「ゴメン。やっぱアニメオタクはマジに無理かも」と言われて浮気?された挙句に幼馴染に棄てられた俺だったのだが?

楽(がく)

第一章 あなた

振り出しから...。

第1話 それは春風の出逢い(超改稿)

「ゴメン。アニメオタクってやっぱ無理かもしれないから」


俺、鮫島雪穂(さめじまゆきほ)は県立長峰高校の屋上で幼馴染の彼女にはっきりそう言われた。

3月の肌寒い空の下。

もう直ぐ暖かくなるという中で俺は目の前に居る俺の彼女...だった女子、河本関奈(こうもとせきな)をジッと見つめる。

風に髪の毛を靡かせて俺を見ていた。

俺は盛大に溜息を吐く。


黒髪の短髪で顔立ちは並メン。

言っちゃ悪いが太っても痩せてもない感じの帰宅部の俺。

確かに典型的なつまらないオタク。

まあでもショックは感じない。

俺も別れてやるつもりだったからな。


俺から別れようと思ったのには理由がある。

コイツ。

つまり河本関奈は他の男子と楽しそうに浮気していた。

デートもしていた。

挙句の果てにはラブホに行っていた。

確かこのクソ女の浮気相手の名前は佐伯小太郎(さえきこたろう)である。

野球部副主将...のイケメン。

俺は眉を顰めながら河本関奈を睨む。


そんな河本の案を「分かった」と俺は受け入れた。

それから俺は「お前とはもう関係を切ったし一切この先、喋らない」とも言う。

ギャルに染まっている様な茶色の髪を右手で翻したその関奈は「良いよ別に」と話した。

薄笑いを浮かべている。

この野郎...今直ぐに薄っぺらいその佐伯との浮気関係をネットに暴露したろか。

だけどそんな根性は無い。

それに俺はリア充からの妨害とか攻撃とかイジメとか。

迷惑を被るのもゴメンだしな。


「...河本。お前の事は本当に...」

「私はオタクはキモいって思った。それもかなりね」

「...分かった。まあもうお前という奴とは関係ないしな」

「だね」


俺は軽い返事に頭に血を上らせながら「じゃ」とヒラヒラと手を振りながら出口に去って行く河本を見た。

何だってこんな事になるのか。

そう思いながら俺は空をゆっくりと見上げる。

3月の空は少し肌寒かった。

が。

頭の血液でボルテージがお陰でMAXだ。

溶岩の様に煮え滾る。

クソ野郎が。



俺は河本とは同じクラスメイトである。

なので河本と一緒に教室に戻る事になる。

だが俺は河本ともう関係性は一切無い。

距離を取って河本と歩いて帰る。

そして教室に戻って来てから椅子に腰かけた。

まさか野球部副主将に河本を盗られるっていうか。

寝取られるとは誰が予測したもんか。

はっきり言ってクソの極みだわ。

怒りが収まらない。


「あのクソめ」


そんな感じで悪態を吐きながら俺は女子達と話している河本を見てからスマホを弄る。

しかしまあ河本の計画性が最低だわ。

これ...敢えて俺が言い出せない様にしたな?

そしてクラスも容認かよ。

クソ馬鹿...めが!


「まあでも」


なんというか。

今となってはどうでも良い感じがする。

怪我したとかそういうんじゃないし。

そう思って俺はスマホを取り出してアニメキャラのリズムゲームをする。


「...クソ」


そう呟きながら俺は複雑な心境でイヤホンを付けて静かにスマホゲームのリズムといいうリズム音楽にひたすら集中する。

それから5分後に授業が始まった。

そして本当に儚く時間は過ぎあっという間に放課後になった。

クソみたいだ。



関奈とはもう赤の他人なので当然だが一緒に帰る事はない。

俺は今までの事を思い出してイライラと頭に血を逆流させつつ近所のアニメショップにグッズを買いに行くつもりでオタクの聖地に向かった。

青い看板のショップの自動ドアをくぐってから2階に上がり俺は心の安らぎといえる好きなアニメのグッズが売られているグッズコーナーに向かう。

それから片っ端から見ていると「あ」と声がした。

顔を上げると...そこに何か。

クラスで見た事のある同じクラスメイトが居た。

確かこの子は。


「...え?君...確か...伊藤春風さん?」

「ん。伊藤春風(いとうはるかぜ)。...鮫島くん」

「あ、ああ。よく覚えているな。目立たない存在なんだが...」

「ん。記憶しやすい名前」


伊藤春風というこの目の前の黒の長髪の少女。

いつも勉強熱心でクールな感じで。

関奈と正反対でその表情をあまり変えない美少女。


なんかその凛とした感じの美少女なのだ。

性格が分からない、読み取れない感じの子。

カチューシャを身に着けているが...というか真面目系の女子がなんでこの場所に。

それこそ正反対じゃ?

