第7話 協力者ゲット!



 - ガラス庭園 (夜)


 夜になり、香に教えられた場所に向かうとほとんどがガラスでできた建物が見えてきた。外からでは月に照らされた外観が見えるのみで、中の様子はうかがえない。

 俺が入ると香は既に中にいた。天井から入る月の光に照らされてる香は、まるでスポットライトを浴びた舞台俳優みたいだ。


「あ!こーくん!」

「悪い!待たせたな。」

(話しだすと雰囲気は一気に変わるんだがな……。)


「全然!迷わなかった?」

「確かにこの学園、広くて迷いやすいがメールで地図を送ってくれたおかげですぐわかったよ!」

「良かったー!本当は入口の照明でも点けようかなって思ったんだけど、秘密の話ならやめとこうかなって!」

「そうだったのか!助かる。」

「それで……。話って?」

「実は...この学園に在籍中や卒業した生徒の中で行方不明者が何人もいるんだ。そしてその中には俺の親友もいて……。だからこの学園に潜入しているんだ。親友を探しだすために。」

「そうだったんだね。……確かに僕もこの学園にはおかしな点があると思ってたんだ。監視カメラの件もあるし、盗難もよく起きるんだ。」


「え?盗難?」

「うん。僕の持ち物もよく消えるし、元同室だった子もよく持ち物が消えるって。」

「それは先生とかには?」

「言ったけど、気のせいじゃないか?って流されるし、実際消えた物って壊れたペンだったり使い終わった紙コップだったりするから。なくなったところで困るものではないけどね!」

「まぁゴミだったとしても消えてることに気色悪さは覚えるよ笑」

「確かに気色悪いな……。」

「こーくん!は何か気づかなそうだね笑」

「……そうかもしれない笑」

「でもまぁこーくんの秘密を知れて良かった!これからは協力者だね!」

「あぁ!協力者としてよろしく笑」

「ではさっそく協力者様に見せたいものがあります!」


 おもむろに香は庭園の奥に向かって歩き出した。


 植物に隠されるようにしてあるのは……階段?

 香は迷いなく、その階段を下りていく。俺もその後に続くように階段を下りた。……するとみえてきたのはまるで何かの研究施設のようなロックがかかった扉だった。


「ここは……?」

「僕と元ルームメイトの子の秘密基地!」

「へぇ、わざわざ作ったのか?すごいな……。」

「いや、僕たちが作ったんじゃないよ!元々この地下はあって、発見したときに、秘密基地にしようってなったんだー!」

「彼は機械とかいじるのが得意で、このロックも彼がつけたんだよー!」

「そうなんだ!すごいな!」

(こんな本格的な機械を作るなんて、そいつは何者だ……?)


「待ってねー!今開けるから。」


 そう言って香は暗証番号入力と指紋認証を行った。



 扉が開くと中は電気がついているらしく、暗がりからの光への目の切り替えがうまくいかず、少し目が眩んだ。


「まっぶし!」

「あぁ!彼が中にいるみたい!こーくんに会わせたかったからちょうどいいや!」

「えっ!?いるの?」

「うん!電気がついてるってことはね!あっ!大丈夫!この扉は防音だから話は聞こえてないはずだよ。」

「あ、あぁ。」

(といっても、協力してもらうには話すしかないか?)


「なぁ香、そいつ誰?」

「あっ!そーくん!」

「そーくん?」

「あっ!こーくん!紹介するね!彼が僕の元ルームメイトの東雲 蒼也しののめ そうや。通称そーくん!」

「そーくんって呼ぶのはおまえだけだけど。まぁいいやそいつは?」

「俺は藤岡 幸樹ふじおか こうき。よろしく。」

「藤岡ね、よろしく。」

「こーくんはね!僕の友達で仲間だよー!」

「へぇ……。まぁ香がここを紹介するぐらいだし、信頼できるやつなんだろ。」

「そういってもらえるのはありがたい。俺も君のことは香から聞いてて、協力してほしいと思っている。」

「東雲でいい。協力するかどうかは話を聞いてからでいいか?」

「わかった。」 


 香という共通の友人がいてもどんな相手かわからないため、お互いに探り合う会話が続く。


「もーお互い固いよ!そーだ!こーくんとそーくんって呼び合うのはどう?」


「「遠慮しとく」」


「えっ!?」

「とりあえず中、入りなよ。」

「ありがとう。失礼します。」


 俺は東雲に続いて、その秘密基地?に入った。


「……ちょっ!こーくん!そーくん!置いていかないでー!」



 中に入ると扉から思ったように、研究施設に見える内装をしている。よくわからない機械がたくさん置いてある。


「すごいな!ほんとに何かの研究施設みたいだ。」

「もしかしたら元は何かの施設だったのかもしれないな。でも今は使ってるやつがいないみたいだったから、開発品を置かせてもらってる。」

「開発品?」

「そーだよ!ここに置いてあるものは全部そーくんが開発したものなんだよ!」

「香……。なんでおまえが得意気なんだよ笑」

「僕の友達はすごいぞー!って話でしょ!」


 東雲よりも香の方がドヤ顔をしながら話をしてきた。


「ここにあるのは……たとえばだけど防犯ブザーとか、通常より照らす懐中電灯、暗視メガネ、盗聴機、テーザー銃とかかな。」

「へぇー。」

(ん?途中からなんか物騒じゃないか?)


「そーくんはすごいよねー!」

「時間をかければ誰でも作れるよ。」

「違うよー!やりたいと思う人はいるだろうけど、実際に実行にうつすのは少数なんだからすごいんだよ!」

「僕だって、その道具は面白そうとは思うけど、作るならお菓子の方がいいしね!」

「そういうもんか……。」

「うんうん!」

「俺もすごいと思うよ!」

「……。ありがとう。それで……藤岡。話を聞かせてもらえるか?」

「あぁ……!」



 香にもした説明を東雲にもした。


「なるほどな……。確かに俺もこの学園には何かあるとは思っていた。俺で良ければ協力しよう。だが出来ることは作った機械を貸すぐらいしかできないが。」

「いやすごくありがたいよ!」

「じゃあ秘密同盟結成だねー!」

「なんか可愛い名前つけたいなー!」

「名前をつけるのは賛成だが、可愛いのはやだ。」

「えー!」



「……ここが庭園だから庭園のつどいとかでいいんじゃないか?」

「もー!そんなの安直だよー!秘密基地の場所もバレちゃうし!」

「ならローリエのつどいっていうのはどうだ?」

「この学園には月桂樹げっけいじゅがいくつか植えてあるだろ?そのフランス名のローリエ。東雲が言った庭園の集っていいなって思ったからさ。」

「いいと思う!ローリエってなんか可愛いし!」

「俺もそれがいいと思う。」

「じゃあ……決定で……!」



 こうして俺は協力者をゲットした!


 

 

 『ローリエの集』始動!

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