瞬く星の記憶

hikari🪶

壁飾り

私は桃色の猫

ワンポイントの

銀色の輝きが自慢なの


私はあなたをずっと見つめていた

あなたが産まれて

この家にやってきたその日から


あなたは私を

お気に召さなかったようだ

あなたは私に全く感心も示さず

すくすく育った


あなたは不器用だから

いっぱい転んで

いっぱい傷つきながら

大きくなった


私は無言であなたを見守っていた


あなたはある日

この家から逃げるように

すっと出て行った


それからのあなたは

たまにはこの家に帰ってきたけれど

相変わらず私には目もくれず

ただ時は過ぎていった


そんな流れの中であなたに家族が出来たと

この家の住人は話していた


更に時は流れこの家に残された

年老いたただ一人の住人も

この家を去った


そして家は処分されることになった


家の中にあった

数々の物や住人の思い出は

どんどん捨てられ

記憶と共に消えていった


私も捨てられる順番が来るのを

ただ静かに待っていた


怖くなどない


私は燃やされ煙となり

記憶と共に空へ昇っていく

ただそれだけのこと



ある日あなたはやってきた


あなたは私を見つけた

古ぼけたこの私を

ただじっと見つめていた


あなたは何故だか私を捨てずに

今暮らす家に連れてきた

あなたは新しい額縁に私を入れ

あなたの寝室の壁に掛けた


そう言えば思い出した事がある

私は所謂既製品ではなく

手作りで生まれたもの

私を生み出したのは確か


あなたのお母さん


ああそうか

あなたは私を見つめながら

過去の面影を

探していたのかもしれないね


これからも私は

あなたの人生を見守れる


一緒に時を刻めることが

只々幸せだ



2021/3月

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