08:第二階層

 第一階層と違って階段を降りた先に松明は無かった。第一階層と共にチュートリアルは終了したのだろう。

 火を消した松明の先端に就寝前に買った【魔術】の〈松明の灯マジックトーチ〉を使った。どうやらこの魔法は、明るさは【魔術】のレベルに依存し、持続時間は消費マナに依存するらしい。

 という訳で、三メートル先が辛うじて見えるかどうかの、ぼやっとした薄暗い明りを発する松明もどきが完成した。


「すごく、暗いわね」

「ですね……」

『安心しろ影人は闇に強い。俺にはこの灯りでも十分だぞ』

「まあそれを言っちゃうとあたしにも闇視があるからこれでも良いんだけどさ。肝心のあんたが見えてないんじゃあ駄目じゃないかしら」

 ごもっとも、僕は全く先が見えてなくて超不安だ。

 それにしても二人ともこんな光で先が見えるとは、さすが迷宮型を選択するだけはあるなあ。

 結局松明に火が灯された。〈松明の灯マジックトーチ〉は失敗だったが、使用した意味はあったようで【魔術】のレベルがひとつ上がり【検索】の損失を回収することができた。


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 〈松明の灯マジックトーチ〉を唱えた

 ・マナ-5


 魔術レベルup

 ・BP+1

 ・魔力+1

  ・マナ+10

 ・耐術+1


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 生命: 30/ 30

 マナ: 18/ 33

 持久: 40/ 40

 重量: 24/ 60


 筋力:■■■□□□□□□□

 魔力:■■■□□□□□□□

 器用:■■□□□□□□□□

 耐久:■■■□□□□□□□

 耐衝:■■□□□□□□□□

 耐術:■■■□□□□□□□


 近接:□□□□□□□□□□

 投射:■■□□□□□□□□

 魔術:■□□□□□□□□□

 法術:■■□□□□□□□□


 BPボーナスポイント:12


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 第二階層も変わらず骨が出現するらしい。いちおう僕も石を投げて協力したつもりだが、きっと僕がいなくとも問題ないほどに二人は危なげなく骨を屠っていった。一度だけ道が別れたが、数メートル進んだ程度ではどちらも先が見えず、戻る手間を惜しみ後に選んだ方をそのまま進むことに決めた。


