第34話 正義・愚者「一歩先」




刑事の男が運転するワゴン。

助手席には水際。

後部座席に、スミとミドリ、そしてナオ。


ミドリ「白川ナオ、私服かよ」


ナオ「私服じゃなきゃ協力しないって言ったの。前の学校の制服だと、迷惑がかかるでしょ」


ミドリ「アタシも着替えたかったな」


ナオ「言えばよかったのよ。まあ、家までこの人が迎えに来ることになったけどね」


ミドリ「それは嫌だな。お母さんたちが心配しちまう」


水際「心配しなくても大丈夫ー」


水際が後部座席に振り返る。


水際「黒瀬さんも、西野さんも、待たせてごめんねー」


スミ「いえ……」


ミドリ「あのさ、アタシらだけなの?」


水際「そうだけどー? なにか問題あった?」


スミ「……」


ミドリ「新藤の奴がいねぇけど。秋穂先生も」


水際「二人とも今日は忙しいってー。断られちゃったー」


スミ「……。そうなんですか」


ミドリ「そんなん、ありなのかよ」


水際「無理に連れてくるってのもー、むずかしくてー。あくまでも協力してもらってるだけだしー」


ナオ「なら、次からは私達も断っていいのかしら?」


ミドリ「……そうだよな。アタシらだけ協力って、不公平じゃね?」


水際「そうねー。考えとくー。でも、全員に断られちゃったら、水際先生、泣いちゃうかもー」


ナオ「冗談はやめて」


水際「はーい。ごめんなさーい。でもね協力してくれないのなら、あなた達に利用価値は無いの。利用価値のない容疑者がどうなるか。そのことは、よく覚えていてね」


スミ「……容疑者。私達のことですよね」


ミドリ「……心配すんな。殺人犯探しには協力はするよ」


ナオ「……ええ」


水際「わーい。助かるー。ありがとねー」


スミ「……」






街中を通り過ぎ、しばらく経つ。

山道をワゴン車が進む。


ミドリ「なあ、この山を越えたら隣の県だぜ? カードは高牧市内にしか存在出来ないんじゃなかったっけ?」


ナオ「え、なにその話」


水際「あら、良く知ってるわねー」


ナオ「どういうことよ?」


ミドリ「さっき、カード犯罪対策室だっけ、そこの市之瀬ってオッサンが言ってたんだよ。カードは市内から離れると、前の持ち主に戻るって」


スミ「正確には、カードを持ったまま数週間、だよね」


ナオ「そんなことが?」


水際「その情報はまだ未確定な情報よー。そういう出来事があったようだっただけー」


ミドリ「もしかして……、今日の目的って、アタシらを市外に連れ出そうってことじゃないよな?」


水際「違うわ、純粋にカード探しよー」


ミドリ「ホントかよ」


ナオ「……」






山の中の小さい集落が見える。


スミ「あ……」


ミドリ「まじか……」


水際「どうしたの?」


ナオ「……いるわ、このあたりに」


刑事の男「こんな所にか」


水際「ビンゴ」


ミドリ「気をつけろよ。この車の中には何枚もカードがあるんだ。向こうはとっくに気づいてる」


水際「近づいてくるカードの枚数が多いほど、相手は違和感を持ちやすい。わかってるわー」


刑事の男「速度を落とします」


水際「ええ、あなた達ー、どこの家か特定お願いー」


窓から周囲を眺める。


ナオ「あのあたり」


ナオが少し先を指差す。

開けた広場。


水際「止めて」


ワゴンが道路の端で、ゆっくりと停車する。


水際「相手に動きは?」


ミドリ「ねえな。その広場にいる」


ナオ「ええ」


水際「いいわ。あなた達は後ろからついて来て。臨戦態勢でね」


ミドリ「ああ」


車を降りる。

刑事の男を先頭にして、ゆっくりと広場に歩いて行く。

ジャケットの内側の銃を握る水際。


ミドリ「なあ、ここにアタシらを連れて来たの、偶然じゃないよな?」


水際「あらー。どうしてそう思ったのー?」


ミドリ「こんな山奥の集落にピンポイントで来て、カードがあるなんておかしいだろ」


水際「ふふー。これまでも目撃情報などからの憶測ー。でも本当にあるとは知らなかったかなー」


ミドリ「なら、最初から教えてくれよ」


水際「次からは注意するねー」


スミ「近い。相手は動いていません。待ち伏せしているかも」


ナオ「わかってる。さっさと装備しなさい」


ナオがカードを変化させ、金色のローブをまとう。

ミドリもカードを包丁に変化。


スミ「オープン」


スミはハサミのカードを変化させる。




広場まで50メートルほど。

刑事の男が手を広げて合図。

全員立ち止まる。


刑事の男「3カウントで俺が走る。全員後ろからバックアップしてくれ」


ミドリ「お、おう……」


スミ「わかりました」


刑事の男が銃を構える。


刑事の男「3,2,1、突入!」


駆け出す刑事。

続く水際。

スミたちも続いて走る。


スミ「はっ、はっ、はっ、」


刑事の男「動くな!」


広場の真ん中に銃を向ける。

スミたちも刑事に追いつき武器を構える。


広場のはしで携帯ゲームを持つ男の子が見える。

小学生ぐらい。

他に誰もいない。


スミ「しょ、小学生!?」


ミドリ「こいつがカードを!?」


男の子がきょとんとスミたちを見ている。

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