第20話 ソードの2「迷い」





夜。

食器を洗うスミ。


スミ「あの、お母さん……」


マユミ「なに?」


スミ「実はね、ちょっとの間、友達の家に泊まろうと思うんだけど」


マユミ「え? いつ?」


スミ「明日から……」


マユミ「いいけど。あんた、アサコちゃん以外にも仲のいい子いたのね」


スミ「ま、まあね……」


マユミ「ちょっとの間って、何日か泊まるの?」


スミ「あの……、一ヵ月ぐらい……、かな?」


マユミ「え……。長すぎでしょ」


スミ「受験……、そう、受験勉強! みんなで受験に向けて勉強合宿なんだよ!」


マユミ「その子の家族も、そんな長い間いたら困るでしょ」


スミ「その子、親もいなくって、一人暮らしだし、私が泊まってもいいって言ってくれてる」


マユミ「……ふーん」


スミ「い、いいよね?」


マユミ「あんた……。男でもできた?」


スミ「え、え!? ちがうよ!?」


マユミ「ま、いいけど……。一か月まるまるじゃなくて、数日ごとに帰って来なさい。怪我も完治してないんだから」


スミ「う、うん! ありがと、お母さん」


マユミ「変なこと、すんじゃないわよ」


スミ「し、しないよ!!」


赤面して後ろを向く。






朝。

ボストンバッグを肩に担いで登校。


スミ「おはよう」


女子生徒「おはよー」


ボストンバッグをロッカーに押し込む。


水際「あのー、黒瀬さーん。いますかー?」


水際が教室を覗く。


スミ「あ、はい。私です」


水際「あ、いたいた。黒瀬さーん。ちょーっといい?」


廊下に出る。


スミ「なんでしょうか?」


水際「黒瀬さん、以前、不審者に襲われたって聞いたんだけど、その後は大丈夫ー?」


スミ「あ……、はい。大丈夫です」


水際「最近、変な事件とか多いらしいしさー。気をつけなきゃだよねー」


スミ「そう、ですね」


水際「ねー。強盗、放火に、失踪事件も多いみたいでー。色々市内では変な事件が起きてるらしいしー」


スミ「は、はあ……」


水際「黒瀬さん、この前、大きな怪我してたよね? 実はまた不審者に出会っちゃってたり、してないー?」


スミ「して……、ません」


水際「そっかー。ねえ、その怪我、どうして出来たんだっけ?」


スミ「崩壊してたところの……、針金に……、刺さって……」


水際「へえ……。他にも同じ日に、同じ所で怪我した子もいたよね」


スミ「はい……」


水際「みんなで一斉に針金に突き刺さるなんて……、珍しいね」


スミ「そうですね……。あ、あの……、そろそろいいでしょうか……? 授業の準備をしないと……」


水際「あー、ごめんごめん。話、長くなっちゃったー。悪い癖なんだよー。ごめんねー」


スミ「い、いえ……。失礼します……」


教室に戻るスミ。

笑顔で手を振って、水際が立ち去る。


水際「……。黒瀬スミ……。黒に……、限りなく近い、グレーってとこかな」






放課後。

保健室。


ミドリ「先生ー、今日はどうする? アタシら荷物あるから、早く行きたいんだけどー」


秋穂「まだ仕事が残ってるのよ。先に帰ってなさい」


ミドリ「ういー」


秋穂「あ、それと、新藤君、帰りに合鍵を3つ作っておきなさい」


ヒロト「……」


秋穂「西野さん、黒瀬さん、彼に合鍵、ちゃんと作らせてね」


ミドリ「うっす」


スミ「わかりました」


ヒロト「はあ……」






徒歩で並んで帰る。


スミ「西野さん、足、大丈夫?」


ミドリ「ああ。おまえらこそ、大丈夫なんかよ?」


スミ「うん。痛みも引いてきてるみたい」


ミドリ「アタシはもうちょいかな。新藤は?」


ヒロト「へーきだよ」


ミドリ「まったく。強がっちまって、青少年は」


ヒロト「うるせーな」






鍵屋さんの前。

アイスを食べながら待つ。


スミ「冬にアイスって、ちょっと冷えるね」


ミドリ「これが美味いんじゃん。冬限定の濃い味のを食べるのがさ」


ヒロト「こんなん、腹壊すっての」


ミドリ「うるせーな、じゃあ、お前のも食ってやるよ!」


ミドリがヒロトのアイスにかぶりつく。


ヒロト「お、おい!」


ミドリ「うめーじゃん、栗のアイス。アタシもそっちにしたら良かったな~」


ヒロト「自分の食ってろよ」


ミドリ「ちょっとぐらい良いだろ」


