第32話 グラウンディング

 




警察署。

カード犯罪特別対策室。

座るスミたちと、向かい合う刑事たち。


水際「私達はカードを犯罪に使う奴らを、見つけ出し、捕まえることを目的にしてるのねー」


ミドリ「カードを使った犯罪って? どんな?」


水際「そうねー、私たちが追ってた容疑者を共有しよっか」


水際が同僚刑事にアイコンタクト。

同僚刑事がホワイトボードに何枚かの顔写真を貼る。

以前公園でスミたちを襲ってきた、ヤンキー。

そして、アサコとスミが出会った金髪。

長髪の男と、入れ墨の男。


スミ「あ……」


水際「あらー? この人達をご存じ?」


スミ「え、えっと……、その、金髪の男の人に、私と、友人が襲われました……」


水際「知ってるよー。調書を見たからねー。以前この金髪男に、黒瀬さんは襲われた。そう、丸太のカードでね」


ビクッとするスミ。


水際「そして、丸太のカードは、今は黒瀬さんが持ってる。どうしてでしょうー?」


スミ「そ、それは……」


ヒロト「黒瀬先輩を、その金髪が襲ってきたところに、俺が出くわした。そこで奪った」


水際「ほほー」


市之瀬「なるほど。概ね、こちらの予想と近かったようだ」


ヒロト「予想って?」


市之瀬「この四人はね、カードを私的に使用し、強盗行為を行っていたと考えられている。しかし、使われているカードにも違いがあってね。丸太のカードによる、恐喝行為が頻繁に行われていたが、目撃情報はピタリとなくなった。君がカードを奪ったから」


ヒロト「……そういうこと」


スミ「……」


市之瀬「その後、この金髪も含めた男たちは、複数で行動する場面が多くなったようでね、頻発する強盗、放火、事件に加わっていると考えられる。炎のトーチ型カードを使ってね」


ミドリ「アタシの家を放火したのも、そいつらだろ。……たぶん」


水際「私達もそう考えているのよ。そして、その炎のトーチだけど……、これを使って白川さんの家の前の、小さな林に火をつけた。どうー、この推理?」


スミ「……」


ヒロト「……」


ミドリ「……」


ナオ「……」


水際「あなた達の内、誰かが、そのカードを持っている。そうでしょう?」


スミ「あ、あの……」


ヒロト「俺が持ってる」


水際「あららー。そのカードはどうしたの? なんで持ってるのか、教えてほしいなー」


ミドリ「あ、あのよ……」


秋穂「新藤君たちを、その男たちが襲ってきたのよ」


スミ「せ、せんせい……」


秋穂「その時に私達で、彼らのカードを全て奪い去ったわ」


ミドリ「……」


水際「なるほどー。頻発した強盗、放火事件も、ある時を境に、突然なくなったんだよねー。今の話で辻褄が合うか」


スミ「……」


ヒロト「……」


水際「ねえ、もう一つ教えてくれない? 放火事件がなくなってから、彼らの消息もわからなくなったのよねー。あなた達、何か知らないかなー?」


ミドリ「……」


スミ「……、そ、それは」


秋穂「知る訳ないじゃない」


スミ「え……」


秋穂「襲ってきたソイツらを返り討ちにして、カードを奪ってやったの。カードも無くなって、しっぽを撒いて逃げたんじゃない? 今頃どこかに隠れ潜んで、私達や、警察を恐れて、震えて泣いているんじゃないかしら。いい気味ね」


スミ「……」


ミドリ「……いい気味、……だよな。……」


水際「なるほどねー。まあ、そういうことにしとくかー」


ヒロト「……」


市之瀬「さて、話を戻そう。我々は、彼らを追ううちに、カードという不可解な凶器を追うことになった。カードとは何か、他にもカードを悪用している者がいるのではないかとね。そうしているうちに、何人かのカード所持者と接触してきた。白川ナオさんのようにね」


