第28話 私の幼い頃に似ている

☆河本関奈サイド☆


伊藤もそうだけど。

コイツの姉、伊藤先生も何を考えているか分からない。

こんな私に...何を望むのだろう。

そして全てが死んだ様な私に何を...。

そう考えていると「河本」と声がした。

顔を上げるとそこに鮫島雪穂が居た。


「何?」

「...春風と何を話していたんだ?」

「仲直りしないかって話だけど」

「!」

「だけど私には...いや。私が...その立場にはなれない」

「...良いんじゃないか」

「は?」

「先生も言っていたろ。...お前は変われるって」

「...私にはそんな資格は無い」


そう言ったけど鮫島は私の横に腰かけた。

それから「色々あったな」と言う。

私は「...色々ありすぎて不気味だけど」と答える。

すると鮫島は「だけどさ。その中でお前よくやったよ」と言う。

私は「?」を浮かべて顔を上げた。


「お前は現実に抗い。そして関係を無理やりだが直した」

「...」

「俺は立派な事をしたとは思う。お前が」

「アンタ。私から何もやるもの無いけど」

「要らねーよ」


そして鮫島は何かを取り出す。

それはお茶だ。

ペットボトルのお茶。

私に手渡してくる。


「やるよそれ」

「は?...お金払うけど」

「俺がやりたいからやったまでだ。...だから要らねーよ」

「...」


私はおずおずと受け取る。

それからお茶を見ながら居ると「体調はどうだ」と鮫島が話した。

私は「頭痛はするけど仕方がない。今は特に問題は無い」と答える。

すると鮫島は「そうか」と返事をした。


「...アンタさ」

「なんだ」

「...いや。何でもない」

「そうか」


それから私はペットボトルの蓋を開ける。

そして私はお茶を飲む。

周りの皆はそれぞれが休んでいる。

私はそれを見ながら「鮫島」と話す。


「ああ。...なんだ」

「アンタはどこを好きになったの。伊藤の」

「そりゃ春風の事か」

「そう」

「...まあ...そうだな。...彼女は心優しい。そこに惚れた」

「そう...」


私は「確かにそうだったね。...アンタは心優しい人が好きって」と言う。

すると鮫島は「ああ」と返事をした。

私はその事に息を吐きながら「アンタなら彼女を幸せに出来そうだね」と言う。

鮫島は「え」となりながら私を見る。


「...私はアンタの心優しい姿に惹かれたのを思い出した。だけどそれを私は全部ぶっ壊した。...だけどそれでもアンタは私を救おうとした。私にはアンタはおせっかいに見える。だけど...違う」

「...河本」

「私にはアンタはヒーローに見える」


そして私は「...おせっかいのおせっかいヒーローにね」と苦笑した。

その言葉に鮫島は「...そうだな」と返事をした。

すると「何してんだ?」と坂本が声をかけてきた。


「ああ。いや。...河本と話していた」

「そうなんだな。オイ河本」

「何」

「...春風と分かち合ったらしいな」

「...まあそう見えるんならそうかもね」

「アタシもアンタとはそれなりの関係にはなりたい」

「...」


私は苦笑する。

そして私は「伊藤はどうしたの」と聞く。

すると「ああ。春風ならアイツのねーちゃんと話しているぞ」と言う坂本。

私はその方向を見る。


「...坂本」

「なんだよ」

「アンタの妹さんはなんの障がいがあったんだっけ」

「場面緘黙。そして...発達障害だ」

「そう」


そして私は「...大変だね」と言う。

そんな姿を見ていた坂本が「河本。家に来るか?」と話した。

俺達は驚く。

それから河本が「待って。私は行く必要は無いから」と言う。

すると坂本がスマホで写真を見せてきた。


「...これがアタシの妹だ」

「...可愛い」

「だろ?自慢の妹だからな。会ってくれよ」


坂本がそんな事を言うとは思わなかった。

私は少し考えてから「私なんかが会っても良いの?」と聞く。

すると坂本は「ああ。多分喜ぶぜ」と笑みを浮かべた。

その言葉に私は「...あっそ」と返事をした。



坂本の自宅に私と鮫島と伊藤と向かう。

それから階段を上って行く。

そして坂本が「ちょっと待ってろ」と言いながら軋むドアを開ける。

するとそこから女の子が出て来た。


「...」


私達を見るなり黙る少女。

そんな少女を見ながら「...この子の名前は」と坂本に聞く。

すると「杏奈だな」と答えた。

私は「そう」とだけ答えてから杏奈を見る。

杏奈は私に向き「...」と無言で見つめている。


「...アンタはなんだか不思議な感じだね」

「?」

「...私の幼い頃を見ているみたいなんだけど...」


そんな言葉にハッとしていると「河本...」と鮫島が呟いた。

私は唇を噛んで抗がん剤とか薬の副作用で痛む膝を曲げながら杏奈を見る。

杏奈は「...」となってから私を見る。

ジッと見据える。

私に何か親近感が湧いている様だ。


「私は河本。...河本関奈。まあ宜しく」

「...」


私はそんな杏奈を見てから立ち上がる。

そして「彼女は...これからも喋らない可能性が?」と坂本に聞く。

すると坂本は「そうだな。...残念ながらその可能性もある」と答えた。

私は「...あっそ」と返事をした。

それから坂本を見ていると私の手が引っ張られた。


「?!」


坂本が、伊藤が。

鮫島までビックリしている。

これまでに見られなかった反応らしい。

私は「何」と杏奈を見る。

すると杏奈は「...」と奥の方を見る。


「...入れって言ってんぞ」

「これはそういう合図?」

「そうだな。杏奈がそんな感じを見せるのが珍しいが」

「...」


私は杏奈を見る。

困った。

玄関先で帰るつもりだったのに。

そう思いながら杏奈を見る。

杏奈は私の目を見つめている。

子犬が期待する眼差しに似ていた。


「...はぁ...」


私は諦めた様に溜息を吐き。

それから坂本に許可を取って室内に入る。

そして坂本がお茶を入れに行く中。

私達と杏奈は畳の部屋に入る。

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