第12話 転校生は嵐の中心
- 2年A組
「実はこのクラスに話題の転校生が来ます。」
「「えぇ!やったー!気になってたんだー!」」
先生の一言でクラス中が騒がしくなる。
「なぁ藤岡。転校生どんなやつかな?カッコいいやつ?可愛いやつ?俺は可愛い方希望!」
「さぁ…?」
(まさか同じクラスなんて!でも変な虫がつかないように監視はしやすいな…。)
「では入って!」
ガラガラ
「失礼します。」
・・・
あんなにざわついてた教室が雫が入ってきた瞬間に静まり返った。
「ん?なんか静かになったな。まぁいい雪城!自己紹介をしてくれ。」
「はい!雪城瑞希です。よろしくお願いします!」
「元気でよろしい!席は…安武の隣が空いてるな!」
先生はそう言って流星の隣の席を指差した。
「えっと…安武くん?よろしくね。」
「おう!俺は
「うん!僕のことも瑞希でいいよ!なんだか話しやすそうで安心しちゃった。」
「そうか?良かった笑」
雫と流星が和やかに話している。…それはいいんだが、クラスメイトの視線が怖い。
ぼそぼそ
「なんであんなもさいのが流星くんの隣?」
「流星くんも無理しちゃってるじゃん。」
(そういえば流星のファンクラブがあるって言ってたな…。怖っ。雫に何かされなきゃいいんだけど。)
「なぁ藤岡ー。なんか地味目な子が来たな。」
「あぁそうだな。」
「でも何かトキメキものを感じる…。メガネを取ったら実はイケメンだったりしないか?」
「そんな漫画みたいなことあるわけないだろ笑」
(野口…。おまえ意外と鋭いな。まぁイケメンっていうより綺麗で可愛いってタイプだけど。)
「そうだよなー。でもそうじゃないとちょっと安武のファンが怖いぞ…。」
「だよな…。」
・
・
・
- 昼休み
「失礼します。」
「「!?キャー!副会長!」」
なぜか2年A組に副会長がやってきた。
「副会長ー?どうされたんですか!?」
入口近くの生徒が問いかける。
「実は雪城くんとランチでもと思いまして…。」
「えっ?僕と?」
雫が驚いた顔で副会長を見る。自分とは関係ないと思って流星と会話していたが、突然呼ばれたから驚いたようだ。
(まじかまずい…。副会長、本気で雫に気があるみたいだ...。)
「えぇ雪城くんも授業に参加する初日ですから、まだランチを一緒食べる方はいないかと思って。」
副会長がにこやかな顔で語りかける。
「確かにそうです…。でも1人でも大丈夫です!」
「…!遠慮なさらなくても大丈夫です。」
(…なんか今のも好感度が上がったんじゃないか?なんて謙虚なんだみたいな。やめろ!雫はほんとに1人でも大丈夫なんだ!というか俺も誘うし!)
「では行きましょう!」
「えっ!?え!え!ちょっと待ってくださいー!」
雫が副会長に連れられて行ってしまった。
「はぁー!?なんで!僕たちでさえ誘われてないのに!?」
確か副会長の親衛隊に所属しているやつが叫んでる。その周りの取り巻きみたいなやつらも不満げな顔をしている。
「あーあ。あの転校生、安武のファンクラブだけじゃなくて副会長の親衛隊も敵に回しそうだ。」
「えっ!?…あの転校生は悪くないのに?今のは無理やり連れてかれなかったか?」
「悪いやつじゃないんだろうけど、好きな人に対して怒るのって難しいだろ?だいたいはその相手に敵意がいくもんだ。」
野口がしみじみと言った。
「そうなのか。」
(雫が悪く言われるのはやだな。でも流星はともかく、副会長の心を変化させるのは難しそうだ…。どうしようか。)
「でも会長は大丈夫そうだろ!」
「あぁそうだな...たぶん。」
「それにしてもどこに連れていったんだろう。」
「たぶん食堂じゃないか?副会長が弁当とか食べてるって聞いたことないし、これまで食堂しか使ってないだろ。」
「了解!ありがとう!」
「えっ?おまえまで行くの?…!…!」
なにか野口が言っていた気がするが、俺はいてもたってもいられず、食堂まで急いだ。
- 食堂
ざわざわ
なんだかいつもより騒がしい気がする。
「おい!白銀!ここは生徒会メンバー限定だぞ!?」
「えぇだから私はここにいるんです。」
「違う!おまえはいいがその連れてるやつは入れないって言ってるんだ。」
「会長…。彼は今日が初めてのまとな登校になるんですよ!特別な体験をさせてあげたらどうですか?」
「副会長!僕はほんとにそこの席に行かなくて大丈夫ですから!」
「ほらみろ!こいつも行かなくていいって言ってるじゃないか。」
「彼は遠慮してるんです!」
「いや僕は本当に…。」
「…君がそこまで言うなら…。」
そう言って副会長は雫と一緒に一般席についた。
「副会長暴走しすぎでは…?」
(というかなぜあそこまで雫に執着するんだろうか。まだ会って2日ぐらいだろ?)
