第14話 深層の謎、解明?
「じゃあ、どうやって脱出しよう……?」
「分からない。あ、そうだ、この魔物たちってリベルテのペット?」
重要な話をすっとばして違う話題に行かないで欲しい。
脱出方法って、歩いて上がっていく以外にあるのかな? 崖を登るとか?
ただ、エルマの質問には答えてあげたい。
私について来てる魔物たちが何なのか……その関係性に名前を付けるなら。
「友だちとか、仲間とか……そういう感じなのかな」
「そうなんだ。おもしろいね……じゃあ、ポチ、お手!」
エルマがエスカトンフェンリルのルナの前に手を出す。
だけどルナにはまだ、お手を教えてないから、特に反応は無かった。
それどころか欠伸して伸びまでしてる。
「その子の名前、ポチじゃないんだけど……ルナって呼んでみて」
「ルナ」
「ワン!」
呼ぶと分かりやすく返事をしてくれた。
ポチってどっから出てきたのかな……。
「こっちのマキシマムウガルルムはパトリシアって言うから」
「ほへえ……パトリシア」
パトリシアは反応しない。
まだこの子は名前を覚えてないんだろう。訓練もしてないし。
だけど、パトリシアは私に近づいてきた。
エルマとの話で放置気味だったのが寂しかったのかな。そう思った私は、前足をいっぱいなでなですることに。
「グルグルグ……」
嬉しそうに喉を鳴らしちゃって……可愛いなあ!
そうするとまたルナが嫉妬したのか近づいてくるので、両手で一匹ずつ撫でる。
これこそ私にとっての最高の瞬間!
それを見ていたエルマが呟く。
「仲いいね」
「何故か知らないけど、ここの魔物たちは人間に敵意がないみたいだから」
「……それだけでもないような気もするけど」
「そうなの?」
「何となく……」
別に特別なことなんてしてないんだけどなあ。
パトリシアは体を洗ってあげたけど、ルナなんてパンあげただけだし……。
そう思ってると、エルマがパトリシアを撫でていた。
「ふわふわで気持ちいいね」
「そうなんだよ! 体ふさふさで気持ちいいんだよね。触ってると眠くなってくる」
パトリシアはさっきからグルグルと喉を鳴らしっぱなしだ。
ただ、この光景を見ていて気付いたことがあった。
ルナとパトリシア、そしてエルマに共通すること。
「もしかして深層の魔物って、魔物同士で争ったりもしない……?」
「そだよー」
エルマが返事をしてくれる。
当たり前過ぎて、私の発見に驚いてくれたりはしない。
「なんで……あっ」
なんでなのか……と思ったけど、すぐに閃いた。
エルマと出会う前までに色々と考えていたことの中に答えはあった。
魔物の生息数が極端に少ない。
魔物は食事を必要としない。
この環境が理由だったんだ。
「どしたの? リベルテ。考えてるみたいだけど」
「……ちょっと色々つながったから聞いて欲しい。私の考えを整理するためにも」
「ん、うん?」
ちょっと興奮気味な私を見て、エルマが若干引いている。
ごめんね、でも色々と謎が解けて嬉しいから。
「私、ずっと不思議に思ってたんだ。どうしてここの魔物たちが人間である自分のことを襲ってこないのかって」
「たしかに……言われてみればそうかも。リベルテが良い子だから?」
ボケをかましてくるエルマ。
可愛い顔で言ってくる冗談は半端なく可愛い。
「まず魔物たちが争わない理由なんだけど、それはここ、ダンジョン深層の環境が原因だと思う」
「ほへえ」
「魔物は食事を必要としないという大前提から話していくけど……魔物たちは自分が生きるために他の生物を捕食する必要性がない。つまり、魔物しかいないダンジョンにおいて食物連鎖は発生しないんだ」
「う、うん。そうなの?」
エルマが分かっているのかは知らないが、一旦話を進めていく。
とにかく一つ。
私はもう使い物にならない二層の地図の裏面にメモをしていく。
①ダンジョン内では食物連鎖が発生しない
「だけど、魔物が争うのってそれだけじゃない理由もあると思う。縄張り争いとか、群れの中での闘争とか、メスを巡る争いとか」
「聞いたことある」
「よかった。でも、深層の魔物たちは一層につき一体しかいなかった。魔物は基本的に自分の生まれた階層から移動しないから、深層の魔物たちに縄張り争いはない。一体だけだから群れもない。魔物は空気中の魔素から生ずるから、メスを巡って争わない……つまり、敵となりうる存在がいないから魔物たちが争う理由がない」
「ほへえ……」
エルマはちょっと分かってくれたようで、頷いている。
私は再び、地図に文字を書き込んでいく。
②敵が存在しないため、争いが起きない。
「最後に一つあるんだけど、これは多分の話ね……それは人間に遭遇したことがないってことかな」
「? それは?」
「基本的にダンジョンに入ってくる人間って魔物の素材を求めていることも多いから、魔物は狩られる対象なんだよね。そういう人間に遭遇してないから、私という人間に敵意を向けなかったんだと思う」
そんな私の考察を聞いてエルマはニマニマとした。
なんで?
「ん……じゃあ、やっぱりエルマの勘は間違ってなかった」
「どういうこと?」
「いいのいいの、続けて」
「……分かった」
私はさっき述べた理由を地図の裏面に書き込む。
③人間に遭遇したことない
「ここの災厄級の魔物たちが温厚な理由は――。
①ダンジョン内では食物連鎖が発生しない。
②敵が存在しないため、争いが起きない。
③人間に遭遇したことない。
この三つの理由からなんだと思う」
考えを纏められてスッキリ!
そんな私にエルマはパチパチと拍手してくれた。
「おお~、なんか納得感ある」
「でしょ! 多分これだと思う!」
「すごいね。リベルテ」
エルマがよしよしと背伸びして頭を撫でてくれた。
そのひんやりとした手に撫でられるのは、とても気持ちが良かった。
それを味わっていたかったが、ごほんと咳をして話を進める。
「この考えが本当に正しかったらなんだけど……条件さえ整えば百層のボスを無視して、ダンジョンを脱出することができるかもしれない」
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