 しばらく進んでまた分かれ道に差し掛かったが、今度は先に進んだ方がすぐに小部屋に当たって行き止まりだった。

 扉も格子もない小さな部屋の正面の壁には棚があった。棚にはほぼ何も置かれていなくて、小さな箱ひとつと鞘に入った剣が見て取れる。

 三人が入るには狭い小部屋だから、カゲだけが入り剣と小箱を持ち帰って来た。箱は地面へ剣はこちらへ。イーナはいらないと首を振るから予備の剣になった。

 鞘から剣を抜いてみる。剣の形状やサイズは第一階層で手に入れたものとほぼ同じ。きっとショートソードだ。休憩の時にでも『検索依頼』してみよう。


『むぅ釘が打たれているな』

 カゲが長剣を抜いたのを慌てて止めて抜き身の方の剣を差し出した。

「待って。こっち使って」

『助かる』

 長剣は貴重な主武器、雑に扱って曲がりでもしたら大変だ。

 カゲは器用に天板の隙間に剣を差し、てこの要領で蓋を開けた。のぞき込む三人。


「チーズと固そうなパン、そしてこっちは干し肉ね」

「これ食べれますかね?」

 干し肉ではなく最初の二品に対しての台詞。どれも保存の効きそうな食品ではあるが、食べれるかどうかは別問題だ。

 正直に言わせて貰えば、いつのだよ!? って話だ。

「なに言ってるのよ。それこそ浄化あんたの出番でしょ」

 あーそう言う……

 精気を糧にするカゲをちょっぴり羨ましく思った。

 小箱は解体されて釘と木材に分けられた。木材は薪か、もしくは松明代わりになり、釘は未来の出番待ち、いまはバックパックの肥しとなる。

 それからも分かれ道はあったが、小部屋は無くただの行き止まりばかりで収穫は無い。収穫が無いと言えば骨の方も同様だ。

 通路の途中で何匹か倒したがすべて無手の無装備。レベルも上がらず全く利なしだ。



 そしてまたすっかりお馴染みとなったあの音が聞こえてきた。


カラ、カラ、カラン


 慣れ過ぎてもはや声を掛け合うまでもない、前方に骨ありだ。

 向かうより待つ方が有利なので、僕たちは合図もなく足を止めた。しかしいつまで経っても音は近づいてこない。


「扉でもあるのかしら?」

『そうかもしれんな。仕方がないこちらから行くぞ』


 カゲが走る。イーナも続く。松明が遠ざかるので僕は光を追う。勢いはそのままで戦闘に入るかと思ったが、カゲは立ち止まりこちらを振り返った。そしてイーナも同じだ。

 もし僕の後ろにもう一人居たのなら僕も振り返っただろうか。

 鉄格子の向こうに二体の骨。

 しかし第一階層の時のように周囲に扉を開くためのレバーは無くて、これを開ける方法が無かった。


「これはどう開けるんでしょうか……」

「近づきすぎると危険よ」

 荒めの鉄格子から骨の手が出ているのだ言われるまでもない。しかし注意はありがたく受け取り、頷き返しておく。


 中の骨に注意しながら皆で思い思いに調査をした。そして出した結論は、こちらから・・・・・開ける方法なしだった。

 実は僕が投げるには大きすぎる石に〈松明の灯マジックトーチ〉を使い、光る石を鉄格子の向こうに投擲して貰った。すると骨たちの向こう側に、天井から釣り下がる鎖が見えたのだ。きっとあれを引くと鉄格子が上がるに違いない。


『戻るぞ』

「そうね。分かれ道まで戻って別の道に行きましょう」

 ここは迷宮で食料を含め資源はすべて有限だ。いまは他に行ける場所があるのだからここで時間を浪費すべきではない。


「最初の分かれ道まで戻るならいっそ第一階層まで戻って水を汲みませんか?」

『そうだな戻って休憩しよう』

 喉が渇いたと感じていたが休憩までとるつもりは無かった。しかし言われてみればかなりの時間歩いているような気がする。

 疲れを感じた時に敵に出会えば命に関わる。

「そうですね。戻って休みましょう!」



 第一階層に戻り、樽に入った水を水袋に移していく。

 移動中二つの水袋を三人で分け合って飲んでいた。量に限りがあるため遠慮して飲んでいたが、それでも水袋はほぼ空になっている。喉も乾くはずだ。

 再び水袋二つ分、[浄化ピュリフィケーション]を使って飲料水にしておく。

 さらに空き瓶に水を汲んで[浄化ピュリフィケーション]。こちらはいま飲む分だ。今回で樽の中の水はずいぶん減った。もう一回は足りるだろうがきっと二回分は無い。


 さらに小部屋で手に入れた干し肉と固そうなパンをそれぞれ[浄化ピュリフィケーション]し食事とする。もし家の戸棚からこんなパンが出てきたら即ごみ箱行きだろう。しかし迷宮ここでは代えがたいごちそうで、とても美味しかった。


 食事が終わり本格的に休憩に入ったところで『検索依頼』で拾った鞘付きの剣を確認した。鞘の有無以外、第一階層で拾ったショートソードと品質含め寸分変わらぬ性能だったので、正直出番はない。

 そもそもカゲが強くて、初頭の石以外の出番がないもんな。

 鞘付きは腰に下げ、鞘無しは、再び水を求めて戻ることを考えてここに置いていくことにする。


 数度の[浄化ピュリフィケーション]とカゲの食事で減った精気を補うための[生命回復薬ライフポーション]で【法術】のレベルが上がっていた。

 それにしても[浄化ピュリフィケーション]が大活躍だ。最初に【初心者パック(法術)】を手に入れていなかったらと思うとゾッとする。


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 法術レベルup

 ・BP+1

 ・耐久+1

  ・生命+10

  ・持久+5


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 生命: 40/ 40

 マナ: 8/ 33

 持久: 45/ 45

 重量: 29/ 60


 筋力:■■■□□□□□□□

 魔力:■■■□□□□□□□

 器用:■■□□□□□□□□

 耐久:■■■■□□□□□□

 耐衝:■■□□□□□□□□

 耐術:■■■□□□□□□□


 近接:□□□□□□□□□□

 投射:■■□□□□□□□□

 魔術:■□□□□□□□□□

 法術:■■■□□□□□□□


 BPボーナスポイント:13


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