転生したらパラメーターカンストにされた私だが目立ちたくはないのでいろいろやりながら影で無双します【サブストーリー】

おさかな様

第1話:何言ってんだ?

なんかまぁ、転生ギルド嬢の現在の展開の、別の位置で起こっていることだと思ってください

それぐらいこの世界は自由ですよきっと

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二人が激闘を行っている一方.....


目が覚めたとき、俺は巨大なニンジンに抱きつかれていた。いや、正確には「ニンジンのきぐるみを着た男」……のような何かだ。全体がオレンジ色で、表面にはなぜか Wi-Fi のマークが描いてある。電波でも飛ばしているつもりなのだろうか。


「おい、タケル、起きたか? ここ異世界っぽいぞ」


 聞き慣れた声がした。振り返ると、小学校からの幼馴染・佐久間が立っていた。だが、彼はなぜか肩にドングリを大量に積んでいる。積載量が異常だ。というか、それ落ちないのか。


「佐久間……なんでドングリ背負ってんだよ」

「いや、転生特典で“ドングリ無限生成ラック”をもらったら、気づいたらこうなってた」

「そんな特典あるかよ」


 俺がツッコむと、ニンジン Wi-Fi 男が突然ビリビリと光り始めた。


「はじめまして。私は転生ナビゲーターのニンWi-Fiと申します」

「絶対嘘だろその名前」


 佐久間がドングリを一つつまんで投げると、ニンWi-Fi の顔面に当たった。ペンッという軽い音がして、Wi-Fi アイコンが弱まった。


「痛いです! 当てないでください! 私は神々の通信を担当する立派な存在でして!」

「通信って何?」

「転生者たちの愚痴を天界へ送信したり、天界からのクレームを受信したり……

まあ、色々です」


 仕事の内容がブラックすぎないか。


 とりあえず周囲を見渡すと、見事なほどに何もない。地面は謎にツヤツヤした黒い板で、空はとんでもなくカラフル。青、ピンク、緑、黄色が同時に存在し、しかも常に入れ替わっている。たまに“サーバーの悲鳴”みたいな音が空から降ってくる。


「ここ、本当に異世界なのか?」

「はい。ここは異世界アラバスター・サブスク・フロンティアβです」

「名前が長いしベータ版かよ!」


 すると佐久間がドングリをもりもり食べながら言った。


「タケル、俺らさ……死んだんだっけ?」

「たぶん? お前、最後の記憶ある?」

「コンビニのポイント二重取りが成功した瞬間だな。“やった!”って言ったら爆発した」

「どういう状況だよそれ」


 ニンWi-Fiはペラペラの手を合わせ、説明を続ける。


「まあ、お二人はかなりの勢いで死にましたので転生となりました」

「どんな勢いだよ」

「勢い指数は 842 です。人界では“飛びすぎの部類”です」

「部類があるのか……」


 混乱しつつも歩き出すと、地平線からバグったような塔が生えていた。塔なのに斜め上へ伸びたり、途中で分岐して蛇のように曲がっていたり、さらには「ただいまメンテナンス中」と空中に字幕が浮いている。


「とりあえずあそこ行こうぜ。なんかありそうだ」

「ありそうだけど絶対まともじゃないだろ」


 佐久間がドングリを撒き散らしながら走り出したので、仕方なくついていく。


 途中で地面から「イベント発生」と書かれたポップアップがせり上がった。ゲームか。


「タケル、イベントだってよ。何出るんだろ」


 するとポップアップの裏から、白いネコが飛び出してきた。


「にゃーん。クエスト:『この世界を全力で救え』を受注しますか?」

「いや無理に決まってるだろ!」

「にゃーん。拒否はできません」

「強制かよ!」


 ネコは尻尾からレーザーを出し、地面に“契約済”と書いた。俺の意思どこいった。


「救わないとどうなるんだ?」

「にゃーん。サーバーが落ちます」

「この世界サーバー式なのか!!!」


 佐久間が笑いながらネコを撫でると、ネコは唐突に真顔になった。


「にゃ。ところで君たち、性格設定まちがえて転生されてるよ」

「は?」

「システムエラーで、会話の論理構造が全部メチャクチャになってる」

「お前それを先に言えよ!!!」


 ニンWi-Fiが慌ててWi-Fiを強めながら言った。


「す、すみません! ただいま修正中なんですが、データが吹っ飛んでまして!」

「修正しろ! 俺らの会話が毎秒ぐちゃぐちゃになるんだぞ!」

「にゃーん。そのままでも味があると思うけど?」

「味の問題じゃねぇ!」


 すると佐久間が突然、妙にキリッとした顔で言った。


「タケル……俺、今からちょっと真面目なこと言うわ」

「お、おお……どうした急に」

「このドングリ……全部、会社の経費で落ちるんだって」

「何の会社だよ!!」


 結局、俺たちは意味不明な会話のまま塔へ向かうことになった。


 塔の入り口には巨大な宝箱が置いてあったが、なぜか宝箱のふたに“昼寝中”と貼り紙がある。宝箱が昼寝とはどういうことだ。


「開けるしかないよな?」

「開けたら怒られない?」

「昼寝中なら起こせばいいだろ」


 佐久間が宝箱を軽く叩くと、中から低い声が響いた。


「……あと5分……」


 宝箱は寝言を言った。


「寝るなよ宝箱!!!」


「にゃーん。世界を救うには、この宝箱を起こして中のアイテムをもらう必要があります」

「仕様が雑!!!」


 そのとき、ニンWi-Fiが突然フリーズした。


「……バ……ッ……ア……プ……」

「バグった!!」


 Wi-Fiマークが点滅し、周囲にエラー音が響き渡る。


〈システムメッセージ:会話ロジック制御に重大な問題が発生しました〉

〈復旧までお待ちください〉

〈なお復旧しない可能性があります〉


「絶望的じゃねぇか!!!」


 そして塔の上から、空色のスライムがこちらに降りてきた。だがそのスライムはなぜかマイクを持っている。


「ようこそ、異世界アラバスター! 本日のゲストは転生者のお二人です!」

「トーク番組始まった!?」

「まず質問です! あなたたち、世界を救う自信はありますか?」

「ないよ!!!」


 スライムは満足そうにうなずき、次の質問を投げた。


「では逆に、今日の夕飯は何がいいですか?」

「関係ねぇだろ!!!」


 スライムはメモを取りながら言った。


「世界の危機は8時からなので、夕飯の予定は大事です」

「そんなテレビ番組の放送時間みたいに言うな!」


 会話はどんどん支離滅裂になっていく。

 でも不思議と、胸の奥ではワクワクしている自分がいた。


 世界を救う使命なんて無茶苦茶だけど、佐久間と一緒なら……いや、無茶苦茶だからこそ、なんとかなるかもしれない。


「タケル! まずは宝箱を起こすぞ!」

「おう! 世界救うのはその次だ!」


 こうして俺たちの、超絶ぐちゃぐちゃな異世界転生物語は幕を開けた。


 

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