第光環「新天地」

 段々とサイズ感を増して行く粒に恐怖を覚えながらも、確実に近くなっている光の球を目指し進んで行く。50cm幅ずつ位の距離で通路の拡張がなされているので、残り9m位とするなら最高であと摂取も15回前後だろうか。ただ、この考えが甘い事に私は気付く事になる。あと1mも拡張すればなんとか手が触れるだけなら可能、と言う距離になって今までと比較すれば極大と言っていい酒の水球が私の眼前に姿を現した。つまり、ズルは許されず私は通路の拡張を全て成し遂げなければ光の球に接触する事が出来ないと言う話なのだろう。私は溜息を付きながらもその水球の最後と思われる処理に取り掛かった。曰く有りげにそれは赤だったがそんな事に気を取られても居られない。私は次がある、との事で言うなら早めの死に水と言う嫌な言葉を頭によぎらせつつもそれを完飲した。さあ光の球だ、と思いスゥに呼び掛けようとした所で視界の端にバットが映ったのが分かった。当然もう既にスゥにチェックして貰って居た箇所だ、ここで転んでは元も子も無いと私はジャンプを一時いっときしようとしたが、この道幅では着地が心許ない。であれば、と私は間に合うか間に合わないかはともかくしゃがんで受け身を取る事でこれを凌ごうとした。バットの殴打による激痛。悶絶しつつもスゥを見やると安堵とも悲しみとも言えない複雑な表情をこちらに向けていた。もしジャンプし転倒して通路の下の底知れぬ虚空へ落下していたらその表情を見る事すら叶わない訳だから或る意味それでいい、成功だ。

「スゥ、覚悟はいいか。行こう、月の光の向こうに在る世界へ」

 バットの受け身体勢から立ち上がり、先に光の球に触る。

「もうグデングデンだね。こっちもなんだかほろ酔い気分だよ…行きますか、光の導きのままに」

 スゥもそれに触る。光に包まれ、私達は次なる世界へと転移を開始した。


 次の世界は予測していたが腐乱臭世界だった。アメリョッカでも腕硬化のアームRock化、通路がべたつく飴廊下、など色々考えていたがそれらが発現する事は無かった。だが今回は違う、ありとあらゆる可能性を考え策を講じておかなければ身に危険が迫った時の対処が覚束おぼつかない。それでも思い付かなかったのは、

「あこれヤバイ、私封じだ」

 と苦笑いしながら私のそばにやって来るスゥの事。そう、彼女が不利になる可能性についてだった。

「なんかニノ平気そうだなと思ったらそう言う事か。キィミの周りだけ匂いが軽減…ゴホゴホ、されているね」

「そんなにキツいのか。大丈夫か?」

「大丈V、とは言い難い苦しさはあるね。でもニノの周りと言う聖域頼みでやってるとこれ相手の思うつぼなんだろうね。ウッ、ちょっと先に出てみる」

 そう言って鼻を押さえながら前に進んでくれたスゥの脳天を槍が突き刺した。それは私の鼻先で止まる。思わず固唾を飲んでしまう恐怖体験だった。

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