正反対のボーイ・ミーツ・ガール
紫音 色羽
第1話始まり
スズメが優雅に鳴く平和な朝。
いつも変わらない通学路。
その周りを囲むように佇む傍観者。
奴らは毎日毎日飽きもせずコソコソとボヤついていた。やれ"例の噂の1年"だの"目を合わせるな"だの、、。
挙げ句の果てに"学内一の不良、
よくもまあそんな同じこと言えんなと溜め息が出る。けどまぁ関わって来ないだけマシかーー。
そんな中、普段と違うことが起こった。それは目の前に知らない女が突っ立ってたことだ。
同校の制服を着ているが小柄で二つ結びをしていて、前髪にヘアピンを留めているいかにもガキ(弱そう)って感じの女だ。
「あ…えっと…。」
そいつは何か伝えようとしていたがその後の数秒間は黙りこくっていた。なんだコイツは。人の顔をジロジロ見やがって、、。
「…てめぇ。よく俺の前に突っ立っーー」
そう言ってる途中、その女はすごい勢いで逃げ出した。
は?んだあいつ。フザケてんのか?とイラついた俺は後を追いかけた。
「待てやゴォルラァァァァァ!!!話してる途中に逃げるたぁ度胸あるじゃねぇの…!!?」
「いやぁぁぁぁぁぁ」
「あ!待っ…おい!!」
クソ!!速ぇなあの女!!
走り続けた末に河川敷に差し掛かる場所まで来た。どこまで逃げんだよ!!
でもあと少しだ。
あの女は階段に降りてスピードが落ちてる。
あと少しで捕まえられる。
精一杯、手を伸ばす。
あと少しで!!
その途中、俺は階段で足を滑らせた。
ーードサァァ!!
「……いってぇ…」
下の草でなんとか怪我をしなくて済んだ。一瞬、何をしてたのかトンだが、近くにそいつが横たわっているのを見て思い出した。
「お前どんだけ逃げんだよ!!ぶっ殺されてぇのかあぁ!?」
「ひぃぃ!!ごめんなさい!!」
……あれ、、。なんか俺、声高くね??それに目の前にいるガラの悪そうな男って、、。
「「!!?」」
「お…おおおおお俺が目の前で女座りしてメソメソ泣いてる!?」
あまりの衝撃で後退りをした。間違いねぇ。自分の姿を一番知ってんのは自分だ。
目の前にいる俺(?)も困惑している。自分の胸を撫でながらそいつは一声を出した。
「…もしかしてあなたは前田さん…ですか?」
……?
「だったらてめぇは誰だ?」
「わ、私、中村です!中村ちひろ!!」
「な…中…村…?」
誰だ?本当に分からん。
「えぇぇ!?嘘でしょ…?さっき追いかけてた女子生徒ですよぉ!!」
川の水面で自分の姿を確認した。
「確かにガキみてぇなこの髪型さっきのぬべーっとした女だ。なんで俺がこんなヤツなんかに…?」
「……。私達…身体が入れ替わった…ということなんですか?」
…はぁ!?
「どうやったら元に戻れるんだよ!?」
「それは……、、あ!!」
俺の見た目をした中村がおもむろに自分のカバンの中を探っている。
なんだ!!何か元に戻る方法に知ってーー。
「大変です!もうすぐ1限目が始まっちゃいます!!」
………。
…………は?
「授業とかどうでもいいだろ!?今は問題の入れ替わりってヤツを…」
「サボりはいけません!!!」
「はい!!」
ヤベ…。あまりの迫力につい反射で答えちまった。
「単位取らないと母に叱られてしまいます!!」
ドスの効いた声でそう言ったコイツはとんでもない圧を感じた。今までも周りからは俺、こんなふうに見られてんのか、、、。
ーーキンコンカンコーン。
チャイムの音が校舎中に流れ込んだ休み時間。俺はぐったりと顔を中村の机を覆い尽くした。
なんで俺が授業なんか真面目に出なくちゃなんねぇんだよ、、。さっさと元の姿に戻ってサボりてぇ、、、。
その間も斜め後ろの席で俺(中村)が板書を取っていた。周りが引いた目で見てるってのにウキウキと楽しそうにノートと向き合いやがって、、!
