第10話 “伝説の勇者”の栄光は嘘だった?歴史から名を消された“影の仲間”たち

【歴史の偽証】“伝説の勇者”の栄光は嘘だった? 魔王討伐の真の功労者は、歴史から名を消された“影の仲間”たち


 30年前、南の魔王を討ち取り、この国を闇から救ったとされる“伝説の勇者”アラン。彼の武勇伝は吟遊詩人によって歌い継がれ、その姿は王都広場の銅像となり、子供たちの誰もが憧れる英雄譚として語り継がれている。


 しかし、その輝かしい栄光が、名もなき仲間たちの犠牲と沈黙の上に築かれた、巧妙な偽りだったとしたら? 本誌は、歴史の闇に葬られた「もう一つのパーティ」の存在を突き止めた。


<img="勇者アランの銅像">

▲王都広場に立つ勇者アランの銅像。しかし、彼の隣に立つべき仲間たちの姿は、どこにもない。


■語られない“武勇伝”の矛盾

 公式の歴史では、勇者アランは聖騎士と清き乙女のちの聖女の二人を伴い、聖剣の力で魔王軍を打ち破ったとされている。だが、その武勇伝には、あまりに多くの矛盾点が存在する。


 たった三人で、どうやって千里眼を持つ魔将軍の監視網を潜り抜けたのか? 不死身のアンデッド軍団を、聖なる力だけでどうやって完全に沈黙させたのか? そして、魔王城に張り巡らされた無数の罠を、誰が解除したというのか? これまで「奇跡」や「神の御業」の一言で片付けられてきたこれらの疑問に、ついに答えが見つかった。


■歴史から消された“影の仲間”たち

「アランは、確かに光だった。だが、光が強ければ、その影もまた濃くなるものだ」

 

 そう語るのは、当時のパーティ事情を知るという匿名の情報提供者だ。彼が明かした“影の仲間”たちの存在は、我々が知る英雄譚を根底から覆すものだった。


 “沈黙の刃”のゼノ  暗殺者アサシンギルド出身の斥候。彼の隠密行動と情報収集能力なくして、パーティが魔王城にたどり着くことさえ不可能だったという。敵地の食料庫に毒を盛り、将軍たちの間に不和の種を蒔いたのも彼だった。


 “嘆きの賢者”リリアナ  神殿から禁忌として追放された死霊術師ネクロマンサー。彼女がアンデッド軍団の指揮系統を乗っ取り、同士討ちさせたことで、パーティは進軍の道を得た。その力は、聖騎士の浄化魔法よりも、遥かに効果的だったと記録されている。


 “泥中の策略家”ゴードン  スラム出身の盗賊シーフ。魔王城のあらゆる罠を見抜き、解除したのは彼の腕だった。また、偽の命令書を敵陣に流し、補給部隊を混乱させるなど、その功績は計り知れない。


■なぜ、彼らは消されたのか

 情報提供者は、重い口を開く。 「勇者アランは、素晴らしいリーダーだった。だが、彼は誰よりも自らの“物語”を愛していた。魔王討伐後、彼は自らの栄光が、世間から蔑まれる“アサシン”や“死霊術師”の力によって成し遂げられたと知られることを、何よりも恐れたのだ」


 アランは、影の仲間たちに莫大な金銭と、固い口止めを約束させ、歴史の表舞台から完全に姿を消させた。彼らの功績は全て、勇者アラン一人の武勲として、美しく作り替えられたのだ。


 本誌は、現在、田舎で隠居生活を送る老勇者アラン本人に取材を申し込んだ。しかし、彼は「若き日の思い出を、面白おかしく掻き回すのはやめていただきたい」と、穏やかながらも硬い表情で、一切のコメントを拒否した。その瞳の奥に一瞬よぎった苦悩の色を、記者は見逃さなかった。


 我々が信じてきた英雄譚は、一人の男の虚栄心によって歪められたものだったのかもしれない。真の英雄とは、一体誰なのか。玉座の前で表彰される者か、それとも名もなき闇の中で、世界を救った者たちか。この国の子供たちが次に手にする歴史の教科書は、少しだけ書き換えられる必要があるようだ。

―レミィ・スクープ

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