第5B話 - ハンター特性
マサル ― 科学者
ようこそ最終レベルへ。レベル4――「オール・オア・ナッシング」。
だが、その前に……互いに顔を合わせておくといいだろう。
(正面の壁が下がり、第二の町の四名の狩人が姿を現す)
ジンジョウ・ワン
ひ、一人足りない……?
(驚きと不安を隠せない)
シゲル ― ヴァイキング
残念だが、第二の町のチームは仲間を一人失った。
罠にかかり、身動きが取れなくなったらしい。
彼らは……そのまま先へ進む方を選んだのだ。
さて、最後の試験だが――
ノル・タケダ
(怒りを抑えきれず)
……本気で言ってるのか? 仲間を、置いてきたってのか?
フィョードル・レベデフ(黒鎧の騎士)
連れて行けば足手まといになるだけだ。
それに、無理に助ければ彼の命まで危険に晒す。
自分を守れない者が、他人に守られるなど甘えだ。
ノル・タケダ
守るのが、俺たちの役目だろ……!
力のない者を助けるのが、狩人じゃないのか!
フィョードル・レベデフ
それは“市民”に対しての話だ。
彼は狩人志望者だぞ。
時には切り捨てる判断も必要だ。
――俺は任務を優先しただけだ。
シゲル ― ヴァイキング
いい加減にしろ。
説明の途中で口を挟むなと言ったはずだ。
(苛立ちを見せる)
では、最終試験の内容に入る。
至ってシンプルだ……“一つの決断”をしてもらうだけだ。
(両チームの背後に、黒い箱で覆われた五つの台がせり上がる)
マサル ― 科学者
では、箱を持ち上げてくれ。
(第二の町のチームの並び:
箱1:鋼鉄の剣
箱2:小さなダイヤ袋
箱3:剣
箱4:ダイヤ袋
箱5:剣)
(ノルたちの並びはその逆:
箱1:ダイヤ袋
箱2:剣
箱3:ダイヤ袋
箱4:剣
箱5:ダイヤ袋)
ヒソカ・アハネ
妙だな……まるで謎解きみたいだ。
だが、これで狩人としての力量が計れるとは思えない。
(周囲の壁がゆっくりと下がり始める)
マサル ― 科学者
壁が完全に下がり次第、決断してもらう。
目の前の品はすべて君たちのものだ。
――だが、持ち帰れるのは“片方のチームだけ”だ。
選択肢は三つ。
一つ目。
このまま戦闘エリアに残り、互いの報酬を賭けて戦う。
二つ目。
どちらが報酬を持ち帰るか合意し、戦わずに退出する。
ただし、両チームとも退出すれば……相討ち、全員敗北だ。
三つ目。
完全な“和平”。
報酬は一切持ち帰れないが、戦闘も怪我もない。
ただし、双方の合意が必須。
合意なしで片方が出ようとすれば、そのチームは失格だ。
そして――
敗者には“任務失敗”の記録が残る。
狩人最終試験に不利となり、最悪は追放にもつながる。
以上だ。
壁が完全に下りるまで、三分――話し合うといい。
(両チームが距離を取り、作戦会議を始める)
ノルたちの会議
ノル・タケダ
どうするのが最善だと思う?
ヒソカ・アハネ
不利なのは確かだな。
ツバキ・イカリ
……どういう意味?
ヒソカ・アハネ
奴らは鋼鉄の剣が三本。
こっちは二本だけだ。
その上でダイヤ袋はこっちの方が多い。
つまり――あいつらは、奪いに来る可能性が高い。
テンセイ・ブシダ
「で、リーダー。どうするつもりだ?」
(ノルの肩に手を置き、にやりと笑う)
ノル・タケダ
(数秒考えたあと)
「……戦うしかないと思う。人数でも俺たちのほうが上だしな」
ヒソカ・アハネ
「本当にそれでいいのか、ノル?
退いて向こうに報酬を譲るって手もあるぞ」
ノル・タケダ
「それじゃあ組織入りに響く。
マサルの言ってたこと、聞いただろ?
俺たちなら勝てる。みんなの実力だって把握してる」
ヒソカ・アハネ
(不安げな表情)
「……わかった。お前の判断を支持するよ。
で、作戦は?」
ノル・タケダ
「まず、剣は一本をツバキ、もう一本をヒソカが持つ。
二人が正面の盾になって攻撃を受け止める。
その後方からテンセイと俺が左右に分かれて援護と反撃。
中央にはジンジョウを配置して、
どちらかの側面が崩れた時のフォローに回ってもらう」
(ノルは地面に置いた二つのリンゴをツバキとヒソカ、
左右に置いた石をテンセイと自分、
そして水筒をジンジョウに見立てて並べ、
台形(トラペジウム)の陣形を示す)
椿イカリ
「弱い子を狙ってくる可能性が高いわよ」
(ジンジョウへ視線を向け)
「だから、隊形はできるだけ早くローテーションして、
彼女が狙われないようにすること。
それと、一番大事なのは──誰も一度に複数と戦わないこと」
ノル・タケダ
「もう準備はできてる」
(そう言って笑みを浮かべるが、緊張は隠しきれない)
シゲル=ヴァイキング
「時間切れだ。答えを聞こうか?」
ノル・タケダ
「……戦います」
シゲル=ヴァイキング
「よし。第二の村はどうする?」
ヴァダント・ナイール
「俺たちも戦う」
シゲル=ヴァイキング
「了解──では、戦闘を開始──」
フォーカス=カラス
「待てぇぇいッ!!」
(姿を現すフォーカス。普段の落ち着いた眼差しのままだが、
どこか不機嫌さがにじんでいる)
ジンジュー・ワン
「フォーカスさんだ!」
(嬉しそうに目を輝かせる)
ヒソカ・アハネ
「間に合った……これで止めてくれるはずだ。」
フォーカス=カラス
「……これは何のつもりだ?
今日、俺の訓練生を使うと聞いていない。それに──一人、負傷しているようだな。
納得できる説明があるんだろうな。」
(表情は落ち着いたままだが、わずかに冷たさを帯びる)
マサル=科学者
「長老会が“浄化試験”の実施を承認しただけさ。任務の一環だよ。
何も悪いことはしていない。」
(皮肉混じりに言う)
フォーカス=カラス
「……ライデンがこれを知っているとは思えない。
あいつが来たら、相当怒るぞ。
だが、こいつらを俺に引き渡すなら──今回の件は不問にしてもいい。」
シゲル=ヴァイキング
「どうしたフォーカス? “パパ”ライデンがいないと何もできないのか?」
(挑発的に笑いながらも、どこか苛立ちが滲む)
シゲル=ヴァイキング
「本当にあいつが全部片付けてくれるってんなら──少しくらい時間稼ぎしてやるよ。」
マサル=科学者
「シゲル、やめろ。そこまでやる必要はない。」
(声は真剣だが、焦りが見える)
シゲル=ヴァイキング
(観覧席からゆっくり降り、フォーカスへ歩み寄る)
「もう十分だ……6年だ。6年、この時を待っていた。」
(腰から戦斧を二本抜き放つ)
シゲル=ヴァイキング
「6年間、ライデンの影に隠れてのうのうとしていやがって……
今日こそ、あの時の屈辱を返してやるッ!!」
(シゲルが突進。フォーカスは即座に反応し、腕時計型デバイスを展開。ホログラムが走り、そこから湾曲したマチェーテを二振り取り出す)
マサル=科学者
「ちっ……!」
(志願者たちへ振り向き)
「戦闘開始だ! 相手チームの誰を殺しても構わん! 処罰も一切なしだ!!」
椿イカリ
「ま、待って! ハンター規約では、同士討ちの致死戦は禁止のはずよ!」
(明らかに動揺している)
マサル=科学者
(観覧席からふらつくように降り、顔を覆いながら)
「規約なんて……どうでもいい……」
「さあ──楽しもうじゃないか!」
(顔には狂気が浮かび、目の下のクマが濃くなり、その下に紫の矢じりのような模様が浮かぶ)
(シゲルが戦斧で襲いかかる。フォーカスは湾刀で受け止め、激しい鍔迫り合いになる)
(その背後、高く跳び上がったマサルが巨大なメイスを携え、フォーカスめがけて急降下)
マサル=科学者
「土属性──〈岩華(がんか)〉!!」
(メイスが地面を粉砕し、大地が波打つように盛り上がる。フォーカスは即座に跳び退き、避けた先から巨大な蓮花のように尖った岩柱が無数に突き上がる)
(フォーカスは翼を広げ、後方へ滑空して岩の槍群を紙一重で避ける)
