取り残された異星人の高性能AIと地球防衛軍の元軍人が、人類を発展させるか?
Akimon
ゼオ星系
交渉
「支払いしてくれないと、困るんですが……」
大石 明人は、その話している内容に対して似つかわしくない緊張感のない声で話していた。
「あんな〜、何度いったら判る? 払わないといったら払わない。分かった?」
合成樹脂製と思われる安物の応接テーブルをはさんで、大石と向い合せに座るゴンザレスと名乗る若い男が、相手をバカにした顔で応じていた。
部屋の奥では、エンソと名乗る強面の中年男性が、薄笑いしていた。
大石は地球から、金銀銅のオーソドックスな貴金属100トンを、この惑星ゼオに運んで来ていた。
貴金属といっても、装飾用ではなく、電子回路用である。
装飾用でも回路用であっても、大石にとって関係なく、問題は輸送費の支払い拒否である。
この場所は、今回の取引先である惑星ゼオの政府から指定された宇宙港の事務所一室。
宇宙港と言えば、名前だけはそれなりだが、簡単に言えば、舗装もされていないただの空き地。
草が生えていないだけまし、と言った程度の空き地でしかなかった。
そして、事務所は、平屋のプレハブ小屋。
今回の為に、ゼオ政府は、空き地を宇宙港と、無理やり名付けたことが想像できる。
大石が乗る小型宇宙船オーガは、主に星系間移動用ではあるが、惑星内航行も惑星への垂直離着陸も可能な為、こんな場所でも問題はなかったが、相手が金を支払わないのは大きな問題だった。
惑星ゼオは、政府も民間も、契約にマトモに対応してくれない『伏魔殿』として有名であった。
その為、大石は、今回の仕事を依頼してきた星間輸送会社スタートランス社との間で、何かあった時の為に保険契約をしていた。
相手が契約を執行しない時、運用会社が代わりに大石に違約金を払ってもらう保険である。
この保険がある為、大石にとって金銭的な問題はなかったが、気分に関して大きな問題であり、他にも色々理由があり、大石は粘っていた。
大石はゴンサレスと、粘り強く交渉を続けていた。
「契約通り、金銀銅合わせて100トンを運んできたんですから、契約通りに払って下さいよ」
「何度言わせるんだ。そんな契約、地球が勝手に結んだんだろ。ブツを置いて、さっさと消えろ」
「金をもらえれば、直ぐにでも消えますが、このままでは消える事はできません」
「自分で消えないなら、消してやろうか?」
ゴンサレスは、懐から大きな銃を取り出した。
「これが判るか?」
ゴンザレスは自慢げに見せた。
「ちょっと拝見」
大石は、一瞬でその銃を奪った。
ゴンザレスは、まさか銃を奪われるとは思っておらず、焦った。
大石は、その銃をじっくり眺め、説明し出した。
「初めて見る銃ですね。銃口の大きさから見ると、面制圧用でしょうか?」
ゴンザレスはそのまま固まっていた。
「銃身の短さから見て軍事用ではないですね。
警官の暴徒制圧用でしょうか? しかしグリップが大きいですから、衝撃が大きそうですね。
そうか、ドアや壁を破壊するブラスターですね。
初めて見る形ですから、この惑星で作られたものでしょうかね。
いや~、珍しいもの有難うございます」
そう言って、大石は銃をゴンザレスに返した。
ゴンザレスは、脅かそうとして取り出した銃を簡単に奪われ、逆に脅されるかと思いきや簡単に銃を返されて、大石が何をしたか、自分が何をされたか、理解できていなかった。
しばらくその銃と大石を交互に見比べていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます