ハイパー赤ずきんちゃん

森の ゆう

――森最強の少女は、今日もおつかいへ行く――

赤いフードが風を裂いた。

森の入口に立つ赤ずきんちゃんは、腰にハイパーブレード、背中に大型スピーカー、そして手にはおばあちゃんへのお土産——栄養満点の“スーパー・エナジーパイ”を持っていた。

「よし! 今日もおばあちゃんちまで最速で行くよ!」

森の動物たちは全員、彼女が通るのを見るとサッと道を空ける。

なぜかって?

赤ずきんちゃんは“森の危険度ランキング”で、オオカミより上の危険度 SSSに認定されているからだ。

■ オオカミ、作戦会議をする

その頃、森の奥ではオオカミが仲間たちと深刻な会議を開いていた。

「みんな聞いてくれ……。赤ずきんがまた動き出した」

森のボス格クマが震えた。

「アイツか……! 前回、森ごと吹き飛ばされたやつだな……!」

「違う! 爆発したのはオレの罠だ! 赤ずきんは無傷だった!」

動物たちは黙った。

“無敵の赤ずきん”は、森の怪談レベルになっているのだ。

「今回はチーム戦だ! 俺たち全員で協力して、赤ずきんのおやつをもら……じゃなくて倒す!」

しかしその瞬間。

「——何の会議?」

背後から声がした。

動物全員が瞬時に散り散りになった。

赤いフードがひらりと揺れる。

そこに立っていたのは、すでに赤ずきんちゃん本人だった。

「えっ……早すぎ……」

「まだ作戦会議始まったばっか……」

■ 赤ずきん、全力疾走

「今日はね、寄り道しちゃダメ! おばあちゃんが『早く来て』って言ってたんだ!」

赤ずきんはそう言うと、ハイパーブレードを鞘に収め、代わりにスーパーローラーブーツを装着した。

ギュオオオオオオッ!!

森の木々がすべて横一直線に倒れるほどの爆速。

オオカミたちは風圧だけで吹っ飛び、木にめり込んだ。

オオカミ「え? 攻撃されてないのに負けたんだが……」

■ おばあちゃんの家で

赤ずきんは3秒でおばあちゃんの家に到着した。

「おばあちゃん! ハイパーパイ持ってきたよ!」

ドアを開けると、ベッドの上に倒れているおばあちゃん……

ではなく。

「遅いよ赤ずきん。オオカミに捕まったフリする準備してたのに」

どうやらおばあちゃんは、毎回の“おおかみ撃退ショー”を楽しみにしているらしい。

「じゃあ、呼んでくるね!」

赤ずきんは満面の笑みを浮かべた。

■ オオカミ、連行される

数秒後、ボロボロのオオカミが引きずられてきた。

「や、やめろ〜〜! 今日ぐらい平和に……!」

おばあちゃんはニコニコしながら手拍子する。

「はい、いつものやつお願いね。赤ずきん!」

赤ずきんは爽やかに笑う。

「了解! ハイパーお説教タイム!!」

森中に響くオオカミの悲鳴。

だが、これは恒例行事。

おばあちゃんと赤ずきん、

そしてなぜかオオカミも、

最後はみんなでスーパー・エナジーパイを食べて仲良くなった。

「赤ずきん……次は優しくして……」

「え? 聞こえなーい!」

赤ずきんの笑顔が森を照らした。

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