第4話 生徒会エンカウンター
- 翌朝 寮前
「おはよ~!藤岡くん早いね!待たせちゃった?」
「いや、まだ着いたばかりだよ。それに約束の時間前だし織部も早いよ!」
「えへへー!意外と僕チャキッ!と起きられるんだよー!」
「ふっ……確かに意外だ笑」
「もう!ここはそんなことないよっていうとこ!」
「悪い悪い笑
じゃあ本部に向かうか!」
本部に向かいながら織部と話す
「そういえば織部について詳しく聞いてもいいか?」
「もっちろん!僕も藤岡くんにじゃんじゃん質問しちゃうよー!」
「とりあえず僕は
「おぉー!隣のクラスか!」
(聞けば聞くほど女の子っぽいな)
「藤岡くんはA組だよね!確か
「ん?誰だ……流星くん?」
「あれ?知らないの?スポーツ推薦で同じ外部生の
「そうなんだ……クラス換えで一緒になった人みたいだから覚えてなかった……」
「ファンクラブってのもあるんだな。親衛隊とは違うの?」
「まぁほぼ同じものだけど、公式と非公式って感じかな?」
「なるほどなー」
「もちろん藤岡くんのファンクラブもあるよ!安心して!」
「えぇ!そうなの!?」
(気づかなかった……てか安心は別にしない)
「うん!そういえば藤岡くんってどうしてこの学園に?この学園、外部入学の人少ないからさー」
「あー。実は人脈を広げにきたんだよね笑」
(響の理由を借りよう。まだ織部がどういう立場かわからん以上、本当の理由は話すわけにはいかないな)
「そっか!結構そういう理由でこの学園にいる人多いからなー」
「へぇー……あっ!ついたな」
・
・
・
本部について引き出しを開けると使いふるされたノートが何冊か出てきた。
「わぁー!古そうなノート!これがマニュアルかー!」
「みたいだな」
「前年度は隊長とか副隊長じゃなかったから見てなかったや。」
「……織部、前年度も親衛隊やってたのか?」
「うん!カッコいい人の応援っていつでもキュンキュンしちゃうからね!」
「なるほど……」
(身近に前年度の親衛隊がいて良かった。探れるかもな。)
朝のホームルームもあるため、急いでマニュアルを読み込んだ。
親衛隊の仕事(会長親衛隊)
・会長のスケジュール把握
・不審な人物を近づけさせない
・会長が仕事をする際の支援
等々
親衛隊の仕事についての記載ページがあったが、ざっと目を通しただけでも20以上はあった……
これ必要ない仕事も含まれてるんじゃないか?
「んーなんか……前年度親衛隊をしてたときにやってない仕事とかも書いてあるし、あんまり気にしなくて良さそう笑」
「なるほど!あくまでマニュアルは参考にってことか!」
「そうそう!僕たちは僕たちらしい親衛隊を作っていこうよ!」
「そうだな!とりあえず今日の顔合わせを乗りきろう笑」
「うん!」
♪キーンコーンカーンコーン♪
「「ヤバい!遅刻!」」
2人で慌てて駆け出した。
「セーフ!」
「藤岡!ほんとギリギリだったぞ!寝坊?」
「野口!いや親衛隊の仕事」
「なるほどなー」
「親衛隊のことについて聞いた話あるから昼休みいい?」
「おっけー」
(なんだろう?今年度の親衛隊はまだ活動してないし、前年度の話か?)
野口と話し終わり、教室を眺めると人集りができているところがある。人と人の間からチラッと見えた顔は明るい笑顔の日焼けした少年だ。
(あれが織部の言ってた流星くんっぽいな。同じ外部生だし学園の情報は特に知らなそうだけど、外部生仲間として仲良くしたいな。)
-昼休み
「藤岡!話いい?」
「いいよー!どっかに移動する?」
「そうだな……屋上は?」
「いいな!前の学校じゃ屋上に上がるの禁止だったんだよ。青春っぽくてテンションあがる笑」
「あぁそうなんだ笑
俺はずっとこの学園だから特別感なかったわ」
「そういう当たり前が贅沢だったりするんだよ笑」
(野口と話してると前の学校みたく感じるな)
屋上へのドアを開けると気持ちいい風が吹いてきた。
「なぁ野口、話って?」
「そうだな……どこから話そうか……」
「藤岡が親衛隊に入るって聞いたから、前年度の親衛隊について色々聞いてみたんだ。」
「うん」
「やっぱり東金先輩はヤバいと思う。」
「どうして?」
「去年、副会長の親衛隊の隊長をしていた先輩がいて、東金先輩ともよく話してたって聞いたから話を聞いてみたんだ。」
「そしたら、その人自身も体験したらしいんだけど、会長に近づくと警告されるって。前会長に急に話しかけられたときがあって、話ぐらいはいいかと思って応じようとしたらしい。」
「でも急に東金先輩が割ってはいってきて、強く腕を引っ張られながら校舎裏に連れていかれたらしい。そして人目がないところで会長に近づくな、二人っきりになるなって警告されたらしい。」
「そのときの東金先輩、めちゃくちゃ目が怖かったって。他にも何人も警告されて、会長に告げ口するなとも言われたみたい。」
「なるほど……てかなんで野口はそこまで調べてくれたんだ?わざわざ話聞きにいってくれるなんて……」
「……友達だからだろ!とにかく東金先輩には近づかない方がいい。」
「忠告ありがとう。そろそろ教室戻るか!」
「ほんとにわかってるか?まぁ戻ろ!」
(ますます東金先輩のことがわからなくなったな……)
- 放課後
「……岡くん!、藤岡くん!」
「おぉ、織部どうした?大声出して。」
