トレーラーでの脅し
エンソは、大石の言葉を理解できずにいた。
「ここは、間上がりなりにも空港の事務所だろ。俺の船に聞いてみろよ」
エンソは、机の右横にある制御卓経由で、大石の宇宙船オーガを呼び出した。
「オーガ、空港に戻れ」
すぐに、オーガから返事が返ってきた。
「あなたがどう言う立場の方かわかりませんが、私は大石キャプテンの指示にのみ従います」
エンソは、大石を見た。
「クリオス、大石だ。状況説明してくれ」
「音声だけでは、あなたが大石であるか、判断できません。合言葉をお願いします」
大石は、嫌な顔をした。
「ここで言うのか?」
「合言葉がなければ、本人と確認できません」
「わかったよ、『クリオス。お前は、単純なAIじゃなく、高度な人工知性の
「はい、大石キャプテンであると確認できました」
大石はエンソに向き直った。
「エンソさん、ドタバタして申し訳ない。クリオスは頭が固いので」
エンソは驚いていた。
「AIに、宇宙船を任せているのか」
このエンソの声に、宇宙船のクリオスが割り込んで来た。
「エンソさん。聞こえていますよ。
先ほど紹介の合言葉にある様に、私は、AIではなくAitです。
そして、人間よりうまく操縦できます。
ついでに言えば、わたしの頭脳は、光量子コンピューターですので、固体です」
大石が、苦笑いしながら、話した。
「クリオス、状況はどうだ」
「遷移軌道で上昇中です」
「了解。これから、俺からの連絡が無くなったらどうするか、エンソさんに、説明してくれ」
「エンソさんは、どの程度の知識レベルですか? それが判らないと、相手が理解できる説明が出来ません」
大石は、目の前に座っているエンソを見ながら、答えた。
「知識レベル? 下とすると失礼だから、中程度としておこうか」
「了解です。では説明します」
クリオスは、ちょっと間を開けて説明しだした。
「基本的には、周回軌道で待機ですが、キャプテンからの連絡が無くなった段階で、キャプテンは殺された判断します。
その場合、キャプテンの身体がある場所に向かって、トレーラーを荷物ごと、自由落下させます。
そして、私は帰路につきます。
以上です」
大石がその後を続けた。
「クリオス、有難う」
大石は、エンソに向き直った。
「ま、地球に持って帰るのは面倒だからさ。ここに置いていく形だよ。
ちゃんと、コース取りはするけど、トレーラーに入ったままなので、マッハ30位でここに到着すると思うよ」
横にいた若者が口を出した。
「ここに来るなら、後で、金を拾えば終わりだ」
エンソが彼を叱った。
「バカ。口を挟むな」
そして、大石に向かって話した。
「マッハ30で100トン、衝突はTNT爆薬3000トンの衝撃だ。お前も死ぬぞ」
「一瞬で計算できるとは、優秀ですね。
そして、心配してくれてありがとうございます。
しかし、最初 殺すとか言ってなかったですか?
ブラスターで打たれるより、落下の衝撃の方が、一瞬だから痛くないと思いますが―」
「やめろ……」
エンソは大石の説明を遮った。
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