天才×天才の方程式
彩音
Prologue
「おはよう」
そう親友に声をかける。
「わぁ!?」
親友は、ひどく大きな声を出す。
意図せず、驚かせてしまったようだ。
親友は、私の方に向き直り、
「彩音、入学式楽しみだね!」
なんて、呑気なことを言っている。
それに応ずる私も、
「そうだね、楽しみ」
なんて、浮かれたことを口走る。
今日から約2年間を過ごす学校の門の目の前で、少し立ち止まる。
古い割に、立派で、綺麗な門の横には
「能力上昇学校」と書かれている。
「早くいこーよ!」
親友に急かされ、門をくぐる。
緊張した顔の入学生、子の入学を喜ぶ親、
今年の入学生は、と観察をする最上学年、
初めての後輩が気になり覗きに来たひとつ上の先輩、
入学生を迎え、在校生を教室に帰す、先生達。
多くの人で賑わう玄関のドアには
「祝入学」
と書かれた看板が立てかけられている。
「入学式は体育館だよ」
そんな親友の声を聞きながら、体育館に向かう。
いつの間にか、入学式が始まっていて、
しばらく過ぎた所で私1人だけ立ち上がり、ステージに登壇する。
前学校の校長に子供らしくないと叱られ、
今学校の校長によく褒められた
答辞を読み始める。
読み終わると、一礼をして、階段を下る。
そしてまたしばらく過ぎると、入学式が終わっていた。
「疲れたぁ..足が棒になっちまう」
親友の大袈裟な表現に
「そう?そんなことないよ」
と、バカ真面目に返答する。
「体に悪いよっ」
と、親友。
「はいはい、わかったわかった。」
と、今度は適当に返す。
構ってもらえなかった親友は予想以上に拗ね、
「酷いっ」
と、リスのように頬を膨らませている。
「ごめんごめん、」
流れ作業のように謝り、
「クラス見に行こう、掲示板に貼ってあるだろうし。」
と、親友の機嫌を戻してあげる。
「わかった」
素直になる親友を愛でながら掲示板へと向かう。
私より背の低い親友はぴょんぴょんと飛びながら、
人の山をかき分け、掲示板に貼ってあるクラス分けを見に行く。
親友が人にかき消され、見えなくなって30秒ほど経つと、
掲示板を見終わった親友が私の方に向かってくる。
「同じクラスだよ!こりゃ、今夜は宴だな!」
ふざける親友をこづきながら、
「その宴、私パスで」
いつものようにツッコミを入れる。
「ノってくれ」
再び拗ねる親友に、
「明音に毎回乗ってると疲れる」
と、ど正論を振り翳し、
「なんだと!?」
今度は怒る親友を交わしつつ、
「教室行くよ。」
と、声をかける。
「やだぁー構ってくれるまで動かないっ!」
まるで幼児のようだ。
親友、改めBabyに、
「じゃあ先行くから。友達でも作っておくよ。君はずっとそうしてたら?」
と、煽り気味で声をかける。
「人見知りのくせに..」
痛いところを突いてくる。
「うるさい」
反論しつつ、まだBaby化している親友を引きずって教室に入る。
親友は立ち上がり喋り出す。
「おっはようみんなーーー!」
うるさい。
「?元気がないね!おはよーーー!」
ああ、何処まで阿呆なんだ、この人間は。
「気づいてくれ。君、引かれてるよ。」
「そんなわけないよね!?」
圧をかける親友。ああ、本当にこの人間は..
「圧かけない。」
「んん。」
ひとつ咳払いをし、普段よりワントーン高くした懐っこい声で
「みんなごめんね!この子ちょっとマイペースで。仲良くしてくれると嬉しいな!」
と、親友の尻拭いをする。
「なんで私が悪いことになってんの?」
悪いことに..じゃない、君が悪いんだ。
「あとその貼り付けた笑顔とどっから出してるかわからん可愛い声はなに!?」
何処かと言われれば喉からなんだが。
席に座り、一息つき、本を読み始めると、親友の声がした。
「自己紹介は体育館でやるらしい」
なんだその画期的と言えなくもない自己紹介方法は。
「なんだそれ、変わってんな。」
率直な感想を述べると
「そうか?」
と、返答が返ってくる。
「え、保育園から一緒だよな..?価値観の違いか。」
親友との価値観の違いに改めて気づく。
「ああ、そう言えば」
体育館に向かう廊下で、思い出したことを親友に話す。
「私たちって上位1%に入る人間らしいよ。」
「はっ!?え、なにそれ、!?」
そりゃ驚く。
「いや、私も最近知ったんだけど」
なんて前置きをして話し始める。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます