Humeur;Code ー沈みゆく都市、原初のコードー
天羽融
【ヒュメール都市国家年代記録】
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CLASSIFIED DATA / FOR PUBLIC RELEASE
AUTHORIZED BY: INANKI SYS-17
DOCUMENT ID: HCA-017-A
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ヒュメール統制歴史年表
――出典:星教院公認教育データ(改訂第17版)
以下の記録は、市民教育プログラムに基づき、 星教院生徒の学習・啓蒙を目的として公開されている。
記載内容はすべて《イナンキ》による最終承認を受けたものとする。
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『ヒュメール統制歴史年表』
【旧暦2300年】
第五次大陸戦争――。
2100年から続いた資源衝突・情報戦争・軍事衝突はついに臨界点に達し、
旧文明の世界は完全に崩壊した。
戦争末期、生体兵器として投下された高濃度電磁波が、人類の長い歴史に終止符を打つ。
大陸中を飲み込んだ
“電磁の海(ブルーシー)”は、
人類が踏み入ってはならない絶対禁域と化し、
かつての都市・国家・地形はすべて青の幕(ヴェール)の下に消滅した。
生き残った人類は、わずかに安全と判定された区域へ集結し、
“次の文明の基礎”となる生存圏の構築を開始する。
【星歴300年】
階層都市ヒュメール、着工開始。
同時に、人類が再び過ちを繰り返さぬよう、
旧文明の設計思想をもとにした知性演算機械生命体"イナンキ"が誕生する。
彼女は「人類管理の中心核」として都市の根幹に組み込まれた。
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【星歴400年】
の建造が本格化。
世界のほぼすべてが電磁海に沈んだ後、
ヒュメールは大陸中の流民を受け入れる
"最後のエデン”となった。
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【星歴466年】
農耕プラントベースの建造開始。
イナンキの管理下で農産技術は飛躍的に向上し、
人類は飢餓の時代をようやく脱した。
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【星歴631年】
疫病管理・治癒・公衆衛生すべてを統合した
“治癒と祈りの宮殿”。
ヒュメールからパンデミックは消え、
人類は「病に敗れない世界」を初めて手に入れる。
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【星歴697年】
研究機関・都市大学・教育制度の総本山。
イナンキは
「人を正すのは環境ではなく、教育である」
と声明し、ここに都市知性の中心域を築いた。
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【星歴754年 】
都市運営の中枢となる行政省庁、天秤の神殿(救済処)、光工学研究所がここに置かれた。
イナンキは、人類が二度と過ちを繰り返さぬよう、
“光を観測し、導き、制御する層” をヒュメールの心臓部として据えた。
この年、人類は正式に 都市国家ヒュメールの建国を宣言する。
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【星歴800年】
都市ヒュメールの頂点に位置する神域であり、
ヒュメールの"永久の春(ハル)"を守護する観測層であり、
都市の季節制御・光学制御の中心でもある。
【星歴810年】
イナンキは、人類の安全と精神的統整のため、
七層に区分された完全都市ヒュメールを、死の海から完全封鎖した。
七つの層に区分されたこの都市こそ、人類最後の安住地であり、
以後、外界への移住は禁じられた。
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【星歴1300年(現代)】
ヒュメールは千年にわたり秩序を維持している。
居住層・職能・出生はすべて星祀議会と階層守護者によって最適化され、 社会的混乱は記録上、存在しない。
市民は「心の静穏」をもって幸福と定義され、
外界および旧文明以前の記録は、
《イナンキ》の認証なしには閲覧を許可されていない。
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【備考】
・本史料の閲覧および引用には、層別アクセス権Lv.3以上の認証が必要です。
・外部記録との照合および修正は許可されていません。
歴史監修
星教院大学 知論学派教授
R・メギトス
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