ロリーナ・ボーンアゲイン!〜異世界に転生したら褐色ロリエルフになりましたぁ!〜
柚亜紫翼
1章 めるとていこく
001 - りーな -
001 - りーな -
ざわざわ・・・
わいわい・・・
街がクリスマスに浮かれて賑わう12月の夕方・・・僕は学校が終わり家に帰る途中だった。
どんっ!
「ぐはっ!」
ごろごろっ!
「おい!、人が轢かれたぞ!」
痛みは無い、でも腕は血まみれだし目も霞んできた。
「わぁぁぁぁ!、間違えましたぁ!」
誰かが耳元で叫んでるよ・・・うるさいなぁ。
・・・
ここはどこだろう・・・真っ白い部屋、知らない天井、床に寝かされているようだ。
しかも僕は何故か全裸だ!、慌てて起き上がり自分の居る場所を見渡す。
「え・・・」
僕の隣には艶やかな黒髪の女性が綺麗に土下座していた!。
「あの・・・」
「もっ・・・もももも・・・」
「桃?」
「申し訳ありませんでしたぁ!」
「とりあえず顔を上げてください」
「えっぐ・・・うっく・・・ぐすっ」
とても綺麗な人だ、でもそれを台無しにする垂れて糸を引いてる鼻水はどうにかした方がいいと思う。
「ここはどこ?、あなたは誰?」
今のはちょっと記憶喪失っぽかったか・・・。
「しっ・・・失礼しましたぁ・・・わた・・・私はオシーリアと申しますっ!」
痔のお薬かな?、そういえば父さんが使ってたなぁ・・・。
「痔のお薬じゃありませんっ!」
「何で僕の考えてる事が分かるんだよ!」
「えと・・・落ち着いて聞いてください、あなたは死にました」
「は?」
死んでるなら何で僕は目の前で泣きながら土下座してるおもしれー女と会話出来てるの?。
「私は神様です、ある世界の管理を任されたばかりの新米ですけど・・・」
おもしれー女がおかしな事を言い出した。
「あの、大丈夫ですか?、特に頭の方・・・」
「・・・今から詳しくご説明致しますからそんな目で見ないでくださいっ!」
・・・
・・・
「・・・という訳で、本来死んで貰う筈だったのは貴方の前を歩いていた男性なのです!」
おかしな女が言うにはここは僕が生きていた世界と死後の世界のちょうど狭間・・・神?の力で魂だけをこの場所に連れて来たのだとか?。
「それなら早く僕を生き返らせてよ」
「・・・」
「いや、黙ってないで何か言えよ!」
ぱあっ!
おもしれー女が空間に手を翳すと大きなモニターのような板が現れた、そこに映る映像を見ると・・・。
「これもしかして僕?」
「・・・はい」
夜の街に赤く光る回転灯、周りには救急隊員かな・・・それっぽい人が取り囲んで血溜まりを覗き込んでいる。
すぐ側には時代錯誤なトラックが停まっていた、派手な電飾に彩られた「天下無双」「漢一匹爆走街道」などの文字が眩しく光っている。
トラックの下から引き摺り出されたと思われる人の顔を見ると・・・僕だった。
「内臓が出てるね」
「はい、跳ね飛ばされた後に5tトラックが乗り上げましたので」
「首も折れてるみたいだ」
「いえす」
「死んでるじゃん!」
「だから死にましたって言ってるじゃないですかぁ!」
・・・
・・・
「・・・話をまとめると、僕は手違いで前を歩いていた男の代わりに轢き殺された、身体はぐちゃぐちゃだから生き返らせることは出来ない?」
「はいっ!」
おもしれー女・・・いやオシーリアが僕の言葉に対して元気に返事をした、もしかしてあれは嘘泣きだったのか?。
「死ぬ筈だった男はどうなったの?」
「トラックが壁に激突して動かなくなりましたのであの後すぐに工事をしていたビルの屋上から鉄パイプを落として串刺し・・・」
「わぁぁ!、それ以上聞きたくない!」
オシーリアが恐ろしい事を言い出したから慌てて止めた!。
「ご安心ください、縦に落としましたので他の通行人への被害はありません、それにトラックの衝撃で落ちた事にするので工事関係者への管理責任は・・・」
「いやそうじゃなくて!」
「トラックの運転手も私が作り上げた架空の人物ですのでっ!」
安心できる要素が一つも無い、僕にはこいつが悪魔に見えてきたぞ!。
「失礼ですね、私は悪魔じゃありません!」
「だから人の心を勝手に読むなよ!」
「死んだという事は納得して貰えたようですので貴方のお名前を教えていただけますか?」
オシーリアがとてもいい笑顔で僕に質問する。
「あ?、神なのに分からないの?」
「いえす」
この駄女神・・・なんか腹立つなぁ・・・。
「僕の名前は柚乃須理依奈(ゆのすりいな)、17歳」
「ほうほう、柚乃須・・・理依奈さん・・・」
しゃかしゃか
駄女神が先程のモニター的なやつをタップしたりスワイプしたり、何か文字を打ち込んでいる・・・。
「あ、出て来ましたぁ!、魂の波形が一致、登録No.395833690023988530284、ゆのすりいな様、性別は女性、国籍は日本、香川県で生まれ育ち現在もそこに居住・・・わぁ!、両親は既に死亡!」
僕の両親が死んでいるのが余程嬉しいのか輝くような笑顔でモニター?の情報を読み上げている。
「親戚も居ない天涯孤独、親の遺した遺産で高校に・・・後見人は父親の会社を共同経営している人物で事務的な付き合いっ!」
「確かにそうだけど何でそんなに嬉しそうなの!」
「・・・お付き合いしてる恋人さんが居ますよね」
「居ちゃ悪いのかよ!」
「少し調べてみたのですが・・・恋人さんは貴方の財産狙いで本当にお付き合いしている人は別に居ますよ」
「はぁ?」
「ほらこれを見てください」
駄女神が僕に映像を切り替えたモニターを見せる。
がしゃーん!
「くそっ!、理依奈のやつ勝手に死にやがって!、あの家や遺産は俺が貰う筈だったのによ!」
「隆史、落ち着いて・・・」
そこには僕の彼氏が映っていた、どうやら警察経由で後見人のおじさんから僕が死んだと聞かされたようだ。
「一緒にいる女は誰だよ!」
「あ、その人が本命の恋人さんのようですね」
「そんなの聞いてないよ!」
「財産狙いなのに言う訳ないじゃないですかぁ」
僕はどうやらあの男に騙されていたようだ。
・・・
「酷いよ隆史・・・好きだって言ってくれたし僕の初めてだってあげたのに」
酷い裏切りを見せられて僕は涙が止まらなくなった・・・魂だけでも涙って出るんだ・・・。
「でっ・・・でもこれで心置きなく私の管理する世界に行けますよぉ」
泣いている僕に追い打ちをかけるようにオシーリアが話しかけてくる、本当に殴ってやろうか!。
「え・・・今なんて?」
今とんでもない言葉が聞こえたような気がするんだけど!。
「だ・か・ら、お詫びに私の管理してる世界に招待しますので今回の件はどうか許して欲しいのです・・・」
「許すって・・・」
「まず、貴方が生前に持っていた資産・・・2億円くらいありますねー、これと同等かそれ以上のお金を金貨に換算して差し上げます、それから転生先の世界に住む人間は一人一つスキルというものを持っていまして・・・特別にご希望のスキルを一つだけお付けしましょう!」
「いやちょっと待って・・・」
「ちょうど今死にかけてる身体は・・・もちろん男より可愛い女の子がいいですよね、その中で家族や知り合いも少ない方が好ましい・・・この条件で検索っと」
僕は不穏な言葉を呟きながら楽しそうに作業するオシーリアの頭を殴り倒した。
ぽかっ!
「痛ったーい、何するんですかぁ!」
「勝手に話を進めないで分かるように説明してよ!」
「今の貴方は魂だけですので入れ物になる身体を探してるんですぅ!」
「あ?」
「私の世界で生きていくなら赤ちゃんから始めるか他人の身体に魂を入れるしかないじゃないですかぁ、その年齢で赤ちゃんプレイはかわいそうなので歳の近い女の子の身体を探してるんですっ!」
「ないじゃないですかぁって・・・」
ピッ・・・
「検索終わりましたぁ!、候補は3、奴隷の少女、小国の貴族令嬢、ダークエルフ・・・この中だと貴族令嬢かなぁ・・・」
「だからちょっと待てと言っている!」
だめだこいつ、人の話を聞かないタイプだ。
「とりあえず離脱しかけた魂をここに召喚っ!、オラこっち来いやぁ!」
ぱあっ
「うわ眩しっ!」
突然の光に目を細めた僕の前に現れたのは3人の女の子・・・当然のように皆さん全裸だ。
苦しそうに座り込む赤い髪の少女、突然の出来事に呆然としている金髪美少女、それから手足を広げて倒れてる薄い褐色の肌を持つ少女・・・。
「ほらほらいつまで寝ているのです?早く目を覚ましなさい!」
ぱんっ!、ぱんぱんっ!
