とある令嬢の手記

今日も彼から手紙が来た。


 内容は毎度似た様な話だが、その実、彼の”人を見る目”というのが恐ろしいほど正確だった。

 見る相手についてはある程度偏ってはいるけれど……


 ただ、それが私にとっては――


 とにかく、彼が手紙で報告してくる相手というのが、例外なく優秀な、あるいは才能に溢れた者ばかりだった。

 それは、私に様々な利益をもたらしてくれた。


 本当に彼は素晴らしい。


 読むたびにうんざりするほど移り気な内容ではあるが、どの相手も才能に溢れているのだから、私としては複雑な気持ちになってしまうのだが。


 けれど、彼からの手紙は楽しい事に変わりはない。

 毎度毎度やきもきもしてしまうが、私が手を回すことと、彼自身が実に”ヘタレ”であることが幸いして、最近では安心して手紙を読んでいられる。


 ――私は、彼の事を知っている。

 実際に何度か会ったこともあるけれど、彼の興味はいつも亜人族の耳や尻尾にいってしまって、私を見てはくれていない。


 むしろ――彼は私の事を”知らない”だろう。


 けれど、今はそれでいい。 


 いずれ彼は私のものになる。ふふ……


 切り札も用意してある。


 彼は間違いなく私を受け入れてくれる。


 そのときが――とても、楽しみだ。

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