追放されたので5億トンの鞄をその場に置いたら、大陸がシーソーになって勇者が成層圏まで吹っ飛んでいった。俺は「星の重力」を背負っていただけなのに、なぜかラスボスの魔王に求婚されています
第1話 勇者の知能指数がスライム以下だった件
追放されたので5億トンの鞄をその場に置いたら、大陸がシーソーになって勇者が成層圏まで吹っ飛んでいった。俺は「星の重力」を背負っていただけなのに、なぜかラスボスの魔王に求婚されています
楓かゆ
第1話 勇者の知能指数がスライム以下だった件
世界の命運を握るSSSランクダンジョン『奈落の顎』、その最深部。
あと一歩で魔王の部屋、という場所で、俺――荷物持ちのトールは、勇者アレックスに指を差されていた。
「トール、お前クビな」
アレックスは黄金の鎧を煌めかせ、整った顔立ちをニヤつかせている。
隣にいる聖女マリアは「キャハハ、ウケるー」と手を叩き、賢者ガリ勉(あだ名)は眼鏡をクイッと上げて「計算通りですね」とか言っている。
俺はため息をつきながら、背負っている巨大な黒いリュックのベルトを握り直した。
「あー……アレックス。理由は?」
「臭いから」
「は?」
「お前、ずっとハァハァ言ってるじゃん。汗だくだし。僕たちの華麗なる勇者パーティーのビジュアルに傷がつくんだよね」
俺は自分の額を拭った。確かに汗だくだ。
だが、待ってほしい。
今、俺が背負っているこのリュック。
中に入っているのは、回復薬や食料だけではない。
このダンジョンでドロップした『超重力鉱石』×5000個、『ドラゴンの死体』×50体分、そして極めつけは、先ほど拾った『超高密度ダークマター(未開封)』だ。
総重量、およそ5億トン。
俺の固有スキル【無限筋力】と【摩擦係数無視】がなければ、このフロアごと地球の核まで沈んでいる代物である。
俺がハァハァ言っているのは、こっそり筋トレしているからではない。地球の自転を支えているようなものだからだ。
「アレックス、気持ちは分かるが、今ここで俺を追放するのは物理的にオススメしない」
「は? 何イキってんの? 荷物持ち風情が」
「いや、この荷物、ちょっと重いんだよ」
「プーッ! 重いって! たかがリュック一つで!」
聖女マリアが腹を抱えて笑った。
「トール君ってぇ、ほんと無能だよねぇ~。私のヒール杖(重さ2キロ)より重いもの持ったことないくせにぃ~」
賢者が嘲笑う。
「ふっ、私の計算によれば、そのリュックの質量は高々20キロ。君が演技をして『重いアピール』をし、給料を上げようとしているのは明白です」
……こいつら、ステータス画面の「STR(筋力)」しか見てないな?
俺のSTRは表記上「1」だ。
だが、その横に小さく「×∞(無限大)」と書いてあるのが、バグで見えていないらしい。
「おい、さっさとそのリュック置いて消えろよ。中身のレアアイテムは僕らが回収するからさ」
勇者アレックスが、俺のリュックに手をかけた。
俺は真顔で警告する。
「触るな。マジで死ぬぞ」
「うっせえええええ! 『勇者キック』!」
ドカッ!
アレックスの足が俺の横腹に入る。ダメージはゼロだ(俺の腹筋はアダマンタイトより硬い)。
だが、その衝撃でバランスが崩れた。
ズルッ。
俺の手から、リュックのベルトが滑り落ちた。
「あ」
俺は言った。
勇者たちはニヤニヤ笑っていた。
次の瞬間。
ズドォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!!!!
音が、遅れて聞こえた。
いや、音ではない。大気の悲鳴だ。
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