第17話 とりあえずユイの嫉妬(?)

放課後の帰り道。校門の前で、俺――春海ユウトはユイと一緒に歩いていた。アカリとは別行動。今日の放課後、アカリと二人きりで話したことは、まだ胸の奥で熱を帯びている。思い出すだけで、心臓が少し早くなる。


「春海くん、今日の放課後、誰かと……」ユイは少し小さな声で問いかける。その声には普段の柔らかさがあるものの、どこかぎこちなさも混じっていて、俺の心に鋭く突き刺さる。

「え、あ……ああ、ちょっとアカリと話してただけだよ」つい自然に装おうとして答えるが、心臓の音が耳にまで響くのがわかる。自分でも、少し慌てすぎだと思った。


ユイは少し眉をひそめる。でも、口調は普段の柔らかさを崩さずに、「ふーん……そう」とだけ言った。その声には微妙な棘が含まれていて、無意識に俺の胸がぎゅっと締め付けられる。心の中で思わずつぶやく。――やっぱり、嫉妬してるんだな。


「えっと、その……別に特別な話じゃなくて、ただポスターの件でちょっと相談しただけなんだ」

「相談ね……」ユイは口を尖らせ、少し俯く。手に持った鞄を握る仕草が、無意識に緊張を示しているように見える。俺は思わず視線を逸らし、少し間を置く。


歩くスピードを少し落とし、並んで歩きながら、俺は心の中で考えを整理する。

――アカリと話したこと、ユイにはどう映るんだろう。変に思われてないかな……。ああ、余計なことを考えすぎて、逆に変に思われたりしたらどうしよう。


「春海くん、私のこと……嫌いになったりしてないよね?」突然の質問に、思わず足が止まる。心臓が一瞬、止まったかのような感覚。

「え、えっと……そんなことあるわけないだろ!」慌てて答える。顔が熱くなり、耳まで赤くなる。自分でも、ここまで動揺するとは思わなかった。


ユイは少し笑った。でも、その笑顔はどこかぎこちなく、普段の自然さとは違う。不安げな光が瞳の奥で揺れているのがわかる。「そう……よかった。だって、私、春海くんと一緒にいる時間、大事だから……」


胸の奥がじんわり熱くなる。こんなふうに正直な気持ちを見せられると、無意識に答えたくなる。「俺も……ユイと一緒にいる時間、大事だよ」言葉を口にした瞬間、少し肩の力が抜ける。


ユイは少し目を見開き、頬を赤くする。そして、ちょっとだけ俯きながら、ぽつりと言った。「……ふふ、じゃあ、やっぱり春海くんは私の味方だね」


その言葉に、俺は思わず笑みを返す。夕陽に照らされ、二人の影が長く並んで伸びていく。――この時間も、やっぱり大切にしたいと思った。ゆっくりと歩きながら、心の中で小さな幸せをかみしめる。


でも、心の奥底で知っている。アカリも、まだ俺の高校生活にしっかり存在していることを。昨日の放課後のことが、頭の片隅にちらつく。――高校生活、まだまだカオス。でも、今日のこの瞬間は、少しだけ落ち着いて、幸せだった。


背中に夕陽の温もりを感じながら、俺は心の中でそっとつぶやく。

――こういう日も、悪くないな……

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