2-3
午後、十八時五十五分。
れえなと鈴理は、
空はすっかり暗くなり、風は冷たくなっている。もう九月も
鈴理はボスと通話している。通話ごしに、ボスが説明をはじめた。
『最近、
「トクゲタ? って、なんですか?」
鈴理が聞いた。
『さあな。うわさによれば、
「
ボスの説明に、れえなが聞き返した。
『まだわからん。
ボスが説明を続ける。
『だが、ついさっき、その“トクゲタ”の
なるほど。その『トクゲタ』とかいうよくわからない兵器の
それなら、鈴理ではなくれえなの
「わかりました! じゃあ、エトワールを――」
言いかけたれえなを
『いや、突入するのはスズリのほうだ。レーナは
「えっ? なんで?」
れえなが聞き返した。
『大ボスの
ボスの説明に、鈴理が口をはさむ。
「つまり、私は
『そういうことだ』
つまり、使い捨て
基本的に、掃除屋の
これはある意味、しょうがないことだった。
テロリズムはいまやビジネスだ。テロ攻撃が起これば、必ず誰かが得をするようになっている。ある国が
横浜では、特にその『ビジネス』が
――だったら、警察官以外の命を使えばいい。それこそ、身寄りのない孤児の命を。
それが、れえなたち『掃除屋』が運用されている理由なのだった。だからこそ、鈴理を
「ずいぶん
当の鈴理は、
『それだけ大ボスはレーナとエトワールに
ボスが言った。しかし、れえなは
「ボスぅ~。れえなも鈴理と一緒に戦いたいですぅ……」
『ダメだ、
にべもなく
「……だってさ」
そう言って、鈴理が肩をすくめた。
「別にいいって。こういう危険なミッションこそ、掃除屋の
「でもぉ~」
ぐずるれえなに、鈴理がへらりと笑ってこう言った。
「ぐちぐち言ってもしょうがないじゃん。“あの時”のこと、まだ気にしてるわけ?」
鈴理に言われて、れえなはどきりとした。
彼女が言っているのは二年前、中三のときのことだ。れえなと鈴理は同じ
「もう何度も言ってるけどさ」
鈴理が言った。
「あのケガは、れえなのせいじゃないんだから。もちろん私のせいでもない。たまたま
そうじゃない、とれえなは思う。
あのとき、れえなは
れえなは口をとがらせ、鈴理に
「でもさあ――ひぁ!?」
しかし、
「ちょっと、おしり
怒ったれえなを見て、鈴理がけらけらと笑う。そんなやりとりをしているうちに、ふたりに「おーい」と声がかけられた。
「君たちが掃除屋かい?」
「
おそらく彼が、ボスの言っていた『協力者』なのだろう。しかし、
「おっと、
沢渡が言った。
「
彼の言うCIA・MI6・DGSEとは、アメリカ・イギリス・フランスの
「つまり、沢渡さんは日本
鈴理が聞くと、沢渡は
「そう聞くと悪者みたいだな。まあ、“トクゲタ”を
聞けば、沢渡はボスの
「さて、作戦を始めようか」
沢渡が言った。
「港川さん。きみのために、
気付けば、れえなたちの近くに警察のトレーラーが
〈
それは、
その機体をひとことで言い表すなら、『テレビのお化け』である。それは、巨大なテレビから手足が生えたかのような、どこか
ダンボールを
機体カラーはダークブルー。右手に
鈴理が〈3型〉の背中をよじのぼり、ドアを開けて中に入っていく。もう一機には、沢渡が乗り込んだ。
『沢渡さんも戦うんですか?
インカムごしに、鈴理が聞いた。
彼女の言うことはもっともだ。警部とは
『俺はあくまでバックアップをするだけだ。
沢渡が説明した。
『ボスがそう言ってたんですか?』
『そうだよ』
鈴理の質問に、沢渡が答える。
『じゃあ、よろしく』
沢渡が言った。
『
鈴理の声とともに〈3型〉が静かに動き出し、コンテナから道路に
そこに『トクゲタ』と呼ばれる『すごい兵器』がある――かもしれないし、ないかもしれない。それを、鈴理が
鈴理の〈3型〉が、シールドと
『――では、突入します』
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