ナオ「……。利用するためでしょ……」


市之瀬「そうだとも。これ以上、カード犯罪を広げないためにね」


ナオ「……それが警察のやり方ってわけ」


水際「気持ちはわかるけどねー。治安を守るために、こっちだって必死なんだからー」


ヒロト「昨日襲ってきたオッサン、あいつは?」


市之瀬「ああ、彼も紹介したかったのだけどね、遅れていて……」


コートの男「お呼びですか?」


スミとミドリ、ナオもビクっとして立ち上がる。


水際「おちついてー。彼は協力者よ」


コートの男「先日は失礼をしましたね、お嬢さんがた。私は幸土こうどと申します。これでも、大学の教授をしていましてね。どうぞ、お手柔らかに」


市之瀬「幸土教授とは、カード所持者の捜査を進めるうちに出会ってね。積極的にカード集め、研究をされている方だよ。今は我々の捜査にも協力してくださっている」


幸土「皆さま、以後、お見知りおきを」


ミドリ「お、おう……」


スミ「……よろしくお願いします」


ナオ「……」


幸土「よろしくお願いしますね。ぜひ私のいる大学にも顔を出してください。カード談議に華を咲かせましょう」


スミ「は、はあ……」


ヒロト「……あんた、何人も殺してるだろ」


幸土「おや、そのように見えますかな? そういう君も、よからぬ雰囲気を感じますね」


ヒロト「……」


水際「はい、挨拶はそこまでー。私達の話しは終わってないよー」


ミドリ「……話って、なんだよ?」


市之瀬「ああ、ここからがやっと本題だ。私達が追っている事件はいくつかあるのだけどね、それらの中には非常に狡猾で、残忍ともいえる事件がある」


スミ「残忍……?」


市之瀬「どうやら一人の人間がカードを使い、数々の殺人を犯したと思われていてね。我々はその人物を通称、切り裂きジャックと呼んでいる」


ナオ「……切り裂きジャック?」


市之瀬「ああ。既に10件以上の殺人に、この切り裂きジャックが関わったとみていてね。我々は、この犯人を追っているんだ。そこでだ、君たちにお願いがあってね」


スミ「お願い、ですか?」


市之瀬「カードを持つ者どうしは、互いを感知し合えるのだろう? 犯人探しに協力してもらえないかな」


ミドリ「アタシらに、そいつを見つけろって?」


市之瀬「そうだ。どうだろう?」


ヒロト「そんな危険人物を探せだなんて、自殺行為だろ」


水際「安心して、あなた達は既に私たちの監視下よ。危ないと思えば引き留めるしー、いつだって見守っているのー。もちろん、あなた達の家族のこともね」


白川「……よく言う」


水際「あなたたち、新藤君の家に寝泊まりしてるのよねー? カード犯罪に家族を巻き込まないためでしょ? 不便じゃないかしら? ご家族になんて説明をしてるの?」


スミ「え、えっと……」


水際「帰っても大丈夫よ。なにかあれば私達があなた達を守るから」


ヒロト「……」


秋穂「それも……、悪くない提案かな。家に帰って、お母さんの様子も見たいものね、西野さん」


ミドリ「ま、まあな……」


水際「ね。安心していいわよー。私たちって、24時間監視してるしー」


ヒロト「最悪」


市之瀬「まあ、切り裂きジャック探しの件は、心に留めておいてくれるだけでいい。何かあれば、私たちに報告するように。それだけさ」


スミ「……はい」






スミの家。


スミ「ただいまー」


マユミ「ああ、スミ、帰ったのね! 心配してたわよ。試験勉強は終わったの?」


スミ「うん。今日からは家でやる」


マユミ「そ、よかったわ」


スミ「お母さん」


マユミ「何?」


スミ「迷惑かけてごめんなさい」


マユミ「何言ってるのよ。さ、御飯にしましょう」


スミ「うん」


食卓につく。

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