第35話 取引会場へ向かえ!
- 盗品倉庫
「香ー!俺の名前の箱あったー!」
「僕のもあったー!うわぁ……使ったあとの紙コップとか入ってる。」
「げ!……髪の毛だって。これいつ拾ったんだろ、結構量あるぞ。」
それぞれの名前が書かれた箱を見つけることができた。
だが中に入っているのは、ゴミのようなものばかりで逆に気持ち悪い。スマホや通信機は入れられていなかったため、別のところにしまわれているのかもしれない。
「こーくん!とりあえずヘアピンだけは持ってくね。他は使えそうになかったー」
「了解!俺も特に使えそうなやつないな……いやこの鍵だけは一応持ってっとくか。」
とりあえず香はヘアピン、俺は鍵だけを持ち出して部屋を出る。
廊下には誰もいなかった。さっきのお客様とやらも本当に迷いこんだだけなんだろう。ここで逃げ出しても意味がないと思い、人の気配がする方へと向かう。幸いさっきの部屋に大きめのフード付きパーカーがあったので、それを拝借し歩きだした。
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しばらく誰もいない廊下を歩いていたが、ある扉の前に近づくと人のざわめきが聞こえてきた。
「香……!この先は……。」
「うん。たぶんあのお客様たちがいるんだろうね。」
「どうする?遠回りするか?」
「……でもここしか進むところは無さそうだね。」
フードを被っているとはいえ、もしかしたら顔を知られてるかもしれない俺たちが堂々と扉を開けて入るのは躊躇われた。少しの間、香と話し合っていると、中から扉が開けられた。
ガチャ
「……!やば!」
出てきたのは仮面をつけた2人組だった。その2人は俺たちに気づくと、扉を閉め、おもむろに仮面を外した。
俺たちは焦ったが、片方は立夏先輩だった。一緒にいるのは流星だった。グループ2と合流できたようだ。
「こーくん、香!無事だったんだね。良かった。」
「はい、なんとか。」
「さっき亮太から2人が連れ去られたって聞いて、心配だったんだ。」
「……野口はなんて?」
「なんか探索してるときに見知らぬ男たちが現れて、2人を連れてったって。亮太はギリギリ逃げれたみたいだけど。あっ!無線で連絡しとくか!」
「「「待って!」」」
「え?」
「無線に俺たちのことは話さないで。」
先ほどまでの出来事を2人に話した。立夏先輩はなんとなく予想がついていたらしい。
そして2人にスマホで東雲に連絡してもらおうと思ったが、この別荘についたときに回収されてしまったらしい。入口で仮面を配られると同時に交換という条件だったようだ。これからオークションが行われるらしい。(たぶん人身売買?)2人はその前に別の部屋を見てまわろうと廊下に出てきたところだったようだ。そして俺たちに出会った。
「僕たちが捕まる前に色々と見てまわったけど、客室みたいな部屋がたくさんあって、その一つに仕掛けがある部屋があったよ。でも指紋認証が必要らしくてたぶん僕たちじゃ入れない。」
「他には学園の生徒の持ち物が保管されてる部屋があった。たぶん盗品だと思う。」
「そっか。そこまで探れたんだね。」
「このままオークションに参加してみるか?」
「いいと思う!だけど僕たちの顔は割れてるかも……」
「そこは僕に良いアイデアあるから大丈夫。」
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扉から中へ入った立夏先輩と流星の後に続くように入ると、立夏先輩が仮面をつけた男性に話しかけられた。
「おや?花房くん後ろの子達は?」
「あぁ、僕の後輩で荷物持ちとかをしてくれてる子達ですよ。」
「へぇー。……顔が見えそうだから仮面つけることをオススメするよ。ここは一応そういうことには厳しいからね。」
「実は仮面を無くしちゃったみたいで。」
「そうなの?じゃあ予備の仮面あげるよ。」
「本当ですか?ありがとうございます。」
「いえいえ。その代わりに良い商品が入ったら一番に教えてくれよ?」
「わかりました。では失礼しますね。」
(よくわからないが仮面をくれたらしい。親切な人だな。)
……コソコソ
「立夏様もしかして隆弘先輩に間違われてます?」
