第5話「ランキング圏内、そして見えてきた"AI作品"という壁」

第5話「ランキング圏内、そして見えてきた"AI作品"という壁」

投稿から二週間が経った。

『異世界で拾われた俺が、最強の守護者になるまで』は、着実に読者を増やしていた。

PV:45,230

☆:512

フォロワー:287

コメント:156件

「……すげえな」

俺は昼休みの教室で、スマホの画面を見つめていた。

二週間前まで、こんな数字は夢のまた夢だった。

それが今、現実になっている。

「ゆーま、何見てるの?」

隣の席から、心春が覗き込んできた。

「ああ、作品の数字」

「もう見たよー。すごいよね! フォロワー300人目前!」

心春は嬉しそうに笑っている。

「でもさ、心春。これってお前の過去作と比べてどうなんだ?」

「うーん……」

心春は少し考えてから、答えた。

「私の過去作は、二週間でだいたいPV8万くらいだったかな」

「……倍近く差があるじゃん」

「まあ、私のソロ作品は『春告鳥』っていうブランドがあったからね。でも、ゆーまとの共同作品も、十分すごいよ」

「そうかな……」

俺は画面を見つめた。

確かに、俺一人では絶対に到達できなかった数字。

でも――まだ足りない気がした。

「なあ、心春」

「ん?」

「俺たち、ランキング入れるかな?」

「ランキング?」

「日間ランキングとか、週間ランキングとか」

心春は少し考えてから、答えた。

「……正直、難しいかも」

「やっぱりか」

「だって、今のランキング上位は、ほとんどAI作品だから」

心春はスマホでカクヨムのランキングページを開いた。

【日間ランキング】

1位:『最強魔王に転生したけど、実は勇者でした』【AI補助】 PV:1,240,000

2位:『異世界チート無双〜俺だけレベル9999〜』【自動生成】 PV:980,000

3位:『転生したら美少女だった件について』【AI補助】 PV:760,000

「……」

俺は画面を見て、言葉を失った。

桁が違いすぎる。

「AI作品は、更新頻度が圧倒的なんだよね。一日に10話とか20話とか更新できるから」

「……そんなに?」

「うん。それに、AI特有の『読みやすさ』もある。万人受けする文章で、展開もテンプレ通り。だから、読者がどんどん集まる」

心春は少し寂しそうに笑った。

「手書き作品は、どうしても更新頻度で負けちゃうんだよね」

「……じゃあ、俺たちは勝てないってことか?」

「勝てないわけじゃないよ。ただ――」

心春は俺を見て、言った。

「手書き作品は、『質』で勝負するしかないの」

「質?」

「そ。AI作品にはない、人間らしい温度とか、感情の深さとか。そういうものを丁寧に描いていけば、きっと読者は気づいてくれる」

「……そうかな」

「そうだよ。実際、私の過去作品も、そうやってランキングに入ったんだから」

心春は笑って、俺の肩を叩いた。

「焦らなくていいよ、ゆーま。私たちは、私たちのペースで頑張ろう」

「……ああ」

俺は頷いた。

でも――心の中には、まだモヤモヤしたものが残っていた。


【放課後・図書室】

「じゃあ、今日は第15話のプロット考えよう」

心春はノートを開いて、ペンを取り出した。

「第15話は、村の祭りのシーンだよね?」

「ああ。主人公とヒロインが、一緒に祭りを楽しむ」

「いいね! 日常回、久しぶりだし」

心春は嬉しそうにペンを走らせ始めた。

「……なあ、心春」

「ん?」

「俺、ちょっと思ったんだけど」

俺は少し迷ってから、口を開いた。

「俺たちも、AI使ってみないか?」

心春の手が、止まった。

「……え?」

「いや、別に全部AI任せにするわけじゃなくて。補助的に使うっていうか……」

「ゆーま」

心春は真剣な顔で俺を見た。

「私たちの作品、【完全手書き】【AI不使用】ってタグつけてるよね?」

「……ああ」

「それって、読者との約束なんだよ。『私たちは、自分たちの手で物語を紡いでいます』っていう」

「でも、それじゃランキングに入れないだろ」

「入れないかもしれない。でも――」

心春は俯いて、小さく呟いた。

「私は、AIに頼りたくない」

「……なんで?」

「だって、AIが書いた文章は、私の文章じゃないから」

心春は顔を上げて、俺を見た。

「私は、自分の言葉で物語を紡ぎたいの。読者に、私の想いを届けたいの」

「……」

「それに、ゆーまだってそうでしょ? 自分の手で書きたいから、カクヨム続けてきたんでしょ?」

「……そうだけど」

「だったら、その気持ちを忘れないで」

心春は俺の手を握った。

「私たちは、『完全手書き』で戦うの。それが、私たちの誇りだから」

「……」

俺は心春の目を見た。

そこには、強い意志が宿っていた。

「……分かった」

「ほんと?」

「ああ。お前がそこまで言うなら、俺も手書きで頑張る」

「ありがとう、ゆーま」

心春は笑って、ペンを走らせ始めた。

「じゃあ、第15話のプロット、詰めていこう」

「おう」

俺も頷いて、ノートに向かった。

(……まあ、確かにな)

俺がカクヨムを始めたのは、自分の物語を書きたかったから。

AIに頼るのは――やっぱり、違う気がする。


【その日の夜】

俺は自室のパソコンの前で、カクヨムのランキングページを開いていた。

【週間ランキング】

1位〜10位:すべてAI作品

11位〜20位:ほとんどAI作品

そして――

【30位】

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