「もう僕が何回も呼んでるのに、上の空だからでしょ!」
「まじ?悪い。ちょっと考え事してた。」
「ふーん。わかった!これから会長たちに会うのに緊張してるんでしょ!」
「……あ、あぁ!緊張してる!」
(ある意味な)
「顔合わせって生徒会室だったよな。そんな人数入るのか?」
「入るよ!生徒会室と生徒会休憩室っていうのがあって、それぞれの部屋に分かれて生徒会メンバーと親衛隊の顔合わせするんだ。だから広さに問題はないと思うよ!」
「我らが会長との顔合わせは生徒会室の方ね!」
「なるほど。詳しくありがとう!でも休憩室だなんて贅沢だな。」
「まぁ生徒会メンバーの方々は授業中でも生徒会業務にあたられるから、適度な休養のための部屋だと思う!」
「といっても使ってるのはほとんど会計の
「びっくりした!突然叫ぶなって!」
(会計ってそんなチャラいんだ……まぁ響も彼女を作っては破局を繰り返してたからな。)
「あはは!ごめんごめん!さぁ生徒会室についたよ!楽しみー!」
生徒会室のドアを開ける。
「「失礼します。」」
部屋の中には女の子みたいな生徒しかいない。
「んー。いるのは各メンバーの親衛隊の子と花房様だけみたいだね。」
「花房様こんばんは。」
「えっと……花房様こんばんは。」
(確か東金先輩の仕事仲間の弟さん)
「はーい。こんばんはー。まだ揃ってないし楽にしててねー。」
やる気がなさそうに返事をされた。
・
・
・
しばらくすると書記、副会長、会長と続々と生徒会室に入ってきた。入ってくるたびに親衛隊の子たちがキャーと叫ぶので俺と生徒会メンバーは耳を塞いでいた。
顔合わせの時間になったが、会計だけが揃わず生徒会メンバーがイライラし始めた。
「あいつはどこほっつき歩いてんだ……。時間過ぎてるじゃないか。」
「まぁまぁ会長。もう少し待ってみましょう。彼もこの顔合わせの重要性を理解しているはずですし。皆さんお時間大丈夫ですか?もう少しだけ待っていただけると幸いです。」
「白銀!おまえよくそんな悠長なこと言ってられるな。」
「ここにいない人に怒っても意味ないでしょう?」
「……」
空気が悪い。会長はイライラしてるし、副会長は笑いながらもどこか不機嫌だ。そして書記はしゃべらない。庶務は寝てる。
(誰かどうにかしてくれ……)
ガチャ
生徒会休憩室の扉が開いた。
「あれー?遅刻しちゃったかも?」
「お、ま、え!遅刻だ!俺を待たせるなんて良い度胸してるじゃねぇか!」
「はぁ……皆さんお待ちかねでしたよ。」
「あはは!ごめんごめん!みんな大好き蘭丸くん登場です!」
(この空気で良く言えるな……響はこんな仕事してなかっただろうな?いやあいつならしそうだ……)
こうしてようやく顔合わせが始まった。
「で、おまえらが俺の親衛隊の隊長と副隊長?」
「そうです!」
「隊長の2年A組の藤岡幸輝です。」
「副隊長の2年B組の織部香です!」
「会長カッコ良くて素敵です!」
「ふーん。まぁ俺の親衛隊になるっていうのはセンスがあるな。」
「だけど、俺は親衛隊とか邪魔だと思ってるからあんまりでしゃばってくんなよな。そこはよろしく。」
(なんだこいつ!昨日ぶつかったときも思ったが、自己肯定感が高すぎるんだよ!しかも俺のことも覚えてなさそうだし……馬鹿じゃないのか?織部もさすがに幻滅しただろ。)
「ドS俺様な会長素敵!!!」
(織部ー!どうしてだよ!)
そこから何か会長と話したような気がするが、イライラし過ぎてあまり覚えてない。他のやつらも話が一段落ついたみたいで、解散となった。
・
・
・
「じゃあな織部、おやすみ。」
「うん!今日は会長と話せたなんてすごい1日だったね!おやすみ!」
織部はスキップしながら自分の部屋へ向かっていった。
「あんな暴言吐かれて気分が上がるなんてある意味、織部が最強かもな……」
……疲れた。雫の声が聞きたい。
プルル……プルル……
「もしもし?」
「雫。悪い夜遅くに。」
「全然!ちょっと片付けしてただけだから!」
「片付け?雫の部屋が散らかってるなんて珍しいな。」
「んーとね、ちょっと準備中みたいな。」
「それって俺には言えない話?」
「お楽しみ!」
「わかった笑
そういえば前副会長と連絡とれた?」
「うん!でもやっぱり詳しいことはわかんないって。ただ会長が卒業前に何人かの生徒に声をかけにいってたみたい。」
「へぇー。確かにそれっぽい話は聞いたな。」
「仕事仲間とかを集めてたのかな?でも響もその年の会長に何か言われたのかも。」
「だいたい卒業後に起業するときは学園に在籍していた生徒を誘うのがセオリーみたいだから。」
「なるほどな……。やっぱり生徒会になにかあるのかもな。」
「私の方からだとやっぱり手に入る情報が少ないの。だけどある作戦を考えてて、これがうまくいったら大きな情報が手に入ると思うんだ!」
「それはー?」
「お楽しみー!」
「だと思った!まぁ無理しないでくれよ?近くにいられないからさ余計心配なんだ。」
「わかってるって笑」
「じゃあ準備があるからおやすみー!」
雫は楽しそうに通話を切った。
変なことを考えていそうで心配だ。
これがとんでもないことが起きる前兆だなんて、このときの俺は予想していなかった。
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