第6話

「ねえねえ、祐奈。もう最高だったねー!」

 コンサートの帰りも、まだ雅の興奮は冷めていない。

「うん。私もめぐるんのファンになったよ!」

「でしょー!Monacaもう最高だよ!」

 東京から鎌倉に帰る道のりも、雅の顔は喜びに輝いていた。

「あのね。祐奈にだけ教えてあげる。お兄ちゃんの推し」

「へえー。誰なの?」

「セトノアラシ」

「へえー!あの2人組の?」

「そう。瀬戸内海にある小さな島から出て来たセトノアラシ。それがお兄ちゃんの推しなの」

「例えば陽炎とか?」

「最高。でもお兄ちゃんが大好きなのは、海に浮かぶ空なの」

「空?雲じゃなくて?」

「そう。お兄ちゃんは海よりも空が好き。だって海って何処かで終わるけど、空は世界中何処に行っても続いているから」

「前に聞いた事がある。青空が好きだって。だって野球が出来るからってそう言ってた」

「悔しいなあー。その内、私よりも祐奈の方がお兄ちゃんに関する情報増えて行くんだね……」

「大丈夫。和明にとって、雅はずっと可愛い妹よ」

 祐奈はそう言って、さりげなく雅の髪に優しく手を触れた。

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