どうしてなのか。


「えっと。その。伊藤さんが何故この場所に?」

「私はアニメ文化。アニメが大好き」

「ああ。それで...というかどんなアニメが好きなんだ?」

「ん。二等分の花嫁」

「お。マジか。俺も好きなんだよなそのラブコメ」

「あ...やっぱり?」


...やっぱりって?

意味が分からないまま俺は「?」となりながら見ていると伊藤さんは赤面でぼーっとしていたその感じからハッとした感じで慌てて咳払いをした。

それから「これは大切なアニメ」と誇らしく言う伊藤さん。

俺は「ん?大切なアニメ?」と聞き返す。

すると伊藤さんは「ん」と返事をした。

そして胸に手を添える。


「とある人から教えてもらった大切なアニメ」

「!」


絵になる姿に俺は赤面する。

それから横を向く。

そして頬を掻いてから「ま、まあ偶然だな」と告げる。


「うん」

「好きなアニメが一緒ってのは嬉しいな」

「ん。そ、だね」


伊藤さんは俺から視線を外して目の前のアニメコーナーを見る。

「特に私は三葉、好き」と伊藤さんは柔和になる。

俺は驚きながら「へー」と笑みを浮かべる。

目の前の三葉のグッズを持ってから見せてくる。

しかしまあ不思議な感じだ。

表情は一切変わらないが和やかな感じがするからだ。

それ以外にも。


「伊藤さんはいつも凛としているからそういう系は嫌いかと思っていたんだ」

「ん。それ偏見。それに私は...そうするしかないから」

「そうするしかない?」

「私、3次元の男の子が嫌い」


そう答えながら伊藤さんは俯く。

え?

俺はハッとしてから「...ああ、じゃあ。そうなると俺が話しかけたのはまずったという事か。なんかその。話しかけてすまなかったな」と謝る。

だが伊藤さんは俺の言葉にハッとした様に顔を上げる。

そして強く否定した。


「ち、違う。貴方は違う」と言ってから慌てる。

それから「...あくまで貴方は特別」とボソッと呟いた。

なんて言ったか聞こえないんだが。

思って「?」を浮かべているとかぁっと赤くなって伊藤さんは強制的に俺との話題を切断して変える様に俺を見る。


「でもなんか今日は悲しげな感じ」

「え?あ、ああ。俺か?」

「そう。悲しそう」


その言葉を言ってから伊藤さんは「...私で良かったら話を聞く」と俺に向く。

俺はそんな姿を見つつ俯く。

それから(まあ良いか)と思いながら顔を上げた。

そして苦笑する。


「実はな。彼女に浮気されてさ」

「...!!!」

「オタクは嫌いだとよ」

「...えと。そ、そう」


俺の浮気されたという言葉に目をパチクリ。

そしてようやっと言葉を捻り出した伊藤さん。

それから複雑な感じで少し赤面する。

ただし困惑している様な感じでもある。

その姿に「え?」となる俺。

そんな伊藤さんを見ていると彼女は手に持っていたアニメグッズを元の場所に静かに置いた。

俺を見てくる伊藤さん。


「その、浮気された?」

「...ああ。...そうだな。どうした?」

「えっと。じゃ、じゃあ、今は付き合いも無くフリー?」

「...え?あ、ああ。まあそうなるな」

「そ、そ、そう、なんだ」


動揺しまくっている伊藤さんはなんだか頬に手を添え嬉しそうな顔をする。

浮気を喜んでいるのか分からないけどでもそんな感じに見えないその顔に俺は驚く。

伊藤さんはゆっくり顔を上げた。

「えと。じゃあ」と俺を見てくる伊藤さん。

それから「今から私、君の家に行きたい」と言って...あ?

そうか。

え?


「ぇへ?それはど、どういう意味!?」

「えと。その。な、慰めてあげる」

「はぁ!?」

「あ、あ、え、えっちな意味じゃない!」

「へ!?へぁ!?」


なんだこれは。

意思疎通が上手くいかない。

俺達は周りのお客さんに不思議がられる。

店員にはジト目を向けられた。

警備員を呼ばれそうだ。


俺達は逃げる様にハッとしてその場を走り去った。

それから伊藤さんと一緒に外に出た。

伊藤さんの言葉はなんだ。

意味が分からない!

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