畜生道まっしぐら!!〜南極の奇々怪々編〜

化け猫ニャン吉

第一章 南極大陸の罠

南極へ導かれるクズ

第1話 やりすぎた

 厳島及びその近辺を支配下においたニャン吉はその夏、南極大陸にいた。なぜそのようなことになったのか。それは、安芸の国攻略に乗り出した梅雨のある日のこと。


 全国の山々から食料が減り、食事を求めて人里へ進撃を予定している熊たち。熊たちを止めるために交渉の席を用意するアニマルパルチザン。ニャン吉と黒兵衛による熊たちとの交渉は難航した。


 その日も土砂降りの雨の中、山にあるマネークリーニングアライグマの洞穴で交渉が行われた。熊は追い詰められ、やつれた顔をして何をやらかすか分からない様子。食料に関する関税交渉を押し付けてくるがニャン吉、黒兵衛は、その点では一歩も引かない姿勢を見せた。


 熊たちは机を蹴り怒り狂ったため、ニャン吉が交渉役のみぞおちをグーで殴り気絶させた。交渉団へはアライグマたちが作った裏カジノへ案内して気を紛らわさせた。


 帰り道、疲れ切った顔をしたニャン吉と黒兵衛は下を向いて歩いていた。

『ほんま、はようアニマルパルチザンが全国制覇して楽園創らにゃいけんの』

『ほうじゃのニャン吉……。じゃが当面はこの交渉に専念せえ。交渉は忍耐で』

 2匹は厳島で別れた。


 中村家に戻ったニャン吉はストレスフルでその辺にある物を蹴り飛ばす。二足歩行で腰に手を当てイライラしながら部屋をグルグル回る。その猫らしからぬ姿を見ていた巴御前は思わずカメラのシャッターをきる。


「こりゃ、映えるねえニャン吉」

『うっさいの! 静かにしてくれや御主人様!』

 怒りが爆発し、思わず床を転がる重さkgはある酸素ボンベを蹴り飛ばした。その蹴り飛ばしたボンベは天井へぶち当たり、さらに跳ね返った先の窓ガラスを割った。


「こら! なんしょんニャン吉!」

 猫らしからぬ馬鹿力に恐れる様子もなく、片手ので外に転がる酸素ボンベを持ち上げる巴御前。主従共々尋常ならざる力の持ち主。


 二足歩行するニャン吉のなで肩へ手をおいて、しつけをしようとする巴御前。

「おとなしゅうしんさい!」

『うるさいんじゃ!』

 人の耳には猫がウーと唸ったようにしか聴こえない。

「もう暴れちゃいけんよ!」

『知らんわ! んなもん!』

 ニャン吉は思わず御主人様の右手をひっかいた。ひっかくを広島弁で『かぐる』という。


 御主人様の手から血が吹き出した。畳の上に血が滴り落ち、ニャン吉は自分のしたことの重大さに気付いた。

「痛い……」

『あ……あ……俺そんな』

 御主人様をひっかいて大怪我をさせてしまった罪悪感から外へ飛び出したニャン吉。巴御前は筋肉で血を止めると病院へ歩いて行った。


 それからニャン吉は島を飛び出しさまよい始めた。このとき御主人様を大怪我させてしまったことから、ニャン吉は爪と牙で思い切り戦わなくなった……。


『次回「バスジャックに噛みついて」、今週は日曜日まで毎日更新予定』

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