この駄女神、倒れてる褐色少女の髪を掴んで頬を張り倒してるよ・・・それを目撃した僕を含む3人はドン引きだ。
「あぅ・・・痛い・・・」
褐色少女が目を覚ましたようだ、綺麗な紅の瞳にサラサラの銀髪・・・耳が尖ってるから駄女神の言う通りエルフなのだろう。
「ここはどこ?、私・・・毒竜のブレスを・・・」
「さて皆揃ったようなので説明してあげるわ!、貴方達は死んだのですっ!」
駄女神が腰に手を当てて偉そうに言った、褐色エルフさんの質問は完全無視だ・・・こいつもう一回殴っていいか?。
「・・・」
「え・・・嘘」
「・・・死んだ?」
3人がそれぞれ反応する、赤髪の少女だけは穏やかに微笑んでいてどこか嬉しそうだ。
・・・
・・・
「・・・というわけで貴方達はそれぞれの理由で死にました、この人はリーナさんと言って不幸な事故で死ぬべきではない時に命を落としてしまったの、誰かリーナさんに身体をあげてもいいなって人いるかな?」
「待てよ!、不幸な事故って言ってるけどお前が・・・」
「どうかしら誰か居ない?、ダメっていう人はこのまま死んで別の命に生まれ変わるわ、時間が惜しいから私が3つ数える間に手を挙げてね」
この駄女神・・・僕のツッコミも無視しやがったぞ!。
「わっ・・・私はもうこれ以上他人に身体を弄ばれるのは嫌、だからこのまま死なせて欲しい・・・です、それに・・・」
赤髪の少女が懇願するように言った。
「そう・・・なら仕方ないわね、貴方の次の人生が幸多い事を祈っているわ」
ぱあっ!
駄女神がまだ全部発言し終わっていない少女に手を翳すと光の粒になって消えた!、他の2人を見ると恐怖で震え上がっている。
「・・・私はエルフだから死ぬと精霊になるって聞いている」
褐色エルフさんが発言した。
「確かにそうね、身体が滅びても魂は上位精霊として元の世界で永遠に生きられるわ」
「それなら・・・私の身体をあげてもいい・・・かも・・・ただ・・・」
「そう!、ありがとう感謝するわ!、さぁリーナさんこの人の身体に・・・ぐはっ!」
僕は駄女神に近付き脇腹に抉るような拳をお見舞いした。
「・・・げほっ、えふっ・・・今のは効いたわリーナさん」
「エルフさんの話が途中なのに何勝手に進めてるんだよ、ちゃんと最後まで聞けよ!」
そう、エルフさんの「ただ・・・」に続く言葉が気になるのだ。
「ごほっ・・・けほっ・・・仕方ありませんね、早く話しなさいっ!」
涙目になりながら駄女神がエルフさんに続きを促す。
「・・・私は5年前、人間に騙されて多額の借金を背負わされたの、稼いだお金は全部利息で毟り取られ身体に契約印を刻まれて酷い扱いを受けていたわ、それでも良ければ・・・」
「やだよ!」
なんだよ契約紋って!、向こうはそんな恐ろしい世界なの?。
「じゃぁそっちで泣いてる金髪の人っ!、貴方は身体を提供してくれるわよね」
駄女神が話を金髪美少女に振ったけれど彼女は今それどころじゃなさそうだ。
「ぐすっ・・・えっぐ・・・死ぬのは嫌ぁ・・・苦労してようやくダニエル様と婚約出来たのに・・・これから幸せになれるって思ったのに・・・」
「そう、なら仕方ないわね」
ぱぁ・・・
ごんっ!
「痛ったぁい!、もうリーナさん何なのよぅ!、私頑張って貴方の身体を用意してあげようと・・・」
僕は金髪美少女を光の粒にしようとしている駄女神の後頭部を殴り倒した。
「この人、死ぬのは嫌だって言ってるけど」
「誰だって死ぬのは嫌でしょうね、でも生き物はみんな死ぬわ」
「それはそうだけど話くらいは聞いてあげようよ」
何でそんなに嫌そうな顔するんだよ!。
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