終末世界で隻脚は少し無理があると思うのですが!?

黒い釘

第1話 終末世界で隻脚はちょっと無理があると思いません?

 2度目となるゾンビ物、今回は逃亡しないようにしたいなぁ~(遠い目)

 安楽田陽?知らない子ですねぇ~


 今回は隻脚と言うことでね。

 第1話はかなりつらい過去が明らかになります。

 主人公が辛い目に遭うのってやっぱりいいですよね。しっかりと曇ってもらいたい。


 晴らしてほしい?

 気が向いたらね、気が向いたら...


 それでは記念すべき第1話、お楽しみください。

 __________

 その日は突然訪れた。

 目の前には何人もの男と、こちらを見下す女がいた。


 俺の手足はロープで縛られ、俺は地面に寝そべっている。

 目線の先には姉も俺と同じ姿勢でいた。


「馬鹿なのね。この世界ではあなたみたいな連中から死んでいくの」


 俺は殴られ、未だに朦朧とする意識を何とか保ち呟く。


「姉さん!」


 呼びかけても返事はない。

 おそらく姉さんも後ろから何かで殴られ、気絶している。


 最悪、俺は死んでもいい。

 でも姉さんだけは...


 すると女は思い出したかのように呟いた。

「そうだ。あんたたち、この女好きにしていいわよ。弟さんはゾンビの群れにでも放り投げといて」


 好きにしてもいい。

 その言葉の真の意味も理解させられた。

 

 ようやく頭がはっきりしてきた。


 こいつらに俺たちは騙されたのだ。

 怒りを噛み殺し、尋ねる。


「なんで、なんでこんなことをする?」


「え!?楽しいからだけど」


 何かが切れた音がした。


「殺す、殺してやる」


 生まれて初めてここまでの怒りを込めて言葉を吐いた。


「やってみれば?出来たらだけど。もういいわ、投げ込みなさい」


 下劣な顔をした男が近づいてくる。


「姉さんは俺たちでかわいがってやるよ」


 もう一つ、何かが切れた。

 今度は何も聞こえなかった。


 俺は男に運ばれ、死体処理場(ゾンビの群れ)に投げ込まれた。



 新鮮な肉に群がるゾンビ達、正確な数も分からない。

 普段なら死を覚悟するだろうが、今の俺にはそんなものは微塵もなかった。


 右足を噛まれるが痛みも、恐怖も何もかも無視し、蹴り飛ばす。

 奴らを殺せればなんでも良かった。

 手首が千切れる覚悟でロープを切り、ゾンビを撲殺する。


 一体、二体、三体と頭を殴り潰して殺した。


「刃ン!!助けて!」

 姉さんの悲痛な叫びが聞こえるたびに体中が燃えるように熱くなり、力が漲った。

 足のロープを殴りながら外し、近くにあった窓を拳で割りガラス片を手に取る。


 拳からは鮮血が吹き出し、手のひらはズタズタに引き裂かれる。

 全部、どうでもよかった。


 ゾンビを殺した頃、急に体中が冷えてきた。

 直感で分かった。

 このままだと奴らを殺す前にゾンビになる。

 それだけは防がなければならない。


 噛まれた右足を見るとふくらはぎの辺りを噛まれていた。

 やるしかない。


 何のためらいもなく手のガラス片を自分に向け、右足を切断し始める。

 切れ味の悪いガラス片で切ったからだろうか?足の血管が何本も千切れ、激痛が走る。


 今にも気絶しようだ。

 でも

「やめて。。。もう、やめて」


 俺の手は止まらない。

 姉さんの叫びと、男たちの卑劣な笑い声が皮肉にも俺に生きる力を与えてくれた。


 歯が割れるほど噛みしめ、痛みに耐えた。

 奴らを絶望の底に落とすために


 無心で足を切り続ける。

 綺麗に切れるわけがないし、筋肉や筋で何回も止ったが痛みを押し殺し刃を何度も押し、引く。

 ガリッ

 更に激しい痛みが全身を走った。

 骨だ。骨で止まった。


 ガラスの刃ではこれは切れない。

 ならばどうするか?


