第6話
「え? 俺達と一緒にダンジョンに? 一体何故?」
「ん〜……? 何でって言われてもね……」
アレスがティオに何故自分達と一緒にダンジョンに挑む話を持ちかけたのかを聞くと、彼女は自分でもその理由がよく分かっていないのか少し考えてから口を開く。
「私、昔からよく考えずに直感で行動していて、その直感がアンタらを見て『コイツらだ!』と言ったんだよね。実際の話そこのアンタ、アレスだっけ? アレスの実力はよく分からないけど、クノイチのコトリはダンジョン内の探索だけでなく戦闘でも期待できそうだし、アンタらと一緒にダンジョンに挑んだら結構いい所まで進めそうな気がしたから誘ったってわけ」
「……随分といいかげんですね」
コトリはクノイチの実力を買ってくれるのは嬉しいが、それでも楽観視しすぎているように思えるティオの話を聞いて呆れたように言うのだが、ティオは特に気にした様子もなく話を進める。
「とにかくまずはお試しってことで一回ダンジョンに行ってみないかい? それで私と合わないって言うのだったらそれっきりで構わないし。でも私はこの星のダンジョンに長い間挑んでいるから、アンタ達に色々と教えてあげられるよ? アンタ達だってダンジョンの情報は欲しいんじゃないのかい?」
「……それもそうですね。ではよろしくお願いします」
ティオの言う通り、ダンジョンの情報を期待して彼女の話を聞くことにしたアレス達にしてみれば、ダンジョンに慣れた熟練の冒険者が同行して案内してくれるのは願ってもないことで、アレス達はティオと一緒にダンジョンに挑むことにしたのであった。
☆
明日ティオとダンジョンへ行く約束をしたアレスとコトリは、その後ティオと別れて今日泊まる宿を探して島にある街の中を歩いていた。
アレスには自慢の宇宙船があり本来ならば宿を探さなくても宇宙船で寝泊まりすればいいのだが、もし他の人間にアレスの宇宙船のことが知られれば間違いなく大きな騒ぎとなるため、こうして他の冒険者と同じようにこの星の宿に宿泊することにしたのだった。
「……」
「あー……、コトリ? どうかしました……か……?」
ティオと別れてからずっと背後から視線を感じていたアレスは、後ろを振り返って自分に視線を送っているコトリに話しかけようとするのだが、コトリのアレスを見る目はいつもより冷たく、仮面で顔の下半分は見えないがそれでも彼女が不機嫌なのが分かった。
「え、えっと、コトリ……さん? 一体「……アレス様、どうしてですか?」……え?」
明らかに不機嫌なコトリに何事かと聞こうとしたアレスだったが、彼が質問をするよりも先にコトリは恨めしげな視線をアレスに向けて聞いてきた。
「どうして? 何のことです?」
「……あのティオという女のことです。どうしてアレス様はあの女の同行を許可したのですか?」
どうやらコトリが不機嫌だったのは、アレスがティオの申出を承諾したことが原因だったようで、コトリの質問にアレスは困ったような顔で答える。
「いや、それはティオさんとの会話を聞いていたのだから分かるでしょう? 私達はダンジョンに挑むのは初めてなのだから、この星のダンジョンに詳しいティオさんの案内は必要で……」
「……ダンジョンの探索だったら私……クノイチの力で何とかなります」
アレスの言葉を遮って反論するコトリ。
生まれながら隠密行動に特化したスキルを使用できるクノイチのコトリにとって、未知の場所に先行して情報を集めるという仕事は得意分野の一つである。しかしコトリにはアレスが自分よりもティオの方を頼りにしているように思えて、その事が彼女のプライドを傷つけていた。
「……それとも、もしかしてですけど……アレス様はティオのような女が好きなのですか? 確かにアレス様は胸の大きな女性が好きで、ティオは私より少し胸が大きかったですけど……?」
そこでコトリはアレスがティオの同行を許可したもう一つの可能性に気づき、今度は疑わしげな視線をアレスに向けながらティオの姿を思い浮かべる。
今思い返せばティオは小柄だが巨乳なコトリよりも大きな胸をしていて、冒険者組合のビルにいたどの女性の冒険者よりも巨乳だった気がする。そんなティオの巨乳にアレスが見惚れてしまって一緒にダンジョンに挑む約束をしたのではないかとコトリが疑っていると、アレスが焦ったような口調で答える。
「そ、そ、そんな訳ないでしょう? お、俺は本当に全員の安全を考えてティオさんに同行をお願いしたんですって。コトリだって知っているでしょう? ダンジョンが本当に危険な場所だって……」
「……それはそうですけど」
コトリはアレスの言葉を理解して返事をするが、それでも完全に納得していない様子の彼女にアレスは念を押すように言う。
「コトリ、貴女は『一度死んで甦った』けど、次があるかは分かりません。命は大切にするべきです」
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