第25話 13.青春期から大人へ 十六夜 水明様

企画にご参加ありがとうございました。

写真がモチーフなだけに映像美が良かったと思います。



▶︎「……察してくださいよ。要は、本当に部活を辞めてよかったのかってことです」


若い頃によくある悩みではあります。


▶︎「よかったんじゃないのか?」

 生活に余裕も出来て、と言う崎見に対して凛は、そんな簡単な話じゃないんです、と言い返した。

「結局、部活を辞めて余裕は出来たんですけど。逆に他の事もなあなあになってしまった気がして、自分はこのままでいいのかなって」

 心配になるんです、と凛は手をとめる。丁度、テーブルの上の写真もなくなっていた。

「せっかく勉強や他のことを頑張りたくて辞めたっていうのに、実際に辞めてもなかなか切り替えられなくて。本当に辞めた意味があったのか? ってかなり悩んで出した決断を疑ってしまうんです」


リアルな悩みですね。

ちなみに歳をとってこの悩みの種類がなくなっていくのは、体力の低下と寿命のせいだと思っていますw


▶︎「写真を取りに行くんだよ。何かわかるかもしれないだろう?」

 いい場所があるんだ、と崎見はすでに行く気満々である。

「わからないかもしれないですけどね」


主人公が写真部にいるのは、少なからず写真が好きだからではなかろうか? そういう経験があれば、「何かわかるかもしれない」に少し前向きになる気もする。そう思えないくらいささくれていた? テニスへの気持ちから察するに、責任感が強い頑張り屋というイメージはあるし、ここで簡単になびかないところも十代らしくて好感はもてる。けれども、今のところ心情が深く書けているかというと、既視感があるという印象。


▶︎一方、凛はスマホで撮影する系の写真部のため、崎見が一体何をしているのかサッパリだった。


今どきの写真部はスマホもありなんですね。私は学生時代、ちょっとだけ写真部にいました。現像も自分でやってました。賞に入ったこともありましたが全然詳しくないです。


▶︎吐き出した白い息はたちまち消え去り、するどい寒さと寂しさだけが残った。あの日の選択は正しかったのだろうか……そのことだけを今日まで考え続けてきた。

 気を紛らわせるようにマフラーをきつく締める。


会話に出ない本心が垣間見えて期待しました。


▶︎「もう帰りません? 天気悪いし」


私もこのタイプですね。


▶︎「大丈夫、もう6時40分だから多分あと2分くらいだよ」


大丈夫の一言で終わらせてしまう崎見のキャラクターはいいですね。これまでのやり取りもらしさがちゃんと出ていて、ラストの関係に納得できます。


(情景描写は本編へ)


▶︎「はい。でも私は先輩と違って記録に収めるんじゃなくて、この景色をより多くの人に写真を通して感じてほしいんです」


個人的にはやや急だなと思いました。というのは、主人公が「テニスを辞めたこと」を悩んでいたので、主人公と写真(部)の印象が薄かったんですね。セリフのニュアンスからは、写真がずっと好きだったようなんで、そういった人物の背景がわかる描写が前半にあったら、ここも「気づき」や「決意」として受け取りやすいかと思いました。


▶︎黒板の前に立つ男性教師は、現国の教科書を見ながら板書を始めた。


主人公の凛から、崎見視点になりますね。凛の結が教科書の言葉にまとめられた……という風に感じました。(ちなみに凛が主人公に感じたのは、内面描写の多さからです)

崎見が写真家になってないのは面白いなと思ったのですが、二人とも写真が好きなのになぜ進路が分かれたのかが逆に気になりました。



会話が面白く、ピークの情景描写も良かったです。

全体としていい話だと思います。

個人的に複雑で割り切れない話が好きなので、あれだけ悩んだ「選択」に対して、もう少し主人公の葛藤や苦難が見たかったです。

その姿こそが教科書に書かれていてほしいかなと思いました。

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