真昼の六等星

Nasuka

Number_1

―side和―

こんなはずじゃなかったって、じゃあどんなはずだったんだろう。

きっと想像するのは夢でしかない夢物語で、ありもしないおとぎ話だ。だけど、ほんの少しでもそれにかすってたら、かすっていると勘違いしてしまったら諦めが悪くなってしまうのはどうしてなんだろう。


夜になっても街は光に包まれて、僕まで輝いていると勘違いしてしまう。本当はこの中でも、キラキラしている所とそれを引き立てるための暗い場所があるのに、どうしても僕らは明るいところしか見ようとしない。それで勝手に自分もそっち側だって勘違いするんだ。


「シャンパン入りましたー!」


遠くで変な名前の人気者が叫んでる。

僕は賑やかしのためにそっちへ行ってわざと下手にコールを歌う。本当はこの中の誰よりも歌がうまいのに、そう思ってるのは自分のためだ。

本当は僕の歌声なんて大したことがなくて、そんなふうに思ってるのは僕だけなんだと思う。それでも、本気で歌わなかったら自分に言い訳ができる。僕が本気を出したらって。

夢ばっかり見て現実を見ずに、逃避するかのように自分に酔おうとする。だけどそのたびに君の顔を思い出すんだ。

眩しい笑顔で周囲を掌握して、そのくせ飾らないかっこよさがある君を。

ただの一瞬でも君の隣にいれたこと、それが僕の一番の自慢なのかな。


―side咲―

これもしたいあれもしたい。

願えばいつだって現実になってきた。だけどそれはいつだって俺が努力して、みんなに協力してもらったからこその必然的なことだったと思う。

それなのにどうしてかな、いつも思うんだ。

こんなはずじゃなかったって。


歌番組の最中、眩しい照明を一身に受けながら決められた音源に口を合わせて君のことを考える。


ダンスだって歌だって、君のほうが絶対に上手い。

じゃあどうして俺がデビューして、君はデビューしなかったんだろう。大人の匙加減なのか彼に問題があったのか。今更気になったところで君に会うことはできるわけがなく、今誰かの期待に応えるために精一杯カッコつけて腕を振るしかない。

でも、ふとした時に思うんだ。君が隣りにいてくれたらどれだけ世界が変わってただろうって。

ただの一瞬でも君が隣りにいた。それが俺をこんなにおかしくしたのかな。



真昼の六等星

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