第10話 とりあえず放課後の三人会議(?)
放課後。俺――春海ユウトが教室に戻ると、予想通り、そこにはアカリが待ち構えていた。
「ふーん、ユイちゃんと仲良くしてきたの?」
腕を組み、軽く腰をひねって微笑むアカリ。その笑顔は小悪魔的で、少し挑発的な色気を帯びている。俺の心臓は、瞬間的に高鳴った。
「そ、そういうわけじゃ……」
言い訳を口に出そうとするが、アカリの目は鋭く、じっと俺を見つめる。その視線に圧され、言葉がすぐに詰まる。
「ねぇ、春海くん」
アカリは机に手をつき、身を乗り出す。距離が近すぎて、俺の胸はどきどきと音を立てる。
「今日も二人きりで、なんか話したの?」
「え……あ、ああ、ちょっとね」
どう答えればいいのか、頭が真っ白になる。正直に話すべきか、曖昧にかわすべきか――迷いは尽きない。
その瞬間、教室の扉が静かに開き、ユイが入ってきた。
「春海くん、アカリちゃん……ちょっと話してもいい?」
ああ、始まった……。まさに放課後三角関係会議。俺の心臓は最高潮に跳ね上がる。
アカリはにっこり笑いながらも、目は鋭く、ユイをまっすぐ見据える。
「ふーん、ユイちゃんも参加するんだ?」
ユイも微笑みを返すが、頬には少し赤みが差している。
「ええ、春海くんときちんと話しておきたくて……」
俺は二人の間に立ち、思わず頭を抱える。
「もう……二人とも、やめてくれよ!」
アカリは肩をすくめ、無邪気そうに笑う。
「だって、春海くんがどう思ってるか、気になるんだもん」
ユイは小さく息を吐き、でもその瞳には真剣さが宿っている。
「私も、知りたいの……春海くんの本当の気持ち」
二人の視線が交差し、教室の空気は瞬間的に張り詰める。まるで戦場のような緊張感。しかし、その奥には互いを思いやる優しさや、わずかな期待も感じられる。
俺は深呼吸をして、意を決する。
「……わかった。ちゃんと話そう。今日、全部は無理かもしれないけど……少しずつ、ちゃんと伝える」
アカリとユイは同時にうなずく。どちらも笑顔を浮かべているが、その奥には確かな勝負心が見える。
教室に漂う放課後の空気は、夕陽のオレンジ色と混ざり合い、三人の緊張と期待を包み込む。カオスな日常はさらに加速していく――それでも、俺はこの瞬間の微妙な静けさを少しだけ噛み締めた。
「じゃあ……まずは、春海くんの話を聞かせて?」
ユイが先に口を開く。
アカリはにやりと笑い、肩をすくめて言う。
「ふふん、それなら私も横で聞くからね」
俺は二人の視線を真正面から受け止め、心の中でそっと呟いた。
――ここから、放課後三角関係の新章が始まる……!
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