二話、ソバラ村にて
ソバラ村
ソバラ村。豊かな土地を活かして農業とその土地に住み着いた冒険者達による収入で生計を立てている村だ。
服を買ってもらったエリスはペコリとカタリナに頭を下げる。
「ありがと、替えの服と下着まで買ってもらっちゃって…」
エリスは嬉しそうに服が入った袋を抱きつつカタリナにお礼を言う。
「あはは、冒険者にとって助け合いは当たり前よ、だからお礼なんて良いわ、それで?あなたこれからどうするの?」
「まずは軍と連絡を…」
エリスが連絡をしようとしたところで近くのテレビに映像が映る。
『エリス・ハヴァウト少佐の死亡から六ヶ月、我が帝国は更なる魔症獣災害に見舞われた』
「…」
映像の内容は魔症獣化し死亡したエリスを慎む内容と対策内容そして魔症獣化との戦いを続けるとの内容であった。
「…あなた死んでない?」
カタリナはエリスを幽霊を見るかのように見る。エリスはその顔を見てそう言えば一度死んだことを言ってなかったと思う。
「…ええ、私一回死んだの…、魔症獣になってね、師匠に殺された」
こうなるとカタリナに事情を説明するしかないと思いエリスは本当のことを話す。
「なるほどね、でも生きてる、なんでなの?」
「実は…」
エリスは夢の中で聞いた内容をカタリナに話す。
「トワイライト化かぁ、魔症獣になってもそうなれれば生き返れるのね」
「これまで同じ現象は確認されてないっぽいから、生き返りは期待しない方がいいと思うけどね…」
「そうね…」
カタリナは苦笑いを浮かべながらエリスの周囲を回る。
「でもあなた美人な黄昏人って感じで変わったところは異常な戦闘能力くらいよね?」
「そうだね、さっき鏡で確認してみたけど、私の体と特に違いはなかった」
何か違いがあるかもと服屋で確認していたのだ。結局違いはなかった。
「なら見た目の違いはないってことで良さそうね」
「だね」
「それでどうする?、帝国に連絡するの?」
「いやー…出来ないなぁ…、私が生きてまーすなんて電話したら大混乱だよ…」
今電話したら間違いなく大混乱だ。それを防ぐためにも何か穏便な方法を考えるしかない。
「でしょうね…まぁ、帝国への報告をどうするかは後で考えるとして私の家に行かない?、とりあえず、生き返ったばかりなんだし、体を休めないと」
「うん、お世話になるね」
一文なしの今カタリナの世話になるしかない。そのためエリスは情けないなぁと思いつつもカタリナの提案を受けた。
カタリナの家
エリスはカタリナの家にやって来た。中は普通のアパートと言った感じである。
「片付いてるね?」
「十分実力も付けれたと思うし、そろそろ村を出て旅をしながら仕事をしようと思ってたのよ、だから荷物の整理をほぼ済ませてたの」
「そっか」
「だから提案なんだけど、私とコンビ組まない?、あなたとならすごい稼げそうだし!」
ものすごい実力を持つエリスとならばとんでもなく稼げそうだ。そう思うからこそカタリナはエリスを勧誘する。
「良いよ、あなたには借りがあるから返したいもん」
「オッケー!決まりね!、ならまずは冒険者登録しましょう!」
カタリナはそう言うと情報端末スマホを取り出すと冒険者アプリを起動させてエリスを冒険者登録させる。
「へぇ…これで私の登録が出来ちゃったの?」
「ええ、あなたはこれで冒険者よ、これからよろしくね?相棒」
「うん、よろしく!」
コンビとなった二人は握手を交わした。
「それで?これからどうする?」
「とりあえずは帝国に向けて旅をしなきゃね、帰らないと、あとその間にアンチトワイライトと出くわしたら倒す!」
「それと旅の間に穏便に生きてることを伝える方法を考えるわけね」
「そっ」
エリスの計画は決まった帝国に向けて旅をしながらアンチトワイライトと出会ったら倒す。それがとりあえずの目標だ。
「よし決まりね、なら早速明日から帝国に向けて旅立ちましょう!、善は急げって言うでしょ?」
「うん!」
明日には旅立つ事が決まった二人は早めに夕食を食べると明日のために早めに眠る。
「ここにトワイライトが?」
村に二人の人物が現れた。
「そうだ、殺す、あの家にいる、行け」
「はっ」
二人のうち一人はカタリナの家に向けて飛び出した。
「何か来る!」
強大な魔力が迫るのを感じたエリスが飛び起きた。隣で眠っていたカタリナも慌てて目を覚ました。前に向けて飛んだエリスはすぐに剣を手に取るがそれと同時に壁が吹き飛んだ。
「流石ね?、私の接近に気付くなんて」
「あなたは何?」
「アンチトワイライト、あなたを殺しに来たわ」
そう言いながら女は変異する。その姿は魔症獣化した者と同じ姿だ。少女の場合は狼の特徴を持った人間である。
「グルル…食い殺してあげるわ!」
牙を剥き出してエリスに噛みつこうとする少女。エリスはその牙を避けると彼女の尻尾を掴み外に向けて飛び出した。ここで戦うと間違いなく周囲の者に見て被害が出る。エリスはそれを嫌ったのだ。
「カタリナ!、荷物お願いね!」
エリスは村の外まで跳躍すると森の中に向けて少女を放り投げる。
「くはぁ!?」
エリスの思った以上の身体能力に狼少女はただただ驚く。
「よっと、思った以上に凄いなこれは…」
エリスは他にも力があるのかな?と思いつつも剣を構える。すると爪を伸ばした少女が斬りかかってきた。エリスはその攻撃を軽く避けると少女を蹴り上げ左腕を斬り飛ばす。
「なんなのよ!あんた!、いくらトワイライトだったとしてもアンチトワイライトとこんな差があるわけ!」
「あら?、私は小さい頃から経験を積んだら生粋の剣士だよ、それがトワイライトになったら強いに決まってる!」
「くぅ!?」
エリスの研ぎ澄まされた突きが狼少女の首を貫く。
「まずは一人目だ、何人いるのかは知らないけど、全員絶対に倒す!」
エリスが剣を引き抜くと少女は砂になって消滅した。
「フン、思った以上にやるな、あそこまでの腕を持った剣士をトワイライトにしたのは、世界の防衛機能か」
男はそう言いながら邪悪に笑う。
「しかしそのアンチトワイライトはただの一般人がたまたま復活した者、力のない者がアンチトワイライトになったとしてもその程度というわけさ、だからこそだ、力を持つ者がアンチトワイライトになれば、お前でも…」
男はそこまで言ってから転移してどこかに消えた。
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