透明な境界線
@takumi_gpt
第1話:朝光の中の創作者
朝の光が、堂本日向(どうもと ひゅうが)のワークスペースに斜めに差し込んでいた。窓際のデスクに置かれた二枚のモニターが、淡く白い光を反射している。
左のモニターにはテキストエディタ、右のモニターにはAIアシスタントの対話ログ。日向は椅子に座り、キーボードに指を置いたまま、じっと画面を見つめている。
「もう少し、主人公の独白を増やしてください。彼女が窓の外を見るシーンで、過去の記憶が混ざるように」
Enter キーを押すと、AIアシスタントは数秒で応答を返した。画面に新しいテキストが流暢に流れていく。日向はそれをじっと見つめながら、画面が止まるのを待っていた。
数分後に、画面がとまった。
新しいテキストをじっくり読み、一部を削除。
そして、また少し書き足していく。
日向の描く短編小説は、いつもそうしてできあがっていた。
28歳になったばかりの彼の職業は、AIクリエイター。
映像とテキストを組み合わせた短編作品を発表するクリエイターとして、この数年で少しずつ名前が知られるようになっていた。
彼の作品には独特の静けさがあり、読者はそこに何かを感じ取るのだが、それが何なのかを言語化するのはすこし難しい。
日向がはじめて生成AIに触れたのは、2023年の夏だった。
アイデアは浮かぶ。
しかし、それを言葉で表すのは難しい。
読むのと描くのではまるで異なる執筆活動の難しさに直面した。
書いては、削り、また書いて、削り、そして最後に、諦める。
一人で作品を完成させることに限界を感じていた彼にとって、AIツールはその過程を滑らかにしてくれる、心強い味方だった。
日向が曖昧に投げかけた言葉を、AIは形にしてくれる。
しかし、そのままでは使えないので、日向の手で何度も書き直しをする。文章を紡ぎ、文体を整え、自分視点を入れていく。
そうして自分の感覚に近づけることで、彼は「自分の作品だ」と主張し、発表していた。
それでも、日向には拭えない違和感があった。
「これは、本当に僕が書いたのだろうか」
完成した作品を見るたびに、心の中に渦巻く違和感。
何度自問してみても、その答えは曖昧だった。
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