第8話 学園入学
「明日は学園の入学式ですから、これくらいで終わりにしましょう。魔力の回復もしないとですから」
「分かった。アリアさんも自主練は程々にね」
「やっぱり気がついていましたか?」
「帰りが遅いからね」
「大丈夫です。今日は休みます。これで疲れていたら、本末転倒ですから」
入学式の前日、魔法の練習はお昼で終わりにして、今日は終わりとなった。
この後は座学をして、ご飯を食べて、風呂に入って寝るだけ!
氷魔法を受けていたせいで、結構寒い。
というか、この部屋自体の室温を下げるほどの氷魔法って、どれだけなんだろうか。
これで本気を出していないんだから、本気でやったらどうなるのか...。
「でも、そういうナガトさんはどうなんですか?最近寝るの遅いですよね?」
「いや...まぁ...」
「ポーション作りですか?」
「うん、何とか形になったけど、効果あるかは試してみないとだね」
俺は懐からポーションを取り出し、中身を飲んでみた。
味は特にしないけど...効果はあって欲しい。
俺がポーションを飲んだ直後、体から寒さが消えた。
どうやら成功したようだ。
「うん、出来た」
「なんのポーションだったんですか?」
「氷耐性、寒いからね」
「氷耐性...それ、私にも貰えますか?」
「もちろん」
氷耐性のポーション、なぜ作ったかと言われれば、隣で氷魔法を出されると普通に寒いからである。
それ以外に大きな理由はない。
強いて言えば、氷耐性のポーションは、あまり売られていない上に、高価だから...だろうか?
氷魔法は珍しいから、需要がなく、作られないらしい。
「さ、明日は学園ですので、早く帰りましょう」
「試さなくていいの?」
「はい、信じていますから」
「...うん、大丈夫」
曇り無い笑顔を向けられ、俺は立ち尽くしていた。
そして、零すようにそう伝えた。
正直、色々と怖いけど...信じてくれるなら、出来る限りやりたい。
前世での嫌な記憶も、全部忘れることは出来ないけど、二の舞にならないように、アリアさんを手助けする。
俺のやることはそれだけでいい。
その後、寮に帰り、早めに眠り着いた。
起きた時にまたまた絶景が広がり、気持ちが揺らぐが、ぐっと堪えた。
「制服...コスプレじゃない?これ」
大学生だった俺からすると完全にコスプレである。
まぁ、2年くらいの差なので、大丈夫といえば大丈夫だろう。
「さてと...アリアさん起こすか?」
「むにゃ...」
「可愛い」
うん、こんな可愛らしい寝顔を崩すのは勿体ない、先に料理とかしておいてから起こすとしよう。
そして、料理の途中で、アリアさんはゆっくりとベッドから起き上がった。
「あ...おはようございます。ナガトさん」
「おはよう。ご飯もう少しで出来るよ」
「いつもごめんなさい。朝は弱くて...」
「時間には余裕あるから大丈夫だよ。あっちで着替えてきて」
「はい」
まだ眠そうな目を擦りながら、アリアさんは洗面所の方へ消えていった。
面白いのは、洗面所から出てくると可愛らしい雰囲気から、きっちりとしたお嬢様になる事だ。
「よし、ご飯も食べたし、そろそろ行く?」
「ですね。早めに着いておいて損はありませんから」
「じゃあ、行こうか」
「はい」
そして、学園を目指すこと徒歩10分、こんなに広くなくていいとしか思わない校舎に着いた。
しかし、中の状況が見えた俺とアリアさんは顔を歪ませた。
綺麗な校舎とは裏腹に、生徒の顔色が悪い。
多分、先輩方なのだろうが...これになる可能性もあるというわけだ。
「回復魔法にもお金がかかる...怪我を引きずる可能性も視野に入れておかないといけませんね」
「地獄のマラソンってことか」
この学園の目的が何かわからないが、まぁ、まとも倫理観は持ち合わせていないのだろう。
これは別の意味で最悪な学園生活になりそうだ。
新入生はどこに...と思ったが、これに関しては看板が置いてあった。
矢印はあるが、嫌な予感しかしない。
「準備は大丈夫ですか?」
「俺はいつでも」
「じゃあ、行きましょうか」
俺とアリアさんは矢印の指す方に歩き、扉の前まで来た。
しかし、アリアさんが開けようとしても、その扉は開かなかった。
まだ、開かない可能性...も考えたが、両開きということにも意味があるのだろう。
「二人で開けるってことかな」
「ですね」
「じゃあ...せーの」
二人で両開きのドアを開け、目の前に拡がったのは、ポツンと置かれた2つの椅子。
座れと言うことだろうが、何故、2つだけなのだろうか。
まさか、新入生が俺とアリアさんだけな訳でも無いし...考えられる可能性は、魔法。
これに関しては知らない魔法なので、考えるのも馬鹿らしい。
「ひとまず、座りますか?」
「それしかないよね」
罠なのか、なんなのか分からないが、手がかりが無いから、できる行動は一つだけ。
そして、俺とアリアさんは席に座る。
すると、見える景色がいきなり変わった。
俺とアリアさんは沢山いる生徒の中に居て、座ってた椅子も映画館のような感じで敷き詰められていた。
「一体...これは...」
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