(場面は志願者チームへ戻る)
ノル・タケダ
「フォーカスさん!」
ヒソカ・アハネ
「ノル、前っ!」
(第二チームが一斉に攻撃を開始する。アレックス・ディゾンはノルに狙いを定めるが、椿が割って入り、彼を押し返して距離を取る。
アレックスは鋼の剣を握りしめ、二人は激しい斬り結びを始める)
(ヒソカはヴァダント・ナイルと対峙する。互いに鋼の剣を構え、まるで熟練ハンター同士のような高度な剣技の応酬が続く)
(その隙を突くように、第二チームのアキラが側面から回り込みテンセイを狙う。ヒソカはそれに気づき進路を塞ごうとするが、ヴァダントの圧に押され――)
(脇腹に浅い切り傷を負う。致命傷ではないが、ヒソカは「もはや一瞬の油断も許されない」と悟る)
(アキラはテンセイへ飛びかかり、戦闘が始まる。テンセイは余裕を崩さないが、決して相手を侮っていない。ただ、どこか嬉しそうに微笑んでさえいる)
(第二チームの猛攻で隊列に隙が生まれ、フョードルが自由にジンジョウへと迫ってしまう)
フョードル・レベデフ
「心配するな。苦しませたりはしないさ」(冷徹で計算された動き)
(ジンジョウは震えながらも防御の構えを取る。しかしその刃が振り下ろされる直前――)
ノル・タケダ
「うおおおッ!!」
(ノルが横から体当たりし、二人は転がりながらジンジョウの射程外へ吹き飛ぶ)
フョードル・レベデフ
「今のはなんだ? 剣を使えただろう」
ノル・タケダ
「君を傷つけたくないんだ。良くも悪くも、俺たちは仲間だろ。
それに――フォーカスさんを攻撃した時点で、これはもう“試験の域”を超えている」
(フョードルが横薙ぎや振り下ろしの斬撃を連続で繰り出す。ノルはそれを受け流し、身をひねって回避する)
フョードル・レベデフ
「あいつらの問題が俺たちに関係あるか? 最後の試験は完遂するべきだ」
ノル・タケダ
「まだ分からないのか? これはもう俺たちの手に負えない!」
フョードル・レベデフ
「分かってないのはお前だ。任務は任務。
何が起ころうと、何を犠牲にしようと遂行する。それが“正しい”判断だ。
降参という道もあった――選ばなかった以上、最適解は俺たちが決める」
(場面転換──フォーカス、マサル、シゲルの戦闘へ)
(シゲルが戦斧を振り回し猛攻を仕掛ける。フォーカスは軽やかな足運びで後退しながら回避し、ときおり鉈で軌道を叩き落とす)
シゲル〈ヴァイキング〉
「逃げ回るな、臆病者!」
フォーカス〈カラス〉
「まだ……話し合いで済ませられるはずだ」(相変わらず無表情)
(フォーカスが斧をかわした瞬間、マサルが巨大な岩塊をハンマーで投げつける。直撃したフォーカスは木へ吹き飛ばされ、衝撃で岩が砕ける)
マサル〈科学者〉
「さあ、フォーカス。そろそろ茶番はやめろ。
このままだと……“事故”で死んじまうぞ?」(狂気じみた笑み)
(フォーカスがゆっくり顔を上げる。片目が露わになり、その眼光は鋭く、凍りつくような威圧が走る。ついに本気の表情。マサルは青ざめ、わずかに震える)
フォーカス〈カラス〉
(立ち上がり砂埃を払う)「……本気で来いってわけか。
雷電上官には後で叱られるだろうが……仕方ない」
(歩を進めるフォーカスの身体を、赤いオーラが包み込む)
シゲル〈ヴァイキング〉
(真顔)「ガキの遊びは終わりだ……決着をつけるぞ」
(青いオーラが噴き上がり、さらに強度を増していく)
マサル〈科学者〉
(引きつった声)「こ、ここまで追い詰めるつもりは……
フォーカスが本気になるなんて、今まで一度も……!」
(フォーカスの頭頂から背にかけて、真紅の羽根が逆立つように伸びていく。巨大な一本の冠羽のように)
(同時に、シゲルの身体は隆起し、血管が浮かび、筋肉がさらに膨張する。アップになった顔では、かつての傷痕が青く発光し、瞳孔のなかった右目に青い瞳が現れる)
(二人は歩み寄り、真正面から対峙し、無言で構える。空気が張り詰める)
マサル〈科学者〉
「こ、これは……!
今回は本気で使うつもりだ。“狩人の資質(ハンター・トレイト)”を……!」(震え声)
――終わり――
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