2025年12月3日

今日の札幌は、雪が降った。ああ、もうそんな季節なのかと実感してしまう。この時がとうとう来てしまったのかと。


北海道の冬は、戦いだ。通勤時、ツルツルの路面、そして凍てつく空気と闘わなければならない。それと、風と共に吹き荒れる雪。


この3つが、道行く人のフラストレーションを高めていく。


ツルツルの路面は転ばないように慎重に歩くことを要求されるため、思うように歩くことが出来ない。下手に歩幅を大きくして歩き、すっ転んだりしたときはもう、一瞬起き上がることが出来なくなる。


その瞬間を誰かに見られた時とか、最悪だ。都会の人間は冷たいが優しいので、誰も助けたり、話しかけたりはしない。その光景がさも当たり前のように振舞い、転んだ人間の事を気にしないようにする。その優しさが、逆に辛い。


転倒というのは危険だ。所詮転んだだけなんていうかもしれないが、氷で滑って転んだら、大ケガに繋がることがある。私の母は、何年か前にそれで腕の骨が折れた。


とにかく足元が平らになっているところを、慎重に歩く。スニーカーなんて以ての外。スパイクや、滑り止めの付いた冬靴がなければ、真面に外など歩けない。


そして凍てつく空気と、吹き荒れる雪。これも通勤している人間のメンタルを、大きく削ぐ原因の一つだ。


寒いというのは勿論だが、特に雪がひどい。風任せに吹きすさぶ雪は、どんなに防御をしても、顔面を的確に狙って来る。


人間、歩いて移動する以上、顔を完全にふさぐことはまずない。防寒対策でフードを被ったり、ネックウォーマーやマフラーで首元を覆ったりすることはあるだろうが、顔は隠さない。


そのむき出しの顔に、狙いすましたかのように雪は突き刺さって来るのだ。そのたびに冷たい痛みが顔に走り、もう泣きそうになる。


特に最悪なのが眼鏡をかけているときで、眼鏡をかけているのに目に雪が入ったりする。おまけに眼鏡が曇ったり濡れたりで前が見えなくなり、視界がぼやける。


先ほどのツルツルの路面で足元がおぼつかない、視界もおぼつかない。その内自分の平衡感覚までおかしくなっていく。


私は一回これのせいで、帰宅中に遭難しかけた。しかも、街中で。


職場から家まで歩いて40分程度、地下鉄を使わずともまあ帰れるだろうと思い、夜の街を歩いていた。


そしたらあれよあれよという間に吹雪になり、20分くらい歩いたところで、動けなくなってしまったのだ。


これはマズいと思い、ぼやける視界の中で、車のランプを探した。歩くこともままならず、タクシーを使って帰る羽目になったのだ。


今日、今年初めての北海道の冬で楽しみだという人が職場にやってきた。


1回くらい帰宅途中で遭難したら、考えも変わるだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る