第31話 【国賊級スキャンダル】魔王軍「四天王」と有力伯爵夫人が“敵対的密会”!

【国賊級スキャンダル】魔王軍「四天王」と有力伯爵夫人が“敵対的密会”! 夫が戦場で指揮を執る裏で、妻は敵将とワイングラスを傾けていた


 本誌は、中立都市の最高級ホテル「銀の止まり木」のスイートルームバルコニーで、夜景を見下ろしながら睦み合う二人の姿を激写。その相手は、なんと魔王軍四天王の一角、「氷獄のゼギオン」その人であった。


<img =バルコニーでワインを飲む貴婦人と、漆黒の鎧を脱いだ魔族の男">

▲中立都市の夜。夫人の肩を抱くその手は、数多の兵士を葬ってきた氷の爪だ。しかし今夜、その爪はグラスのステム(脚)を優雅に支えている。


■「夫の話は税金のことばかり。彼は世界征服を語ってくれるわ」

 渦中の人物は、社交界の花と謳われるセシリア伯爵夫人。彼女は、夫が前線へ赴いている間、「領地の温泉へ湯治に行く」と言い残し、変装魔法で姿を変えて中立都市へと向かっていた。


 そして、待ち合わせ場所に現れたのは、禍々しい角と青白い肌を持つ巨漢、ゼギオン。戦場では冷酷無比な氷の魔法で恐れられる彼だが、この夜は特注の燕尾服に身を包み、夫人に最高級の魔界産ワイン「ブラッド・ヴィンテージ」を注いでいた。


 本誌が接触した夫人の側近(匿名)は、夫人の不満をこう代弁する。 「旦那様(将軍)は、家に帰っても補給路の話や兵站の愚痴ばかり。退屈極まりないんです。でもゼギオン様は違います。『いかにして世界を恐怖に陥れるか』『愚かな人類をどう蹂躙するか』…その野望のスケールが大きくて、とても情熱的だと奥様はうっとりされていました。『男はあれくらいワルじゃないと』って」


 どうやら夫人にとっては、堅実な国防計画よりも、破滅的な世界征服プランの方が、男としての魅力を感じるらしい。


■軍事機密は漏れているのか?

 最も懸念されるのは軍事情報の漏洩だが、二人の会話を盗聴した本誌記者は、拍子抜けするような事実を耳にした。


 ゼギオン「…魔王様も人使いが荒くてな。『勇者が来るから城の掃除をしておけ』だの『罠のメンテナンスをしろ』だの、中間管理職の苦労を分かっておらん」 夫人「まあ、かわいそうに。うちの夫もよ。『国王陛下は現場を知らない』って、毎晩ワインを飲みながら管を巻いてるわ」 ゼギオン「ふっ、人間も魔族も、上に立つ者が無能だと下が苦労するのは同じだな…」


 二人は、敵対する陣営の機密を交換するどころか、互いの組織のブラック体質への愚痴で意気投合し、奇妙な連帯感を深めていたのだ。愛を育んでいたのは、ロマンスではなく“社畜の共感”だったのかもしれない。


■将軍への直撃取材

 本誌は、前線基地にいる将軍(夫)に、魔法通信でコメントを求めた。 「バカな! 妻は今、温泉でリウマチの治療中だ! 敵将と密会だと? ゼギオンは冷酷な氷の悪魔だぞ、そんな…そんなホットな関係になれるはずが…!」 通信は、将軍の絶叫とともに途絶えた。


 「愛に国境はない」とは使い古された言葉だが、まさか最前線のバリケードをも超えていくとは、誰も予想しなかっただろう。 この不倫劇が、泥沼の離婚裁判に発展するのか、それとも両陣営のトップを巻き込んだ和平交渉(あるいは全面戦争)のきっかけとなるのか。


 少なくとも、次に戦場で将軍とゼギオンが対峙した時、彼らが交わす剣劇には、国家の威信以上の、極めて個人的でドロドロとした感情が乗ることだけは間違いない。

―レミィ・スクープ

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