「あれ?こーくん?」
「香?」
「ちょうど良かった!ちょっと出よ。」
雫と副会長のことは気になるが、もう人目があるためあれ以上問題を起こすことはないだろうと思い、香について行った。
香についていって着いたのは中庭だった。
「ふー!騒がしくてつい出てきちゃったよー!なんかドラマみたいだったね!」
「あぁすごい騒ぎになってたな。実は途中から来たから最初からは見てないんだ。」
「そうなの?」
「うん。教えてもらえると嬉しい。」
「了解!といってもじっくり見てたわけじゃないからざっくりね!」
「最初、食堂に副会長と転校生くんが手を繋いで入ってきたの!これだけで最初大騒ぎ!」
「…ほう?」
(手を繋いで…?)
「それで副会長が転校生くんを特別室に連れていこうとしたの!」
「でも副会長親衛隊のみんながそれはだめですって止めようとしたんだけど…。」
「だけど?」
「副会長が私が招待するという形ですので問題ありません。って。」
「招待したならいいのか?」
「その…別の年度の生徒会のときもあったらしくて。」
「へぇー。転校生が来てみたいな感じか。」
「うん。そのときはほとんどの生徒会メンバーがメロメロだったから、転校生の取り巻きみたいになってたみたい。」
「結局その生徒会は仕事をしてない!ってなってリコール。つまり辞めさせられたみたいだけど。」
「リコールなんてあるんだな。」
「でも!今回は別に副会長以外の生徒会メンバーが止めたみたいだから。なんだかんだ副会長も真面目だしリコールはないと思う!」
「確かに会長が止めてたな。」
「そうそう!それに転校生くんも止めてたしね!」
「リコールされたときの転校生はすごくわがままだったみたいだから!」
「そうか!なら問題ないな。」
(といっても副会長は問題だな…。)
「それでも転校生くんに良い印象を持ってない人は多いかも…。どうにかみんなの不満を抑えられたらいいんだけど。」
「そうだな。実はその…大事な話があってローリエの集で集まりたい。」
「…!わかった!」
「ローリエの集?」
「「!」」
中庭の端で話していたから誰もいないかと思ったが、木の上に誰かいたようだ。
「あっ!隆弘先輩…!えっといらっしゃったんですね!」
「ここで昼寝してたんだ。内緒話なら周りに誰もいないことを確認してからした方がいいぞ。」
「す、すみません。忠告ありがとうございます。」
「別に誰にも言わないから...。あ、ついでに俺の弟も別に転校生には魅力感じないって言ってた。」
隆弘先輩は木から軽く飛び降り、花房先輩の情報をさらっと話して校舎に入っていった。
「びっくりしたね!」
「あぁ驚いた。」
(香が気配を感じないなんて隆弘先輩は忍者か?)
「でも隆弘先輩で良かったね!いい人だし!」
「そっか、香は去年の親衛隊で一緒だったのか。」
「そーだよー!たくさん助けてもらったよ!」
「へぇ。なるほどな。」
「それであぁローリエの集ね!わかった!また秘密基地に集合しよ!」
「頼む。そうだ悪いんだけど集まるのは今日じゃなくていいか?今日の夜はしたいことがあって。」
「全然大丈夫!話せるタイミングで連絡ちょーだい!それでいつ集まるか決めよ!」
「助かる!」
「じゃあお昼食べよー!」
そのまま俺たちは中庭で昼食をとった。
・
・
・
- 寮 (夜)
雫に詳しいこと聞かないと。
…プルル…プルル
「はい、もしもし?」
「雫?俺だけど」
「幸樹どうしたの?」
「おまえ副会長になにしたの?」
「何もしてない!私だってびっくりしてる!」
「何もしてないのにあれ?」
「わからない…。でもなんか好きな人に目が似てるって。」
「えっ?副会長好きな人いるの?」
「いるみたい。似てるからつい話しちゃったって言ってた。」
「その好きなやつに話しかければいいのに。」
「なぜかわからないけど話してくれないって。だから代わりに友人として話してくれませんか?って。」
「そうなんだ…。でも一応気をつけろよ!その話が嘘かもしれないし。」
「わかった!」
「そうだ。俺の仲間がいるんだけど、雫のことについて話そうと思う。」
「え?大丈夫なの?」
「あぁあいつらは信頼できる。」
「…幸樹がそう言うならそうなんでしょ。わかった!話しておいて。」
「あぁ雫も交えて会議するのは難しそうだから、時々会議の内容とか教えるよ!」
「すごい。秘密結社みたいだね笑」
「秘密結社みたいなもんだよ笑」
「響くんを絶対見つけようね」
「あぁ絶対に見つけて、彩ねぇのもとに帰してやる。」
「そうね!きっとうまくいく。」
明るい未来への作戦を考えながら、俺たちの夜はふけていく。
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