つうかコイツ、クラスメイトだったのかよ!?
そう思っていたら真後ろで誰かの気配を感じた。振り向く間際にソイツが俺に被さってきた。
「ちーちゃぁぁん!!ごめんねぇぇ!!」
むぎゅゅゅうと胸を押し寄せてきた。
うわぁぁ!!
「離せやてめぇ!!!」
俺はバッ!!っと手を振り上げた。振り返るとそこに立っていたのはショートカットの五月蝿そうな女だった。
ちーちゃん?、、あぁ、中村ちひろだからか。
「わわっ!どうしたの?ちーちゃん。そんな口利く子じゃなかったよね!?朝の騒動で前田に感化された!?」
か、、カンカ?
「本ッ当に申し訳無い!!まさか待ち合わせ場所に前田が来るなんて……マジで怖かったよね…?」
待ち合わせ??
あ、、そうか。あいつただ突っ立ってた訳じゃなかったのか、、、。
さっきの光景を思い出していると目の前の女がパンっと手を合わせ、大声で喋った。
「…とまあ!そこは置いておくって事で!!」
うわ!今度は手を繋いできた!?スキンシップ多すぎだろコイツ!!
「次の美術、外なんだって!早く行こうよ!!」
「は?おい!!手ぇ引っ張んじゃねぇよ!」
「あはは!まぁだ、アイツの真似してんの〜?」
ムカッ、、!!
まあ、これはあいつの身体だし、連れられるのも仕方ねぇか、、。
教室のドアを通り過ぎる前にそっと中村の方を確認した。そしたらヤツは慌てたように顔を教科書で隠すような動きを見せていた。
なんだ……?
「今日の授業はスケッチです。様々な自然物を描き、感性を磨きましょう!」
スケッチとかめんどくせぇ。ガキのお絵かきなんぞやってられっか。
「あっ、ちーちゃんどこ行くの?そっちは生徒玄関だぞ〜?」
例の抱きつき女が後ろからのしっと身体を乗せてきた。
知ってて向かってんだよ!!
つーか、重ぇ!!
ふと横を見ると角の花壇の前でスケッチに励んでる中村の姿(見た目は俺だけど)があった。
あいつ、わざわざあんな隅っこで、、、。
それを見ていた俺に気付いたのか抱きつき女が話しだした。
「珍しいよね。前田が授業受けてるの。出席確認の時の先生もあいつの姿見るなり、口あんぐりしてたから余程だよね〜」
俺の見た目だから稀有な目で見られんのに恥ずかしくないのかよ。
ー単位取らないと母に叱られてしまいます!!ー
どんだけ母親を恐れてんだ。臆病なヤツ。
「前田なんかは放っておいてさぁ!」
ま、、前田なんか、、?
言い方は腹が立つがそいつの言葉を続けて聞くことにした。
「早くちーちゃんの描く絵見たいな♪今回もすっっごく上手いんだろうな〜!」
……え?
「とぼけた顔しちゃって〜!何回も部活の賞取ってる程絵、上手いじゃぁん。この間は大きなコンクールで金賞取ったんだって?」
あ、あいつ、ぼーっとしてそうな雰囲気して意外と手先が器用なタイプか!!
俺の絵なんて、ガチエグい地獄の沙汰みたいな絵だぞ!?美術1ナメんな!!!
そうこう思ってる内に、スケッチブックと鉛筆を持たせようと目の前でグイグイ見せてくる。
やめろ。そんな純粋な眼差しで見んじゃねぇ。
「お…俺は描かね……」
きらきら。
わくわく。
、、、、、ゔ。
気づけば俺は花壇の前でスケッチブックと鉛筆を持って描く体制に入っていた。
俺、、攻められると弱いかもしれない、、。鍛え直さねぇと、、、。
その後ろで抱きつき女が嬉しそうにジャンプをしていた。まず、お前の絵見せろや。全ッ然興味ないけど。
まあ、逃げられる状況じゃないのは俺でもわかる。
「10分くらい経ったけど順調!?」
「お…?おー……冴えてるかってくらい順調…」
「お〜〜〜!!」
所詮ただの絵はこれくらいで大丈夫だろ。自分の描いたスケッチブックを中身に再度、目をやる。
そこに描かれてたのは花かよく分からん気持ちの悪い物体だった。
見せて大丈夫なヤツか、これ、、。
いや!そもそもこの花、その辺に咲いてある花じゃねぇし!!柵のトコにアガパンなんとかって書いてある聞いた事ねぇ花だし!!
