五煌剣Ⅱ 〜繋界の継承者〜
桜井りゅうと
プロローグ ──裂かれた理の果てに
⸻
夜が、静かに終わりを拒んでいた。
雲は凍りつき、星々はその光を見失う。
世界の呼吸が、わずかに乱れていた。
まるで
“何か”
が、もう一度この地に
降りようとしているかのように。
千年前、ひとりの少年がいた。
その名は――
“リュウト”。
彼は五つの王と共に、
滅びかけた世界を繋ぎ直した。
炎は再び灯り、
水は流れ、
雷が誓い、
風が歌い、
闇が涙を流した。
そして、リュウトは
“第六の
を掲げ、五つの理をひとつに融かした。
世界は再生し――
新たな時代が始まった。
「目覚めよ――
第六の煌剣。
《繋界》!!」
『終わりは、始まりに。
始まりは、また終わりを照らす』
「……ありがとう、ノワール」
しかし、再生とは、
滅びの形を変えただけのもの。
“理”
が続く限り、
“歪み”
もまた生まれる。
⸻
灰色の空の下。
地を裂くような微かな震動が、
世界中で同時に起こった。
最初は小さな違和感だった。
だが、それはやがて
“呼吸”
のように周期を持ち、
空気、海、風、
そして光にまで滲み出していく。
――繋がりすぎた世界は、
自らの境界を忘れる。
その声を聞いた者は、誰もいなかった。
けれど確かに、
“何か”
が目覚め始めていた。
⸻
古代の塔の上、白銀の光が揺らぐ。
長い時を越えて、
ひとつの影が目を覚ます。
それは、かつて
“鍵”
と呼ばれた存在。
世界を繋ぎ、理を創った男――
リュウト。
彼の瞳は閉ざされたまま、
胸の奥で淡く光が脈打っている。
「……まだ、終わっていなかったのか。」
空の裂け目が、彼の眠る塔の上で震えた。
そこから流れ出るのは、
光でも闇でもない
“虚の輝き”。
あらゆる理の狭間を侵食する
“第七の
の光。
そして、彼の頬に一筋の涙が流れた。
それは懺悔ではなく、祈りだった。
「もしも……再び世界が揺らぐなら。
どうか、継ぐ者たちが――
“選んで”くれ。」
彼の声は風に溶け、遠くへ流れる。
その先で、
炎の少女が空を見上げ、
水の青年が湖に手を差し、
雷の戦士が空に剣を掲げる。
風の巫女が囁き、
闇の少年が微笑む。
それぞれの胸の奥に、同じ熱が灯った。
“呼んでいる――
何かが、目を覚まそうとしている。”
⸻
世界の
“理”
は、再び試される。
それは滅びの再来ではない。
創造の痛みだった。
境界が揺らぎ、記憶が溶け、
繋がりの果てに生まれるのは、
新たな――
“継承者”たちの物語。
そして――
再び、風がその名を囁く。
「リュウト。」
⸻
──滅びを越え、理を創る者たちの
新たなる神話、ここに始まる。
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