 拳を右足に何度も渾身の力で打ち付ける。

 そう、骨を折るしかない。

 目玉が飛び出そうな痛みが俺を襲うが、姉さんの苦痛に比べれば大したことは無い。


 脛を何度も殴り、ようやく骨が砕けた。

 もう少しだ。

 もう少しで奴らを殺せる。


 残りの肉を切った。固い筋は無理やり右足を持ち引きちぎった。

 ようやく、殺しに行ける。


 自分の右足を左手に持ち、その建物に入った。

 出血も、痛みもどうでもよかった。


 無い右足を引きずり、バランスを壊しながらなんとかたどり着いた。

 あの部屋に、


「な”!?」


 どうやらびっくりさせてしまったようだ。

 女はもちろん、姉さんを嬲るゴミも目を丸くしている。


 後悔させてやる。

 奴らが驚いているうちに俺は片足だけで走り、衝突する。


 まずは俺を投げ飛ばした奴からだ。

 姉さんに夢中で武装もしていなかった男はバランスを崩し、倒れる。


「や、やめ/


 覆いかぶさり首の頸動脈を噛みちぎる。

 急激に冷たくなった気がした。


 次は姉さんを苦しめたやつらだ。


 俺の足を投げ、その隙に今度は両足で走った。

 右足の断面は摩擦と衝撃で悲鳴を上げる。


 しかし片足で走るよりも早かった。


 男どもはヒィなどと悲鳴を上げていたが俺の復讐の興は削がれない。


 隠し持っていたガラス片を目に突き刺し、全体重をかける。

 次第に抵抗する力は弱くなり、息絶えた。


「つ、ぎ”はぁ”?」


 と問いかけると男たちは窓を突き破り、外に逃げ出した。

 追いかけようと走ったが、下にはゾンビが何十体も居た。

 武器も持たないで降りたからだろうか、全員が食われながら死んだ。


 後は、もう女だけか。


 ゆっくりと片足で歩く。

 けんけんの要領だ。


 近づくにつれて女は震えだし、土下座してこんなことを言った。


「わ、私が悪かった。もうしないから許してください!!」


 怒りを通り越して呆れるな。


 許さない。

 許すわけがない。

 やってみろ、と言ったのはそっちだろう?


「ッヒ」


 奴の体に跨り、親指を両目に持って行く。

 柔らかい感触と悲鳴が脳に焼き付いた。

 気が付くと、その体は熱を発していなかった。


「ね”ぇ、さん..」


 ようやく終わった。

 出血しすぎただろうか?


 ふらつきながら俺は姉さんの下に駆け寄る。


「終わったよ。姉さん、帰ろうか」


 返事をしない。


「もう、終わったんだよ。姉さん怖がらなくてもいいんだ」


 顔を持ち上げ、瞳を見たときに気が付いた。

 もう、何時間も前にこと切れていたんだ。


「あ”?ぁ...aあ”あ”ああああああああああああ!!!!!!!!」



 _______


「は”ぁ、はぁ」


 朝起きると汗でびしょびしょになっていた。

 この夢も久々に見た気がするな。

 多分、一生見るんだと思う。


 でも、


「これのせいだったのかもな」


 汗ばんだ服を脱ぎ捨て、新しい服に着替える。


 俺は目覚めるとビニールの袋にたまった雨水で顔を洗い、朝食に缶詰や乾パンを食す。その後何度も読んだ小説を読み、調達してきた器具を使って筋トレをしたり、格闘術の訓練をしたりする。


 言っておくが俺は格闘家ではない。

 なら、何故こんなことをしているのかって?


 3年前のある日、ゾンビパンデミックが起きた。

 そう、よく見るゾンビ物のドラマや映画そのまんまだ。


 研究施設から漏れ出したのか、はたまた謎の隕石と一緒に飛来したのか。

 原因なんかはわからなかったが、確かなことはただ一つあった。


 政府も軍も警察も

 全く役に立たないことだ。


 ゾンビは人間だの。

 ワクチンを作るだの。

 殺人の罪で逮捕するだの。


 そんな暇はないって言うのに、揉めに揉めて気が付いたら世界は崩壊。

 秩序も、文明も低下した世界で戦わなくてはどうなるか?