「ちーちゃんっ完成した〜?」
「ギャーーー!!!」
あぶねえ!!見られる所だった!真後ろに来んな!!
こうなったらこっそり中村のスケッチブックと交換しよう!それしか道は無い!!
確かアイツ、あの角に居たハズ、、!!勢いよくバッと
そしたらーー
「最近調子乗ってる1年の前田ってお前?」
!!?
中村はガラの悪い男三人衆に絡まれていた。
帽子を被った野郎。風船ガムを膨らませている野郎。ヘッドホンを首に掛けてる野郎。と、まぁ物で自分を強いと錯覚している典型的な男共だ。
てかあいつら、俺を目の敵にしている3年じゃねえか。
リーダーなのか知らんが一番手前にいる帽子野郎がへらへらとしながら声を出した。
「スケッチしてるとかw今更いいコちゃんぶってないでさぁ、ちょっとツラ貸してくんない?」
いや、流石に分かるだろ?この後どうなるかって事くらい。
「…?いいですけど…」
中村はすぅと立ち上がり三人衆の行く先についていった。
あんのバカ!!のこのことついていくヤツがあるか!!いくら俺の身体でも中村は、、、クソ!!!
「あれ?怖い顔してどうしたの?」
後ろにずっと待ってた女が話しかけてくる。今は呑気に話してる場合じゃないだろ!お前の大事なちーちゃんが命の危険なんだぞ!!
持っていたスケッチブックを地面に振り落とし、
ちーちゃん!という言葉を尻目に、俺は後を追いかけた。
辿り着いたのは人が寄り付かない校舎裏。着いた時には3対1で袋叩きになっていた。
俺がボコボコにやられてるのを見てるってのは妙な現場だぜ。
あいつは声を発しようにも喋られない状況だった。
激しく、、。
殴られたり。蹴られたり。
蹴られたり。殴られたり。
殴られたり。蹴られたり。
蹴られたり。殴られたり。
なんだコレ。胸糞悪ぃじゃねぇか、、。
「ギャハハ!!前田って思った以上に雑魚なんだなー!!」
「こんなヤツが学内一の不良って呼ばれてんの嫌だわぁー。クッッッソ弱ぇーもん!」
………あ??
テキトーな事ほざいてんじゃねぇよ。
俺は現場の中央に向かって歩いた。
ザッ。
ザッ。
中村から寸歩の距離まで来た時、ズッタズタに人を殴ってた奴らはやっと俺の存在に気付いた。
「誰だお前。部外者が入ってくんじゃねーよ。」
ザッ。
ザッ。
「な…なんか言えよ!女が割り込む場所じゃねぇぞ!!」
ザッ。
ザッ。
「んだてめー!!ヤられてぇのか!?」
ある1人が俺目掛けて拳を振るってきた。
なんだ、そんな遅いパンチは。グーパンはこうやるんだよ。
ヒューー。
グーの一突きで目の前に人が消えた。いや、現に遠くまでぶっ飛んだ。
少しの間、場は凍りついたが、その数秒後、もう1人が絡んできた。
「〜〜このアマ…!!」
そいつは足を振りかざそうとしていた。それを瞬時に察した俺はすぐ蹴りの体制に入る。
「本物の不良ってのはな……
1人を寄って集って殴ったりしねぇ…イジメをするしょうもないヤツとは違ぇんだよ!!」
俺の振るった脚が見事にヤツの顔面に命中した。女の身体ってのも、身軽で
〜
身体が痛い。こんなに痛いのは生まれて初めて…。
すごいな…。3人相手を一気に1人で……。本当にケンカが強いんだ。こんな光景も初めて見た。前田さん怖いけど……。
「〜前田てめぇ。とんでもねぇヤツ呼びつけやがって…!!」
彼の拳で飛んでいた人がまた私のほうに近づいてきた。
腕を掴んでる…!
まただ。まだ痛いことしてくるんだ…!!