ヒロト「よくねーの」


ミドリ「なんでだよー、寒いって言ってたじゃん」


ヒロト「いや、そこじゃなくて……」


スミ「……」


ミドリ「ま、いいや。あ、うめっ。やっぱチョコも美味いわ」


ヒロト「はあ、たくよ……」


スミ「ヒロト君、私のアイス、一口食べる?」


ヒロト「え、なんで?」


スミ「あ~、いえ……、別に……」


バニラアイスの先端を咥える。






ヒロトの屋敷。


秋穂「た~だ~い~ま~」


スミ「秋穂先生、お帰りなさい」


スミがミトンでお鍋を持っている。


秋穂「お、早速、新妻やってるのね。関心ね~」


スミ「お、お座敷にみんな揃ってますから、先生も一緒に……」


秋穂「もちろ~ん。ごはん、ごはん」


スミ「あはは……」


秋穂「エプロン姿、似合ってるわよ~。フリルまでついて、可愛い~」


スミ「やめてくださいよ、からかうの」


秋穂「そのエプロン、どうしたの?」


スミ「ヒロト君が貸してくれました。あるか聞いたら、倉庫から出して来てくれて」


秋穂「……ふーん」






広い座敷。

こたつを囲む。


秋穂「はぁ~、おなかいっぱい。家庭料理っていいわね」


スミ「先生は、自炊はされないんですか?」


秋穂「面倒だも~ん。部屋も汚れるし~」


ミドリ「普段、飯はどうしてんの?」


秋穂「食べて帰るに決まってるじゃな~い」


ヒロト「いい生活してそうじゃん」


秋穂「まあね~。さて、そんなことよりも、これからの話しをしましょうか」


ミドリ「……ああ。カードを持つ奴の探索、再開か?」


スミ「……」


秋穂「ええ。みんなの怪我も回復しつつある。ここを拠点とし、明日から再開しましょう」


ヒロト「俺んちなんだけどね……」


スミ「あ、あの、まだ、みんな怪我が治りきってません。焦ることは無いんじゃないですか?」


秋穂「だめよ。その間にも他のカード所持者は、カードを奪い合っている。枚数が多い者どうしが奪い合えば、かなりの枚数が動いていることになるわ」


ヒロト「すでに誰かが、願いを叶えられるだけの枚数を、集めてるかもってこと?」


ミドリ「まじかよ、まあ、全部で52枚って言ってたもんな。ところでさ、アタシらって何枚集まったんだ?」


秋穂「そうね。確認も兼ねて報告会をしましょうか。まずは私からね。私は10枚」


スミ「じゅ……」


秋穂「それとは別に、黒瀬さんたちと3人で集めた4枚を持ってる。全部で14枚よ」


ミドリ「すげ……」


ヒロト「……」


秋穂「じゃあ、次は黒瀬さん」


スミ「はい。私は4枚です。そのうち一枚はヒロト君のカードで、預かってて……。一枚は商店街で紛失してしまって……、4枚」


秋穂「うんうん。西野さんは?」


ミドリ「変わってねーよ。アタシは3枚。先生に預けてたので全部だ」


秋穂「新藤くんは?」


ヒロト「秘密」


秋穂「だめよ~。内緒にしてちゃ。もう私たちは命を預けっているのだから」


ヒロト「……4枚、以上とだけ」


秋穂「うんうん。よろしい」


ミドリ「てことは……、14たす、4たす、3たす、4以上で……、いくらだ?」


スミ「25、枚……、以上……」


ミドリ「す、すっげー! もうすぐ半分超えるじゃん!」


スミ「……」


ヒロト「……」


秋穂「残念だけど、52枚は私の考えた仮説よ。本当の総枚数はまだ未知。カードが集まり出せば、おのずと見えてくるはず」


ミドリ「で、でもさ、願い事に近づいたのは間違いないだろ? すげーよ!」


スミ「先生」


秋穂「なに?」


スミ「先生は今、14枚のカードを持ってて……、まだ、願い事は叶っていませんか?」


ミドリ「そ、そうだよ、14枚も持ってたんだろ? どうなんだ?」


秋穂「ま~ったく。叶う気配もないな~」


ミドリ「そ、そっか……。まだ、だよな……」


スミ「……」


秋穂「でもね。私は14枚だったけど、ここには24枚のカードがある。それを全て誰か一人の手に集めれば、もしかしたら、この枚数でも、願いは叶うかもしれないわね……」


スミ「え……」


ミドリ「そ、それってよ……」


ヒロト「……」


秋穂「試してみる? 今、ここで」


スミ「……」


冷や汗が流れる。

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