 答えは一つ、男なら凄惨な死を。女なら目を覆いたくなるような暴行を。

 って二つだったわ。


 とにかく、俺が言いたいのは世界は終わった。

 そして俺は生きている。

 その理由は一つ、人を信じないからだ。


 俺はこの世界で戦えるだけの力を身に着けることができた。

 他人を守ることも出来るだろうし、守ろうとしたこともあった。


 しかし、裏切られた。

 もう思い出したくもない忌まわしい記憶

 俺が姉さんを殺したんだ。


 その時は奇跡的に生き残ったが一度起きた奇跡が2度、3度あるとは限らない。


 だから、俺は人は助けない。

 人を守らない。

 馴れ合いも協力も略奪も裏切りも正当防衛以外は何もしない。


 二度と人とは関わらない。

 そのつもりだった。


 そうするつもりだったんだ。


「おい、今日も物資の調達に行こう。準備しとけよ」


 隣の部屋に気持ち大き目の声で話しかける。


「分かってる」


 その返事は無気力で、淡々と述べられた。


「ったく、なんでこんな不愛想なガキを拾ったんだか」


 すでに少し後悔をしていた。

 時を戻すこと一周間。

 ______


「…」


 俺はいつものように拠点周辺を探索していた。

 パトロールと言った方が適しているかもしれない。


 なぜこんなことをしているのか?

 こういう馬鹿が俺の縄張りとまでは言わないが、家の近くにやって来るからだ。


「俺は樹下刃きのしたじん。ここらにはもう物資は無いし、俺の家もある。近くの避難所は教えるし、引き返してくれたらありたいんだが」


 避難所はブラフだがこのように平和的に交渉を持ちかけても帰ってくる答えは人相でわかる。


 バットやバール、ナイフで武装した4名の男女。

 その眼は濁っていて、こっちを舐めている。

 取引を持ち掛けたのも建前、こういう輩に質問して帰って来る答えのほとんどはこうだ。


「嫌だね。なんでお前みたいな片足に指図されなきゃいけねぇんだよ」


「おいおい!足大丈夫かぁ~?」


「お前こそ出てけよ。避難所の場所も教えてな」


「あははは!ちょっと言いすぎ~」


 理由は単純明快、俺が隻脚だから。

 両足共に長ズボンを吐いているが、靴は無いし隻脚なのはバレバレだろう。

 それ以上でも無いし、それ以下でも無い。


 そりゃ、片足がない男なんてこの世界からすれば格好のカモ。

 殺して物資を奪わない選択肢は奴らからすれば存在しない。


 この荒れた世界で3年も生き残っているのならなおさらだろう。


「はぁ~今週で3回目だぞ。いい加減にしてくれ」


「は?なめんなよ。そのきれいな顔、真っ二つに叩き割ってやるよ」


 そう意気揚々と馬鹿その1がバットを頭上に大きく振りかぶって走ってくる。


「ビビってんのかぁ!?」


 かなりの速度で走って来るが俺は微動だにしない。

 構えも、逃げも、武器を抜いたりすることも無かった。


「死ねぇ/ガフ」


 俺は右足を振り貫き奴の腹めがけて前蹴りを放つ。 

 生暖かく、肉を刺す嫌な感触が足に伝わるが無視する。 


 馬鹿その1の腹を貫通した剣を返し、内から外に切り開く。

 脇腹辺りから出た剣は真っ赤に染まっている。

 馬鹿その1はそのまま地面にへたり込む。


 地面は赤一色に染まり、地に伏した男はピクリとも動かない。

 一目で分かる。

 即死だった。


「な、ぁあ...」


「う、そだろ。リュウジ!」


「ヴォエ」ビチャビチャ


 あの男の仲間は明らかに戦意を喪失していた。

 それはそうだ。

 目の前で仲間が蹴りで即死したんだからな。

 

 最初の方はこの反応のせいで殺すのに戸惑ったこともあったかな?

 

 血が付いた右足側の長ズボンを無理やり千切り、死体に捨てる。

 その様子を見たあの男の仲間の一人が叫ぶ。


「なんなんだよ、!?」


 俺の右足は剣だ。

 比喩表現などではなく刃、切り捨て骸を生み出す武器だ。


 切り落とした俺の足、ひざ下には両刃のクレイモアを折ったものを取り付けてある。

 他にも俺の改造義足はあるが今日はこれだけだ。


「殺そうとしたんだ。殺されても文句は言えないよな」


 淡々と吐き捨て、ガリガリと火花を散らすクレイモアを引きずりながらゆっくりと残りの3個の死体に向かって歩き出す。


「ヒッ、やめって」


「く、来るなぁあああ!」


 一人の男がバールをもってまたも走り出す。

 さっき殺されたお仲間がどんなふうに攻撃したのか忘れてしまったのだろうか?

