第21話 焦り(赤山 修)
芸文賞、受賞の喧騒が一段落した。
「父が、話があるから家に来てほしいって。」
「うん。分かった。」
週末、赤山 修は、東出 鞠の家を訪ねた。
「修君、芸文賞の受賞おめでとう。疑っていたわけでは、ないんだが、本当に受賞するとは、本当に驚きました。」
「はい、自分でも驚いています。」
「約束どおり、娘をお願いします。」
「分かりました、幸せにすることをお約束します。」
2人は、親族だけの小さな結婚式で結ばれた。鞠のクラスと文芸部の生徒たちがお祝いのビデオを贈ってくれた。みんなから祝福されて、修と鞠は幸せだった。落ち着いたら、友人たちを招待してパーティーを開こうと思った。
赤山 修は、いよいよプロ作家として活動を始めることになったが、バイトの合間に原稿を書いていた時の比べて、時間はたっぷりあるのだが、何をしていいのか分からない。敬愛している昭和の作家、安藤工房の作品を精読したり、他の作家の小説を読み漁ったりした。
しかし、高校時代
「天から文章が降ってくる」
とうそぶいていた男の頭にも心にも、小説の構想どころか、発想源すら湧いてこなかった。
それでも、芸文社から、いくつかの短編やエッセイの原稿依頼をもらえた。書けない不安を拭うように、それらの執筆に集中した。もともと、魅力的な文章力の持ち主なのが奏功して、まずまずの評価を得ることができた。
ただ、紹介分の末尾に、たいてい書かれる言葉、『待たれる次回作』は、修の心を静かに抉った。
他にも、他の作家の新作小説の書評の仕事も得た。、感想に近い文章だったが、書いている間は、時間をつぶせた。しかし、徐々に焦りと不安は、大きくなっていった。
そんな時に、大きなニュースが赤山夫婦にもたらされる。
『赤山 鞠さん、高校教師と歌人の二刀流!!』
新聞、ネット、テレビにそんなニュースが躍った。
鞠が、門山短歌賞を受賞したのである。
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