「たぶんね。あんまり会わない人なら気づかないんじゃない?」
「へぇー。全然違うのに。」
「たぶん仮面効果もあるかもね。それより2人ともつけちゃいな。」
「「はい。」」
「先輩!俺は何かしますか!?」
「うん。安武くんは特に話さなくて大丈夫。ただ敵意とかを向けてくる人がいたら教えて。」
「了解です!」
俺と香はフードを深く被り、仮面をつけて立夏先輩と流星の後ろに控えた。よほど覗き込まれなければ、気づかれることもないだろう。
オークション会場に向かうらしき人が集められてい大広間には、ざっと見ても100人はいる。近くの人の話からまだまだ参加者は到着するらしい。外から別荘を見たときはそんな大きな建物には見えなかったのだが、どこへ案内するのだろうか。
「皆様お待たせしました。順番に会場へご案内します。」
若い男性が案内の声をあげて、より一層ざわめきが大きくなった。大広間の奥の方から順番に案内しているようで、集まっている人がどんどん奥の部屋へと消えていく。俺たち4人も人の流れに乗って足を進める。
とうとう扉を抜けて、隣の部屋へと入る。
床が開いていて、人々は地下へと向かっているようだった。
(なるほどな。地下に広い空間があるからこれほどの人数を案内できるのか。)
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薄暗い階段を下りた先にはまさにオークション会場といえる場所があった。商品が出てくるであろう場所だけが光で照らされ、お客の方は暗くよく見えない。どんな人物が座っているのかはわからないが、かなりの人数がいることがわかる。俺たちは大広間の後ろの方であったため、席につくときには8割ほどの客席は埋まっていた。
「ここってたぶん違法な取引だよな?」
「そうだと思うよ。」
「こんなに人数が集まるんだな。」
「まぁ、いつの時代もそういった違法なものに魅力を感じる人が一定数いるってことだね。」
コソコソと話していると、ステージに当てられる光が強くなった。その中心に人が立っているのが見える。……見たことあるような?
「あれってこの間、隠しカメラに映ってた人じゃない?」
「え?そうだっけ?」
「こーくん覚えてない?あの北原さんと一緒に監視カメラのモニター室に入ってきたおじさん。」
「あぁそういえば!」
ステージ上にその男性がマイクを持って立っている。このオークションの主催者かその関係者なのかもしれない。……何かを話すようだ。
「皆様、本日はお集まりいただきありがとうございます!まだお客様がお揃いではありませんが、お知らせしたいことがございまして。」
「実は本日の目玉の商品がこちらの不手際で逃げ出しまして……そのため開始時刻が遅れてしまう可能性がございます。ですが捕獲する手筈はできておりますので、今しばらくお待ちください。」
ざわざわ……
その言葉で会場内にざわめきが起きたが、俺たちにも焦燥が広がった。
「これって……俺たちのことだよな。」
「たぶんね。何か捕まえる策があるのかもしれない。」
「2人を逃がすか?俺と花房先輩が残って……」
「いやそれもまずい。ここで急に2人が外に出たら違和感があるし、逆に僕と安武くんが出ていっても連れの2人が疑われる。」
「ここはあっちのアクションを待つしかないかも。」
4人で話し合っていると地上に続く階段の方から足音が聞こえてきた。複数の足音だ。後から到着するというお客様だろうかと思い、目線を向けた。……仮面をつけてはいるが、見覚えのあるような人たちだ。
「ついたー!ここだよー!」
小柄な男性が連れの人たちに声をかける。聞いたことのある声だ。というか奏多だろう。
コソコソ……
「みんな!あの今入ってきた人たちって!」
「うん。偽転校生と生徒会の皆様だね。」
「……まさかここに来ちゃうなんて面倒なことになったね。」
「ただ生徒会の人たちは味方かもしれないぞ。」
「そうかもね。奏多先輩のことを盲信してる人はいないから。でも弱みを握られてる人もいるから……。」
「弱み?」
オークション会場に生徒会と奏多がやってきた。
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