなたには、ひどいことをした。ごめんなさい。」
そう言うと、立ち上がった。
「ママどこへ行くの?パパと3人だよ。」
「渚、ママは悪いことをしたの。だから、今度はパパと暮らしてね。」
そう言った、百合の目は潤んでいるように見えた。
渚と2人の生活が始まった。事務所勤務の弁護士ながらも事務所から勤務を融通してもらいながらの仕事と子育ての両立に苦労していた。そんな時、陽からLIMEが入った。
『あれから連絡待ってるんですけど?』
『ゴメン。娘を引き取って、全く余裕がなくて。』
『そうなんだ。じゃあ日曜日、私を紹介して。』
次の日曜日、3人で顔を会わせた。
「紹介するね。娘の渚だ。こちらはパパのお友達の桐野
「三井 渚です。お願いします。」
「いいこねぇ~。桐野 陽です。パパのお友達。今はね。これから彼女になる予定なの。よろしくね。渚ちゃん。」
「パパ。そうなの?」
「おい、おい変なこと言うなよ。」
「あら、嫌なの?私が彼女になるのは?」
「嫌じゃないけど・・・。」
「よかった。じゃあ決まりね。渚ちゃん、私とパパこれからお付き合いするから、よろしくお願いします。」
「はい!」
「ちょっと待って。1つだけ教えてほしいんだ。大学の時、君が付き合っていた彼とはどうなったの?」
「ああそのことか。実は私大学の時、俊朗のことがずっと好きだったの。でも、あなが告白してくれないから、言い寄ってきた男の子に付き合うって言っちゃったの。その後にあなたが告白してくれて、二股は嫌だからあなたの申し出を断ったの。」
「そうか。それで?」
「うん。でもね、私が俊朗をずっと好きでいたこと、彼のことがそんなに好きじゃないのって伝わっちゃうんだね。深い中にもならず別れたわ。」
「そうだったんだ。」
「それから付き合った人はいない。好きでいつづけたあたなに再会できてうれしかった。だから、私を彼女にしてくれる?」
「僕には、渚がいるから・・・。」
「それを知っても言っているのよ。」
「ありがとう。」
3人の新しい関係が始まった。
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