泣き目になりながら前田さんのほうを見た。彼は早々に気付いて助けてくれようとしたけれど、他の方が来てこっちには来れない状況だった。
私も……立ち向かうしかないんだーー…
〜
やっべ、、!あいつ、完全に処理出来てなかったのか!!カッコつけて割り込んだのに結局、無駄足だったのか?
つうか、コイツらしつこ過ぎんだろ!いつまで粘んだよ!
グッと気合いを入れて、殴りの体制に入った途端、違う方向からも空耳なのかは知らないがグッという同じ音が聞こえた。
いや、、その音は俺が出した音より数倍も大きかった。
「やああああああああああああ!!」
ポコポコポコポコポコポコポコポコ
「いだだだだだだだただ」
中村が男を殴るのが見えた。連打で追いやっている。
てか、ポコってなんだよ。ポコって。どこからそんな音出るんだ?
それにアイツ、、。
人に歯向かえんじゃん。
「あの…ありがとうございます。怪我の手当てまでしていただいて……」
「別に?」
ここは保健室。中村の怪我があまりにも酷かったから連れてきた。先公は不在だ。けど、まあ問題ないだろ。
一番酷いのは両頬の傷だ。消毒液を塗ってガーゼでなんとか手当てをした。この深さ、味わいたくもない痛みだったろうに、、、。
「他に痛むところあるか?」
「い…いいえ!心配なさらずっ!」
「俺の身体だから心配はすんだろ!!」
そう言うと中村は微かに笑みを浮かべた。
「……どうやって元に戻るのか、授業中に考えて見たんです。」
そして、中村は一息ついてから話を続けた。
「あの階段でまた落ちれば解決出来るハズです。無理強いで授業を受けさせてしまってごめんなさい。今すぐにでも河川敷に行きましょう?」
申し訳無さそうに俺の方を見て言った。
いや、確かに無理矢理だったけど、コイツも何かしらの事情でもあるんだろう。ただの弱いヤツじゃないし。
「授業…あと2時間あったよな…?」
「…?はい」
中村は不思議そうに返事にした。
「単位、取れなかったら親に怒られるんだろ?ちゃんと受けてやるよ。授業。」
「え…?だっ…だったら私も授業受けます!」
「お前は怪我してんだろ!疲れてるだろうし!寝てろ!!」
「でも前田さんの単位が……」
「俺のことはいいから!」
教室に戻ろうとする中村を急いで止めた。それに、そんな怪我してまで授業を受けてる自分の姿見たくねぇ!
保健室を出た後、すぐに始業のチャイムが鳴り響き、俺は急いで教室まで走った。
放課後、朝来た河川敷に着いた。例の階段の一番上の所で2人並んで下をみていた。
「ここから飛び降りれば元に戻れるんだな?」
「おそらく……」
元の生活に戻れることを知った俺は安堵し、中村の身体全身で背伸びをした。
「これでやっといつも通りに過ごせるぜ〜!今後はもう関わらないと思うけど、元気でいろよ。中村!
」
中村に拳を見せた。それを見たコイツはすぐに察して拳を向き合わせた。
「前田さんこそ。怪我には気を付けてください!」
そして、2人でグータッチをした。そうだ。コイツと俺は住む世界が違う。
短い間だったけど、まあ、楽しかったんじゃねぇの、、?
「そろそろ行くぞ!!」
中村はこくんと頷いた。
そして、、2人同時に飛び降りた。
これで全てが元に戻るんだ。
ーードサァァ!!
俺達はそう、思っていた。
「……いてて」
目を開けるとそこには草が広かっていた。無事に階段から落ちれたんだ。そして勢いよく中村が居るべき方向を向いた。
どうだ!?これで元にー、、、
目の前には、、
頬にガーゼをしている俺の姿があった。
嘘だろ?元に戻ってねぇ、、?
「そんな……」
中村も驚いたように俺を見ている。そりゃあそうだ。落ちた時は、絶対に戻れるもんだと思ってた。
それでも俺達は身体が入れ替わったままだ。どうすれば、元に戻れるんだ、、、?
悩んでいると中村は自分の手を確認しながらとんでもないことを言ってみせた。
「私達……一生このままなんでしょうか…」
夕日で照らされた空の下、男の低い声が空中に響き渡ったーー。
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