碧色の光と紅色の闇

Veroki-Kika

第1話 変わった国

ルナ・スターレスト・ムーンは、スターライト王国の第二王子だ。

 名前はルナ。スターレスト・ムーンは、王族の…まぁ、苗字のようなものだ。

 薄く紫がかった白い、肩まで伸ばした横髪。淡い緑色のショートの後ろ髪。

 この国では闇を表す紅い右眼と光を表す碧い左眼のオッドアイ。

 線の細い華奢な体。

 まるで人間ではないような美しい見た目。

 明るくて活発な14歳の王子。

 ぴょこぴょこ走って、嫌いな勉強の時は軽くごねる。

 時期国王ではなくても、みんなから愛されるような性格だった。

 そして、その性格が、見た目とは相殺して、人間らしさを出していた。

 

 ここ、スターライト王国は、ほとんどのものに月や星にまつわる名前も入っている。

 これが、この国の風習であった。

 スターライト王国は、できて今、3014年。

 その間、一度も戦争をしていない。跡継ぎ争いも起きない。

 他国とも仲がいい。貿易にも問題はないし、金銭も安定している。

 民も、王族も、みんなが仲がいい。

 ‘平和’その言葉がよく似合う国だった。

 綺麗な湖に囲まれた城。

 白い月。それとお揃いの色の橋と門。

 まるで桃源郷のような綺麗な場所。

 その幸せな王国は、一生続くと、皆が思っていた。



 チッチッチ…と時計の針が動く音が響く。

 ルナは今、真っ暗な部屋でうずくまっていた。

「兄さん…」

 ルナは目に涙を溜めて、最愛の家族の名をつぶやいた。

 殺風景な部屋には、ルナの姿がよく目立っていた。

 ルナは涙を振って、壁についている時計を仰ぎ見る。

 丸い時計の中は、長い針は12を。短い針は10を指している。

 つまり…

「10時…」

 ルナはそうつぶやいて、そっと立ち上がった。

 扉の方にヒタヒタと裸足の足を動かす。

 ガチャガチャガチャ。

 ドアノブに手をかけて、ドアノブを回す。

 木でできた素朴な扉。金色のスベスベとしたドアノブ。

 やはり今日も鍵がかかっていて開かない。

「やっぱりダメかぁ」

 ルナははぁっと息をはいてすぐそばの壁にもたれかかった。

 ひんやりと冷たい壁と床の温度が、ルナの白い肌に触れる。

「はぁ…」

 ルナの重いため息が部屋に響いた。

「戻りたいなぁ…」

 数年前までは、ルナもそこら中を駆け回っていた。

 年相応。その言葉が似合うような、そんな王子だった。

 この部屋も電気がついていて、部屋には毎日あかるいわらいごえがひびいていた。

 でも今は、電気もつかない。鍵も開かない。部屋にはベッドとクローゼットだけ。

 以前の部屋とは似ても似つかない部屋。これが現状だった。

 

 この国も、昔はそこら中で明るい子供の声、奥様方の話し声。元気な騎士団の練習声が聞こえていた。

 しかし今は真反対だ。

 子供の声は聞こえない。奥様方はヒソヒソと話すようになった。

 騎士団の練習も質素になった。

 みんな、出てこなくなってしまった。

「どれもこれも…僕のせいだ…」

 ルナは静かに、悲しそうにつぶやいた。

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