 パニックになっているししょうがないか。


「どんな風に攻撃されても関係ないしな」


 今度は下からの攻撃か。

 どこを狙ってるのか見当もつかない。


 おそらく我武者羅に武器を振るっているのだろうが...


「死ね」


 そう言いながら俺は後ろ回し蹴り(斬り)を放ち首と胴を泣き別れにさせる。

 必死な表情をしながら死んでいる。

 こういう死に方はしたくないものだ。


「な、なんでよ!?来ないでぇええ!」


「ヴォエ」


 残りは既に戦意等残っていない女といまだに嘔吐している雑魚だけ、勝負はついたと言っていいだろう。


 だが、俺は容赦しない。

 ただ殺す。


 そこに慢心も愉悦も罪悪感もなく、殺すべき虫を潰すだけ。

 そう決めてきた。


 まずは男からか、吐しゃ物の匂いが鼻について不愉快だ。


 男は泣きながら俺のある方の足にしがみつき生きたい、死にたくないと懇願する。


「来世はもっとマシな人生を送れよ」


 その言葉を無視して背中に刃を突き立て殺害する。


 このズボンは捨てないとな。

 もう血まみれで使えない。


「ごめんなさい。出来心でやってしまいました。何でもします。体も捧げ/


 女が何かを喚いていたがかかとを頭に落とし、身体を縦断する。


 さっさと帰ろう。

 死体はが処理してくれる。


 ___


 パトロールがてらまだ漁り切っていないコンビニに立ち寄り物資を頂戴した後、今度は縄張りの反対側に向かう。


 コンビニで頂戴したチョコレートバーを食べながらぎこちなく道を歩いているとああいう馬鹿よりも多く見かける隣人さんを見つける。


「やっぱりいるよな、殺しても殺しても蛆のように湧いてくる。鬱になりそうだ」


「あ”あ”」


 その隣人さんはうめき声と腐敗臭をまき散らしながらこちらに小走りほどの素早さで近づいてくる。


 正直、この足に汚い血をつけたくはないが。

 

 ブンッという風切り音と共に7割ほどの威力の斬撃と言う名の蹴りが放たれる。

 少しの抵抗もなく死体の右腕は切断されその勢いのまま胴、左腕と切り落とす。 


 血を蹴り払う。

 なかなかの切れ味だ。

 しかし、少なからず地面でこすれてしまう都合上、しっかりと手入れをしなくてはこの切れ味を維持できない。


 面倒だが、命に係わる。

 早々にパトロールを終わらせて拠点に戻ろう。

 人を殺すのは意外と心身共に疲れる作業だからな。


「キャァアアア!!」


 そう決意したその瞬間、何者かの叫び声が聞こえてきた。


「最悪だ。なんで今に限って問題が起きるかな」


 しかし向かわない訳にはいかない。

 理由は2つある。

 1つ、この声につられてゾンビが寄ってくる。

 2つ、この叫び声が馬鹿たちの罠の可能性がある。


 1なら、さっさと原因を断たなくてはいけないし、

 2なら普通に駆除するだけだ。


 声の大きさからそこまで時間はかからないだろう。


「全く、嫌な予感がピンピンするな。…さっさと終わらせて漫画でも読もうか」


 俺は一段階、気を引き締める。




 _____________________


 樹下 刃(きのした じん)


 性別 男

 年齢 26

 身長 186㎝

 体重 86kg


 戦闘スタイル

 刃脚を用いた近接戦闘、剣術、格闘術


 好きな物 風呂 刃の手入れ、漫画、手の凝った食事、小動物

 嫌いな物 人間、ゾンビ、裏切り、悪臭、虫


 詳細 裏切られた過去を持つ隻脚の剣士。右足の膝から下を失っているが、戦闘能力は折り紙付き。実戦で培われた格闘術と手斧、ナイフを扱う。


 服装

 主にロングコートや長ズボンなど刃脚やナイフを隠せる服装を好む。寒がりなので少し厚着をする癖がある。


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